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【関連記事】カリフォルニアを車で行く。 ⑦ハーストキャッスルへ

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スパルタカス』でクラッススの別荘として登場したハースト城 〈前略〉 【Vol.7】サンタバーバラ→サンシメオン(ハーストキャッスル)  古き良きカリフォルニアの空気が漂うセントラルコースト。サンルイス・オビスポ・カウンティはその中心に位置する、風光明媚(めいび)な景観と広大なワインカントリーに囲まれたエリアです。そこで今回は、その中にあるサンシメオンという美しい海岸線の街を目指します。  ここはかつて新聞王と呼ばれ、メディアコングロマリット「ハースト・コーポレーション」の創業者でもあるウィリアム・ルドルフ・ハーストが育った町。彼はこの美しい海岸線を見下ろす丘の上に、膨大な資金を投じて豪華絢爛(けんらん)な城を建設しました。それが「Hearst Castle(ハーストキャッスル)」です。完成後は妻と別居してここで愛人と暮らし、ハリウッドスターや政財界の要人をここでもてなし、まさにメディア王としての生活を謳歌(おうか)したのでした。 〈中略〉  映画のロケなどの商業撮影はほとんど許可されていませんが、なぜか以下の次の二つのプロジェクトにだけは撮影許可が出ています。一つはカーク・ダグラス製作総指揮、スタンリー・キューブリック監督の1960年公開の映画『スパルタカス』。ローレンス・オリヴィエ扮(ふん)するクラッススの別荘として、ハーストキャッスルがスクリーンに登場しています。もう一つは2014年のレディ・ガガの『G.U.Y.』のミュージックビデオです。ネプチューン・プールとローマン・プールで撮影されました。 (引用: エスクアィア日本版/2023年7月13日 )  メディア王ハーストは、映画ファンなら誰もが知るオーソン・ウェルズの傑作『市民ケーン』のモデルとして有名ですが、その邸宅であるハースト城が商業撮影を許可していないとは知りませんでした。確かにロケにはおあつらえ向きの施設なのに、頻繁に映画に登場しているという印象はなかったですね。  その希少なロケ作品に『スパルタカス』が含まれるわけですが、キューブリックは『市民ケーン』を高く評価していたので、そのモデルとなったハーストの居城でのロケ撮影に感慨深いものがあった・・・のかどうかは証言がないので不明です。ただ、キューブリックが思い通りに作れなかった(不満タラタラだった)本作であっても、ほぼ全編においてキューブリックの判断と...

【関連記事】キューブリックは『スパルタカス』の「私がスパルタカスだ!」のシーンを「バカなアイデアだ」と酷評した

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 〈前略〉  スパルタカスを演じた俳優カーク・ダグラスは、その3年前にキューブリック監督の『突撃』に主演し、『スパルタカス』の監督としてキューブリックを起用したのだが、100歳の誕生日を迎えた2016年のインタビューで、監督との仕事の経験を語っている。有名な「私がスパルタカスだ!」というシーンを撮影するとき、ダグラスはキューブリックにどう思うかと尋ね、キューブリックは「バカなアイデアだ」と答え、それをキャストとスタッフが耳打ちしたそうだ。ダグラスがキューブリック監督を説得して撮影にこぎつけたのは、執拗な口論(そしてダグラスの妻が勧めたキューブリックとのセラピー)の末のことであった。  結局、キューブリックが『スパルタカス』に不満を抱いたのは、「私がスパルタカスだ!」という瞬間だけではなく、主人公を完璧な道徳的人物として描いた脚本や、彼がコントロールできなかった製作の様々な要素もあり、そのすべてが『スパルタカス』を彼がこれまでに作った最悪の映画と評するに至ったのである。  「私がスパルタカスだ!」のシーンの撮影は、カーク・ダグラスとスタンリー・キューブリックの共同作業の歴史の中の一つの衝突に過ぎない。ダグラスはキューブリックを『スパルタカス』に雇い入れただけでなく、監督の前作『現金に体を張れ』を見た後、1957年の『突撃』にキューブリックを起用(注:これは正しくなく、キューブリックが立ち上げた企画の主役にとダグラスへオファーをした)したのだ。キューブリックは、主人公と悪役が仲直りする商業的な、論争の余地のない結末を好み、ダグラスは、部下の将校を死刑から救おうとする英雄的な大佐として、自分のキャラクターを前面に出した物語を好んだ。  『スパルタカス』の製作中、二人の争いは喧嘩腰にさえなった。ダグラス自身の証言によると、映画の最後に十字架に磔にされたスパルタカスのクローズアップを削除しようとしたキューブリック監督に激怒し、逃げようとする監督に向かって折りたたみ椅子を投げつけ、「くそったれ、キューブリック出て行け!」と怒鳴ったというのである。  『スパルタカス』製作中の確執で、その後一緒に仕事をすることはなかったものの、ダグラスはキューブリックとのコラボレーションを前向きに捉えているようで、「気難しい?キューブリックはその言葉を発明したんだ・・・。でも、彼は才能があ...

