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【関連動画】ダグラス・トランブルから受け継がれた 特撮の極意

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 今年2月に急逝したダグラス・トランブルが登場する、SF映画『フォース・プラネット』のメイキング・ドキュメンタリーです。CG氾濫の昨今、このように「あえてミニチュアモデルで映画を作りたい」と考える若い映画製作者の出現は非常に心強いものがあります。トランブルもその心意気を買ったのでしょう。  水槽に液体を垂らして未知の宇宙空間を表現したり、ディテールにこだわったモデル制作など『2001年宇宙の旅』で用いられた方法がここでも使用されています。トランブルが「予想外の現象が起きてもそれを受け入れる。プログラマーが設計するCGなどアルゴリズムでは不可能だ。想定内の出来事しか起きない。自分の予想を超えたときすばらしい映像が撮れる」と語っているところは非常に印象的です。キューブリックはそれを「マジック(魔法)」と呼びましたが、『2001年…』でもスターゲートの水槽のシーンはロンドンで再び試みられたものの、マンハッタンで作った映像には及びませんでした。これは「マジック」が足らなかったのでしょう。  『フォース・プラネット』は現在アマゾンプライムで視聴できるそうなので、この若いスタッフの挑戦の結果を知りたい方はご覧になってみてはいかがでしょうか。視聴は こちら からどうぞ。

【インスパイア】『レイトン ミステリー探偵社 ~カトリーのナゾトキファイル~』第24話のサブタイトルが『時計仕掛けのスウィーツ』だった件

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 2018年にオンエアされたTVアニメ『レイトン ミステリー探偵社 ~カトリーのナゾトキファイル~』第24話のサブタイトルが『時計仕掛けのスウィーツ』だったのでご紹介。  元ネタは言うまでもありませんが、お話はかなり強引・・・希望にあふれる良いお話で、確かにタイトル通り「時計仕掛けのスウィーツ」であることは(ほぼ)間違いないです。公式サイトを見るとサブタイにチラホラ映画ネタがあるので、これもそこからの発想でしょう。  『名探偵コナン』の劇場版にも『時計じかけの摩天楼』というのがありましたが、こうして無意識の内に幼い頃から「時計じかけ」という慣用句が刷り込まれてしまい、その行き着く先があの作品というのはなんだか皮肉なものを感じます。「時計じかけ・・・ってどっかで聞いたことあるな。よし、これ(時計じかけのオレンジ)観てみよ→絶望」という図式が日本全国で繰り返されているのだとしたら、こんなに面白い・・・いや、悲惨なことはないですね(笑。  現在このアニメはAmazonプライムで視聴できますので、興味のある方は こちら からどうぞ。公式サイトは こちら 。

【関連記事】関係者が語る「偉大なる熱血映画小僧」スタンリー・キューブリックのエピソード集

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Stanley Kubrick(IMDb)  〈前略〉 レオン・ヴィタリ (『バリー・リンドン』『アイズ ワイド シャット』俳優、『シャイニング』『フルメタル・ジャケット』『アイズ ワイド シャット』パーソナルアシスタント、『フルメタル・ジャケット』『アイズ ワイド シャット』キャスティングディレクター):スタンリーが引きこもりだという話ですが、彼は家に閉じこもりがちでしたが、時々外に出て買い物をするんです。一流の映画監督で、自分で買い物をする人がどれだけいるでしょうか? ラリー・スミス (『アイズ ワイド シャット』撮影監督):スタンリーが世捨て人であるというのは誤解です。確かに初対面の人に対しては少しシャイでしたが、それも長くは続きませんでした。何か興味のあることを見つけて、その人とコミュニケーションが取れれば、それでいいのです。スタンリーは、いろいろなことに広い視野を持っていました。彼はインテリであることは間違いないです。父親は医者でしたが、スタンリーは独学で勉強しました。本を読み、政治、宗教、スポーツなど、あらゆることについて自分の意見を述べることができました。また、スタンリーはとても温厚な面も持っていた。私が彼の家の台所に行くと、彼はコーヒーを淹れてやってきて、「トーストとか、何か食べるかい?」と言って手で取り出して、テーブルの上に叩きつけて、焦げたパンくずを取り除くんです。「ナイフでバターを塗ろう」と言うんです。コーヒーもこぼれるし、散らかり放題。僕にとっては、それが最高なんです。「スタンリー・キューブリックが紅茶とトーストを作ってくれているんだ!」と思ってね。そういう些細なことの大切さは、その人が亡くなって、もう二度とできないんだということが分かって初めて分かるんです。 ケン・アダム (『博士の異常な愛情』『バリー・リンドン』プロダクションデザイナー):スタンリーは、『バリー・リンドン』のすべて、あるいはそのほとんどを、自宅のあるエルスツリーから文字通り30マイル圏内で撮影することを望んでいたのです。当時、『時計じかけのオレンジ』は大成功を収めていましたが、彼は脅迫状をたくさん受け取っていて、遠くのロケ地に行くことに少し抵抗があったのです。私はその計画がうまくいくとは思えないと彼に言いました。彼のこの問題に対する姿勢には非常にイライラさせられま...