【ブログ記事】カーク・ダグラスがスペインで『スパルタカス』の戦闘シーンを撮影中のキューブリックに宛てた手紙

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 スタンへ  便りがないのは良い便りだということを願っています。すべてが順調に進んでいると信じています。こちらでできることがあれば何でも言ってください。  その間、私に手紙を送って、何を作っているのかを知らせてください。  こちらではすべてがいつも通りに進んでいます。キムはヒステリックに、ディック・クワインは感情的に動揺していますが、もちろん私はどうということではないだろうと知っているので、そのまま進めています。  アーヴィンからフットボールの試合のサウンドトラックを手に入れたことを聞いたでしょう。どうやら彼らは非常に上手くやったようです。  もし何かの助けになるのなら。私はあなたとあなたの軍隊のことをしょっちゅう考えています。 カーク・ダグラス  カーク・ダグラスがスペインで『スパルタカス』の戦闘シーンを撮影中のキューブリックに宛てた手紙がありましたのでご紹介。ずいぶんと心配しているようですが、カークはスペインのロケには行っていないんですね。戦闘シーンを見るとスペインで撮ったロングの画と、ハリウッドで撮った寄りの画を上手く編集でつないでいます。改めてこのシーンを見ると、キューブリックは『ナポレオン』でこれがやりたかったんだろうなあ・・・としみじみ思ったり。当のキューブリックは妻のクリスティアーヌと一緒だし、うるさいカークもいないことから新婚旅行気分だったかも知れませんが、スペインから帰りの飛行機が生涯最後の飛行機搭乗になってしまいました。かなり揺れて酷い目に遭ったという話があるのですが、ソースが見つかればまた記事にしたいと思います。

【関連動画】『スパルタカス』のオリジナル劇場予告編

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 『スパルタカス』のオリジナル劇場予告編で日本語字幕付きの動画がアップされていましたのでご紹介。ソースはスタンダードのアス比や、映像の荒さ、懐かしいフォントから推察するにVHSでしょうか。見ての通りキューブリックの「キューの字」も出てこない予告編ですが、いかにも当時のハリウッドの大作映画ありがちな大げさなナレーションや、ヌルいカット割りを見る限り、キューブリックが編集したものではなさそうです。同じ映像は特典としてDVD等にも収録されています。

【パロディ】スタバで「 I am Spartacus!」

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 スターバックスを狙ったフラッシュモブと呼ばれるイタズラ動画が話題となっています。   剣闘士の男性は注文待ちの行列に並び、飲み物を注文しました。 そして準備が出来て店員が”スパルタカスさん”の呼び出しを行ったとき、 男性や他の仲間達が「私がスパルタカスだ!」と口々に叫んだのです。 これはスタンリー・キューブリックの「スパルタカス」の有名なシーンを再現したものでした。 事情を知らないスタッフや他の客はこの光景に衝撃を受け、そして大声で笑うしかなかったそうです。   最後に剣闘士の男性はゆっくりと余韻を残し、「私がスパルタカスだ。どうもありがとうございました。」と言いました。 この一連のパフォーマンスに店の中は拍手の渦に包まれました。   いたずらを主催したグループは、他にも数々の動画を撮影し、ネット上にアップロードしているとの事です。  (引用: Mirror News/2013年11月29日 )  ちょっと笑わせていただきました(笑。真面目な話をすれば、このシークエンスは『スパルタカス』で脚本を担当したダルトン・トランボが、共産主義者は仲間を売るようなマネはせず、連帯が強い事を示す意味で採用したものです。しかし時代は流れ、そんな共産主義の理想などこんなギャグのネタ程度にしかならなかったようです。  キューブリックもこんな偽善まみれの嘘くさいシークエンスなど撮りたくはなかったでしょうけど、我慢して仕事に徹したんでしょう。その不満は次作『ロリータ』での このセリフ で皮肉ってます。  そんなキューブリックの態度に怒り心頭だったのが主演のカーク・ダグラス。その怒りは有名な「才能あるクソッタレ」へと繋がっていきます。  でも、こうしてパロディにされるほど、このシークエンスは定番ネタとして定着しているって事ですよね。この事を存命中のカークはどう思っているのでしょうか。キューブリックはいち早く次作でパロディにしていますから、世の中は当時キューブリックが感じていた方向に動いた、と言えるでしょうね。

【俳優】才能あるクソッタレ(a talented shit)

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 カーク・ダグラスが1988年にした自叙伝『くず屋の息子』でキューブリックを評した有名なこの言葉、少し「才能あるクソッタレ」の部分が一人歩きしているように思うので、もう少し前段を引用してみます。 「『スパルタカス』以降の約30年間、キューブリックは7本の映画しか作っていない。もし僕が彼を手放さずにいたら、その残りの映画の半分が、僕の会社のものになっていた」「素晴らしい才能と、性格の良さは関係ない。クソッタレが素晴らしい才能を持つこともあれば、その反対に、本当にイイ奴で微塵の才能もない者もいる。スタンリー・キューブリックは、才能のあるクソッタレだ」(引用:『映画監督スタンリーキューブリック』)  この一文を読むとカークは、キューブリックの契約解除に応じた後成功を収め、高い評価と莫大な興行収入をもたらした事実にある程度敬意を払っているようにも受け取れます。もちろん両者の個性の違いから、たとえ『スパルタカス』直後は引き止めに成功していたとしても、いづれの両者の決裂は自明だったでしょう。  ひょっしたらキューブリックはカークから自由になりたかったのかも知れません。「カークの元にいる限り、俺は一生雇われ監督だぞ」という危機感を感じていたとしたら、キューブリックの数々の無神経な振る舞いも計算ずくであった可能性もあります。  カークはこの時40歳半ば、キューブリックは30歳。親子とまではいきませんが一回り以上年上のカークは、キューブリックにとって乗り越えなければならない父親のような存在にも思えます。だからこそ、あえて反抗的な態度に出た。そうやって独立し成功した息子のようなキューブリックに贈った、愛憎半ばするカークなりの賛辞だったのかも知れません。

【ロケーション】ハースト城(Hearst Castle)

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 『スパルタカス』でクラッサスの別荘のシークエンスが撮影されたのは、あの悪名高きメディア王で『市民ケーン』のモデルでもあったハーストの邸宅、サン・シメオン宮殿。現在の「ハースト城」です。  キューブリックにしてみれば、自身が好きな映画の第3位に挙げた『市民ケーン』のモデルになったハースト邸でのロケに感慨深いものがあったかも知れませんが、当時まだ30代半ばと若かったキューブリックにとってはそれどころではなかったかも知れませんね。

【トリビア】スパルタカスの磔(Crucifixion of Spartacus)

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 『スパルタカス』のラストシーン、当時史実ではスパルタカスがどのように死んだかよく分かっていなかったため「アッピア街道に磔になり、その前で自由になったヴァリニアは子供を掲げる」というけ結末が創作された。(現在はシラルス川の戦いで戦死したというのが定説になっている)ただ、あからさまにキリストの磔や受胎を思わせるようなシーンに、キューブリックは当初は磔になったスパルタカスの姿をまるまるカットしていた。それを見たカークは激怒、椅子を投げつけて周囲に怒鳴り散らしたという。  キューブリックは善悪の二元論やありきたりなヒーロー像を好まない。キューブリックはカークが怒るのを承知の上でカットしたフィルムを見せた。それはキューブリックの思い通りにならなかった本作へのせめてもの抵抗だったのかも知れない。それは次作『ロリータ』での「いいや、俺はスパルタカスだ(No, I'm Spartacus)」の台詞にも表れている。