【ブログ記事】キューブリック作品の映像が、隙のない完璧なものに見える理由

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この洗練された完璧な映像たちはキューブリックの独断と命令によって得られたものではない  おそらくかなり多くの人が誤解(アマチュアだけでなく、いわゆる映画評論家や解説者と言われている人たちまで)していることに「どうしてキューブリック作品の映像は完璧で、隙がないように見えるのか?」があります。大多数の人はキューブリックは完璧主義者なので、自分の頭の中に描いたイメージを極限まで追い求めた結果であると考えていますが、それは「完全に誤解」です。  キューブリックが多テイクなのは有名ですが、その「多テイク」を語る際に忘れがちなのが、カメラマンやカメラ助手(フォーカス・絞り担当者、動作担当者)、プロップ(小道具)担当者や照明担当者などの撮影スタッフの存在です。つまり彼らスタッフにとって、同じシーンを繰り返し撮影するということは、それだけ映像の完成度を上げる絶好の機会だということです。ワンショット目よりも20ショットめの方がそのシーンのコツを掴み、カメラ動きも洗練されます。加えてその度に構図や照明の微調整もなされ、映像の完成度も上がっていきます。もちろん全てのことに関し、キューブリックは口うるさく干渉しますが、それは「ああしろ、こうしろ」というものではなく、「あっちの方がいいかな。こういうやりかたもあるかも」と、俳優やスタッフとアイデアを出し合いながら練り上げて行ったものなのです。つまりキューブリックの撮影現場は「トップダウン的な手法」ではなく「錬金術的(トライ&エラーを繰り返す)な手法」と言えるでしょう。  キューブリックの関連書籍を読むと、多くの俳優やスタッフがこの「錬金術的な手法」について、「自分の技術や才能を搾り取られる」という表現をしていることに気づきます(そしてヘトヘトになる。笑)。とにかくキューブリックはしつこくて諦めが悪いのです。何度も何度もショットを繰り返し、無駄を削ぎ落とし、そのシーンの最適解を見つけようとする・・・その結果、完璧で隙のない映像が得られるわけですが、その映像だけ観た観客や視聴者は「キューブリックは完璧主義者である」という刷り込みから、勝手に「キューブリックがトップダウンで命令した結果」と思い込み、それをネット上あちこちで触れ回る、という状況に陥っています。まあ一般の視聴者がそう誤解するのは仕方ないにしても、それなりにフォロワーを抱えている...

【関連記事】『2010年』製作の裏話を語るピーター・ハイアムズのインタビュー

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Peter Hyams(IMDb) 〈前略〉 —『2010年』を引き受けることに不安はなかったのですか?  MGMから『2010年』を依頼されたとき、私はやりたくなかったんです。私がスタンリー・キューブリックと比較されるのは、背の低い人がシャキール・オニールと比較されるようなものだからです。私はこの本を読んでMGMに「このプロジェクトを引き受けるには2つの条件がある」と言ったんです。ひとつは、アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックの許可が必要なこと。もうひとつは、私の経歴と、この本がロシア人とアメリカ人が協力して宇宙を航海をするという内容であることから、冷戦をもっとテーマにした作品にしたいということです。宇宙にいる間は、地球上ではあまり良い状態ではない、平和ではない状態を作りたかったのです。レーガン政権の時代です。MGMは「問題ない」と言ってくれました。  スリランカにいるアーサー・C・クラークと長距離電話をしたのですが、彼はとてもいい人でした。彼は私がやりたいことに賛成だと言ってくれました。私は彼と密接に協力し、脚本を書きながら彼にページを送り、コメントをもらいたいと伝えました。当時はまだコンピュータがない時代。Kプロは私のオフィスとアーサー・C・クラークの家にコンピュータを設置しました。毎日、私が書いたものをバイナリ送信して朝には彼のコメントが届くのです。  スタンリー・キューブリックと話をする時間を設けました。私がオフィスにいると、秘書が入ってきて、「スタンリー・キューブリックから電話です」と言ったのを覚えています。私は電話に飛びつき、文字通り立ち上がりました。彼と話している間、ずっと立っていたんです。私は「こんにちは、キューブリックさん」と言いました。すると彼はすぐに「『アウトランド』で、あのショットはどうやって撮ったたんだ・・・」と言い出し、私がどうやったか、なぜそうしたか、どのレンズを使ったか、F値はいくつかなど、撮影に関するあらゆる技術的な質問をし始めたんです。会話の約1時間半後、私は「聞いてください。あなたは私が・・・を行うことを認めますか?」と尋ねました。そして私が言葉を発する前に彼は「ああ、ええ、結構です。あなたはそれによって素晴らしいことになるでしょう」。そして彼は技術的な質問を続けました。電話を切る前に、彼は「これが私があなたに伝...