【パロディ】ペプシコーラのスパルタカスCM

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 ローマの隊長が「ランチの忘れ物だ!ん、ペプシがある。スパルタカスって名前だ。スパルタカスは名乗りを上げろ!!」・・・で一連のシークエンスに突入です(笑。  新作部分と映画部分で違和感はありますが、まあよくできています。元ネタのシークエンスが真面目に感動的であろうとしすぎているために余計に笑えます。脚本を書いたトランボのオメデタ・・・いや理想主義者っぷりはもうギャグの領域ですね。

【台詞・言葉】私がスパルタカスだ!(I'm Spartacus!)

 この一連のシークエンス、とても偽善的で嘘くさく、安っぽいヒロイズムが横溢しているので絶対キューブリックが撮りたくなかったんじゃないかと想像していたのですが、やっぱり脚本のダルトン・トランボが当時の赤狩りに対し、共産主義者は他人を巻き込まず、連帯が強い姿を示すために採用したようです。  その後、共産主義の理想は崩壊し今ではすっかりギャグの域に到達。ナチズムもそうですが、一元的な理想主義は今から見ればタチの悪い冗談としか思えません。その理想主義の成れの果てが弾圧と粛正と殺戮ですからね。君たちは奴隷側ではなくホントはローマ側でしょ?とツッコミたくなります。  ジョン・マルコヴィッチの『Color Me Kubrick』の邦題『アイ・アム・キューブリック!』はここからの引用だと思いますが、このシークエンスを主導したのがキューブリックでないのなら、この皮肉なタイトルも的外れ、という事になります。配給会社はもっと調べてからにすればよかったですね。

【台詞・言葉】牡蠣〈カキ〉と蝸牛〈カタツムリ〉(Oysters and Snails)

 『スパルタカス』でクラサスとアントナイナスの同性愛を示唆しているとカットされた風呂場のシーンで語られる例え。クラサスは自分の身体をアントナイナスに洗わせながら「牡蠣は食うのか?」「蝸牛は?」「牡蠣を食うのは美徳で蝸牛は悪徳か?」「味覚と食欲は違う、故に徳とも関係ない」などとねっとり語っているので示唆どころかそのまんまです。さすがリアルでもホモ(正確にはバイセクシャル)だったローレンス・オリビエ、演技とはとても思えません。  まあこのシーンがないと、クラサスがスパルタカスに激しく嫉妬し憎悪を向ける理由が、アントナイナスとバニリアの両方に愛されたからだという説明の片方が欠けるわけで、それなりに重要ではあります。その意味では完全なオリジナルプリントが残っていない状態で、しかもオリビエは既にこの世を去っていたというハンデにも関わらず復活させた関係者(特にクラサスの台詞をアフレコしたアンソニー・ホプキンス)の努力には頭が下がります。

【登場人物】クラサス(Crassus)

 『スパルタカス』でローマ元老院で閥族派(オプティマス)の長老。女奴隷のヴァリニアを気に入り、スパルタカスからヴァニリアを奪おうと何かと画策するが結局果たせなかった。クラサスが同性愛者だったことを暗示させるシークエンスは、当時の検閲を考慮してカットされたが、後のTV放映やBD等では『復元版』として復活している。演じたローレンス・オリビエは実際にホモセクシャル(正確にはバイセクシャル)だったようで、マーロン・ブランドとプールでキスしていたところを目撃されている。マーロン・ブランドといえば『片目のジャック』でキューブリックと対立し、遂には追い出してしまった元凶。その二人の間では当時「やあローレンス、キューブリックとは上手くいっているかい?」「君は奴を自分の映画から追い出したそうじゃないか、マーロン」「あの若造は俺の言う事にはいっさい従わなかったからな。そういう奴は大嫌いなのを知ってるだろ?」「ああ、よく知ってるよ、マーロン・・・」などという会話が交わされた・・・のかも知れない。

【俳優】ローレンス・オリビエ(Laurence Olivie)

 『スパルタカス』でクラッカスを演じた言わずと知れた名優。スター俳優だが渋い脇役としての起用も多く、それも印象に残る役が多い。他の出演作は『お気に召すまま』('36)、『嵐ケ丘』('39)、『レベッカ』('40)、『ヘンリー五世』('44)、『ハムレット』('48)、『黄昏』('52)、『三文オペラ』('53)、『リチャード三世』('55)、『王子と踊子』('57)、『空軍大戦略』('69)、『三人姉妹』('70)、『探偵スルース』('72)、『マラソンマン』('76)、『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』('76)、『遠すぎた橋』('77)、『ジャズ・シンガー』('80)、『タイタンの戦い』('81)など。  『ハムレット』でアカデミー主演男優賞受賞している『ヘンリー五世』はキューブリックが選んだ映画ベスト10の第6位にランクしていることから、その監督・主演俳優を演出できただけでも『スパルタカス』に参加した意義があったのかも知れない。貴族(Lord)の爵位を与えられるくらい賞賛されているが、結婚生活も二度破綻させ(ひとりはあのヴィヴィアン・リーだ)三度目の結婚でやっと落ち着いた。ただ、実はバイセクシャルだったと三人目の妻ジョーン・プロウライトは回想している。  1907年5月22日生まれ、1989年7月11日死去、享年82歳。

【考察・検証】『スパルタカス』を巡るキューブリックとカーク・ダグラスの暗闘

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 生前「『スパルタカス』は私の作品ではない」と発言していたキューブリック。作品の製作に関する事全てを把握しコントロールするのが信条のキューブリックにとって、そうはならなかった本作品を除外したい気持ちは痛いほど分かる。実質的に現場を取り仕切っていたのがカーク・ダグラスとドルトン・トランボであり、事あるたびに衝突していたという事実を考えれば、キューブリックがいつ降板しても不思議ではない状態にあったはず。では何故そんな屈辱的な状況にも関わらずこの仕事を降りなかったのか。当時のキューブリックの置かれた状況からまずは考察してみたい。  キューブリックにとってハリウッド3作目に当たる本作は、『突撃』で獲得したハリウッド内での地位を確たるものにし、さらに一般レベルでの認知度を広めるには絶好のチャンスだったに違いない。何故なら当時流行の歴史スペクタルカラー大作であり、スターが軒並み出演する話題作でもあり、何よりもビックネーム、カーク・ダグラスが主演するのである。これはもうヒット確実で上手く行けばアカデミー賞さえ狙えると考えるのが当然である。キューブリックはこの作品に「監督」としてクレジットされれば、その後の作品制作の資金集めやマスコミの注目度など、メリットは計り知れないと考えたはず。そのためにはなんとしてでもこのプロジェクトをやり遂げなければならず、それによる数々の(キューブリックにとっての)不合理には耐える以外になかったのであろう。  その野心の一旦は、本作を監督しながら着々と次作『ロリータ』の準備をしていたことからも伺える。つまり『スパルタカス』の話題がまだホットな内に、あまり間を空けず矢継ぎ早に作品をリリースしたいというキューブリックの思惑が垣間見える。そんな野心丸出しのキューブリックを見てカークが好意的に思うはずはなく、両者の不仲は決定的なものになる。カークにとってキューブリックは「才能を見いだし、チャンスを与えてやった後輩監督」なのであり、「自分はキューブリックの恩人」という自負もあったはず。そんなカークを顧みず、自身の野望のためにひたすら邁進するキューブリックに理解を示す要素など皆無だ。  本作は世界中で大々的に興行され大ヒットし、アカデミー賞(助演男優賞・撮影賞・衣裳デザイン賞)を受賞する。自分のやり方は間違ってなかったとカークの自尊心はさぞかし満たされたであろう。こ...

【ブログ記事】スタンリー・キューブリックとアカデミー賞

 さて、キューブリックとアカデミー賞ですが、自身の名義で獲得できたのは『2001年宇宙の旅』の「特殊視覚効果賞」のみ。それも、本来の該当者は4人だったのに、アカデミーから「一つの賞に該当者は3人まで」と言われて代表でキューブリックが受け取ったというもの。さらに悪かったのは名誉賞(当時メイクアップ賞はなかった)が『猿の惑星』に奪われた事。これにはクラークも怒り心頭で「アカデミーの審査員は、猿人を本物と思い込んだんだ!」と吐き捨てたそうです。  キューブリックはもちろん、アカデミー賞受賞における興行的価値は理解していたので(資金集めに苦労しっぱなしのキューブリックは、興行成績が次作の資金集めに影響するのを恐れていた)受賞資格を得る為にわざわざ上映時期をずらしたり期間中に再上映したりしていたのに、アカデミー賞にはノミネートがせいぜい。まあ「ハリウッドの異端」「イギリスへの亡命者」とされていたキューブリックに、身内が身内を誉め讃えておめでたがる閉鎖的なハリウッドが賞なんか贈るはずがないわけで、かえってこのぐらい無視されている方がスッキリしていて気持ちいいくらい。お願いだから「アカデミー特別賞」なんて中途半端な代物を贈る事なく、死して後も尚「ハリウッドに背を向け続けた映画界最大の巨匠」であり続けて欲しいものです。 【キューブリック作品で獲得したアカデミー賞】 ●『スパルタカス』 最優秀助演男優賞/ピーター・ユスティノフ 最優秀撮影賞/ラッセル・メティ 最優秀美術監督賞/アレクサンダー・ゴリツェン、エリック・オーボム、ラッセル・A・ゴスマン、ジュリア・ヘロン 最優秀衣裳デザイン賞/J・アーリントン・ヴァレーズ、ビル・トマス ●『2001年宇宙の旅』 特殊視覚効果賞/スタンリー・キューブリック ●『バリー・リンドン』 最優秀撮影賞/ジョン・オルコット 最優秀衣裳デザイン賞/ウルラ=ブリット・ショダールンド、ミレナ・カノネーロ 最優秀美術監督賞/ケン・アダム、ロイ・ウォーカー、ヴェロン・ディクソン 最優秀編曲賞/レナード・ローゼンマン

【登場人物】アントナイナス(Antoninus)

 『スパルタカス』で、スパルタカスの腹心。クラサスの元奴隷であり、愛人だった。最後はスパルタカスとの決闘を経て死亡する。

【俳優】トニー・カーティス(Tony Curtis)

 『スパルタカス』でスパルタカスの腹心、アントナイナスを演じた。元妻はクリスティーネ・カウフマンとジャネット・リー。ケリー・カーティスとジェイミー・リー・カーティスの二人の娘がいる。   主な出演作は『裏切りの街角』(1949)、『シエラ』(1950)、『ウィンチェスター銃'73』(1950)、『命知らずの男 』(1950)、『盗賊王子』(1951)、『アリババの復讐 』(1952)、『挑戦者』(1952)、『挑戦者』(1952)、『命を賭けて』(1953) 、『魔術の恋』(1953)、『ジョニイ・ダーク』(1954)、『フォルウォスの黒楯』(1954)、『六つの橋を渡る男』(1954)、『橋頭堡を攻撃せよ」(1954)、『顔役時代」(1955)、『四角いジャングル」(1955)、『空中ぶらんこ』(1956)、『野望に燃える男』(1956)、『成功の甘き香り』(1957)、『バイキング』(1957) 、『復讐に賭ける男』(1957)、『最后の接吻』(1958)、『手錠のまゝの脱獄』(1958)、『休暇はパリで』(1958)、『お熱いのがお好き』(1959)、『ペティコート作戦 』(1959)、『奥様ごめんなさい』(1959)、『ねずみの競争』(1960)、『おとぼけ先生』(1960)、『ペペ』(1960)、『硫黄島の英雄』(1961)、『隊長ブーリバ 』(1962)、『40ポンドのトラブル』(1962)、『秘密殺人計画書』(1963)、『 ニューマンという男』(1963)、『パリで一緒に』(1963)、『ムッシュ・コニャック』(1964)、『求婚専科』(1964)、『さよならチャーリー』(1964)、『グレートレース』(1965)、『ボーイング・ボーイング』(1965) 、『恐怖の蝋人形』 (1966)、『おれの女に手を出すな』(1966)、『結婚詐欺』(1966)、『サンタモニカの週末』(1967)、『絞殺魔』 (1968)、『花ひらく貞操帯』(1968) 、『モンテカルロ・ラリー』 (1969)、『アドベンチャー』 (1970)、『暗黒街の顔役』 (1974)、『ラスト・タイクーン』(1976)、『マニトウ』(1978)、『クリスタル殺人事件』(1980)、『マリリンとアインシュタイン』(1985)、『キッチン・ウォーズ/彼女の恋は五...

【サウンドトラック】ALEX NORTH SPARTACUS[6CD+DVD+BOOK]<限定盤>

ALEX NORTH SPARTACUS[6CD+DVD+BOOK]<限定盤> ●Disc1 Overture (4:00) Main Title * (3:17) The Mines (3:01) Caravan (1:15) First Pair (3:44) Gladiators Fight To The Death * (2:20) Brooding (2:20) On To Vesuvius (Forward, Gladiators / Forest Meeting) * (4:52) Oysters And Snails (Film Version) (3:07) Hopeful Preparations / Vesuvius Camp * (1:59) Vesuvius Montage (1:19) Blue Shadows And Purple Hills * (3:11) Headed For Freedom * (3:15) Homeward Bound (On To The Sea / Beside The Pool) * (6:27) Metapontum Triumph (1:35) Festival (3:21) Expectant Parents (3:07) Prelude To Battle (Quiet Interlude / The Final Conflict) * (5:11) Formations (1:35) Goodbye My Life, My Love / End Title * (4:16) Spartacus Love Theme * (2:50) On To The Sea / Infant Burial (3:03)※BONUS TRACK Oysters And Snails / Festival (Album Version) * (3:24)※BONUS TRACK *cues from the original Decca soundtrack album ●Disc2 Overture (3:59) Main Title (3:41) The Mines (3:00) Caravan (1:17) Varinia's Theme (3:15) Training The Gladiators...

【サウンドトラック】ザ・サウンドトラック・アルバム・スパルタカス(The Sound Track Album Spartacus)

ザ・サウンドトラック・アルバム・スパルタカス/アレックス・ノース(Amazon) Main Title (3:20)|メイン・タイトル  Love Theme (2:51)|スパルタカスの愛のテーマ  Gladiators Fight To The Death (2:23)|剣闘士達は死ぬまで斗う  Blue Shadows And Purple Hills (3:12)|ブルー・シャドウズ・アンド・パープル・ヒルズ  Homeward Bound: (A) On To The Sea (B) Beside The Pool (6:30)|故郷へ:海へ~池のほとりで  Hopeful Preparations, Vesuvius Camp. (2:00)|希望への準備~ベスビアス・キャンプ  Prelude To Battle: (A) Quiet Interlude (B) The Final Conflict (5:14)|戦いへの序曲:静かなる間奏曲~最後の争い On To Vesuvius: (A) Forward, Gladiators (B) Forest Meeting (4:55)|ベスビアスへ:進め!剣闘士よ~森での会合 Oysters And Snails - Festival (3:26)|牡蠣と蝸牛~祭礼 Headed For Freedom (2:22)|自由の身へ Goodbye. My Life, My Love. - End Title (4:18)|生命も恋も捨てて~エンド・タイトル   映画本編はカーク・ダグラスの聖人君子ぶりや、脚本のメロドラマ性、絵に描いた理想主義が鼻につく『スパルタカス』だが、王道とはいえこの堂々としたサントラは良曲揃いでクオリティが高い。作曲したアレックス・ノースは完成までに1年以上を費やしただけの事はあり、どの曲もよく練られている印象だ。『2001年…』でキューブリックが再びノースにサントラを依頼したのも頷ける。  1950年代という時代は映画製作において非常に音楽が重要視された時代で、大作映画の上映時には観客の高揚感を煽るためオーバーチュア(序曲)の演奏が通例であった。ただ、残念な事にこのサントラではカットされてしまっている。  『メイ...

【登場人物】グラッカス(Gracchus)

 『スパルタカス』で元老院の民衆派長老。閥族派クラサスとの政争に破れ自殺してしまう。そんな悲劇的な運命を辿るのに、演じたチャールズ・ロートンの風貌がそうさせるのか、ちょっとユーモラスで愛嬌があるキャラクターになっている。