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【関連動画】『2001年宇宙の旅』の未公開シーンとセット画像を集めた動画と、クラビウス基地で登場したハンディカメラをニコンがデザインしたという説明の信憑性について

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動画内で「ニコン製」と説明されたハンディカメラと登場シーン  『2001年宇宙の旅』の製作時に撮影された写真と未公開シーンを集めた動画がありましたのでご紹介。  どの写真やイラストも こちら のサイトからの引用だと思いますが、引用元のサイトは製作当時撮影されたものと、後の時代に再現されたものが混在しているので、ある程度の知識がないと判断は難しいと思います。その点この動画でチョイスされている写真・イラストは私が判断するかぎり全て「当時もの」だと思います。ただし、概要欄で注釈がある通り、6:22の年老いたボーマンのメイク写真は『2010年』製作時のものですね。もちろんスターチャイルドの造形を担当したリズ・ムーアが『時計じかけのオレンジ』のヌードテーブルを製作している写真(5:18)も違いますが、まあこれはリズのキャリアを説明するために用意しただけなので、間違いとは言えないでしょう。  この動画で一番驚いたのは   クラビウス基地の会議室で使われていたハンディカメラはニコンが提供したという説明です。もちろん初耳です。確かにニコンのレンズはHALの見た目映像(魚眼)で使用され、プロップにも埋め込まれたことは知られています(詳細は こちら )。しかしこれはニコンが協力したというより、キューブリック側が「採用した」という話であって、レンズの入手は単に正規ルートで購入したということだと思います。ですがハンディカメラの話はそれとは異なり、ニコンがデザインしたものをキューブリック側に提供したということになります。そんな話は今まで見たことも聞いたこともありませんし、これを鵜呑みにすることはできないでしょう。なぜなら、それが事実なら日本人である我々がとっくに知っていなければならない話だからです。  キューブリックは『2001年…』の製作にあたり、映画内でロゴを登場させるなどの宣伝と引き換えに、数多くの企業に最先端の未来技術の提供を呼びかけました。それに応じたのがIBM、ベル、ボーイング、クライスラー、パンナム、BBC、GE、パーカーなどの企業です。その中にニコンが含まれていれば当然公開当時から話題になっていたはずです。動画内でその情報のソースは示されていない以上、軽々に鵜呑みにはできません。もちろん確かなソースがあれば別ですので、この情報の詳細をご存知の方がい...

【プロップ】『時計じかけのオレンジ』に登場したヌードテーブルの初期案やヌード自動販売機の画像

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 画像は全て『フルメタル・ジャケット』25周年記念BDにパッケージされていたドキュメンタリー、『STANLEY KUBRICK'S BOXES』からのキャプチャになります。  キューブリックはアレン・ジョーンズにデザインを断られた後(詳細は こちら )、リズ・ムーアにこのヌードマネキンの制作を託すのですが、当初はかなりリアル寄りだったことがこれでわかります。ポーズも採用されたものと異なりますね。キューブリックはここまで完成していても「ボツ」にしてしまったのですが、その理由は想像ですがやはり厳しいレイティングを嫌ってのことだったと思います。是が非でもX指定を免れたかったキューブリックは、より穏当な、マネキンに近いデザインを目指したのではないでしょうか。  それは、ヌード自動販売機のスイッチに採用された「陰茎型スイッチ」にも見て取れます。当初のデザインは これ と これ でした(リアルなので閲覧注意)。まあ、ここまで気を使っても結局はX指定だったわけですが、公開をいったん中断してまで再編集し、後に念願のR指定を勝ち取るわけですから(詳細は ここ で)、キューブリックってやっぱり執念深いと言うか諦めが悪いと言うか(笑。でもその「諦めの悪さ」が今に語り継がれる数々の名作を遺した一因でもあるので、ファンは文句言っちゃいけませんよね。 『時計じかけのオレンジ』に登場した「コロバ・ミルクバー」 コロバ・ミルクバーに置かれていた麻薬入りミルク自動販売機「ルーシー」

【プロップ】『2001年宇宙の旅』でアンテナ故障予知のワイヤーフレームのアニメーションは、実は本当にワイヤーフレームだった件

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HALのモニタに表示されたワイヤーフレーム「偽」CGアニメーション 撮影中(テストの可能性も)のアンテナ アンテナのネガフィルム。8×10に見えます。たとえ「賑やかし」映像でも手は抜きません アンテナの針金模型を制作するトランブル  この事実を初めて知った時は衝撃的でした。キューブリックの逝去前から「『2001年宇宙の旅』は一見最先端の撮影技術を駆使しているかのように見えるが、実はかなりの部分が手作業(力技)で、それを恐ろしく時間をかけ、かつ高品質でそれを行っている」と言われていたのですが、近年明かされるその「手作業」の部分にはいつも驚かされます。  このアンテナユニットのワイヤーフレームCGアニメーションもその一つで、実は文字通りアンテナユニットをワイヤー(針金)で作って白く塗り、それを自由台座の上に据え付けてコマ撮り撮影し、ネガファイルムを作成したそうです。言われてみれば動きが微妙に手作りアニメーションっぽいですね。  このアニメーションを製作したのはあのダグラス・トランブル。トランブルの『2001年…』における八面六臂の活躍ぶりは凄まじく、キューブリックが『2001年…』で重要な役割を果たした特撮マン4人の内の一人に挙げるのも納得です。ただ、ご本人はアカデミー賞視覚効果賞の受賞をキューブリックに持って行かれたことにかなり不満だったそうですが。  でもそのトランブルに、ツァラトゥストラ演奏付きのオープニングの映像を観せて「これでいいかな、それともやりすぎかな?」と客観的な評価を仰ぐキューブリックがいい。トランブルは「素晴らしいと思います。僕は好きですよ、これでいってくださいよ」と応えたそうですが、このエピソードひとつとってみても、キューブリックがトランブルの才能を高く評価していたのが伺えますね。

【プロップ】『2001年宇宙の旅』に登場した、パーカー社がデザインした未来の万年筆「アトミックペン」

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オリオン号の機内を漂う「アトミック(原子力)ペン」。ペン軸に小さくPARKERの文字が見える。   1958年にパーカー社のデザイナー、ウォルター・ ビガーは一連の「ドリームペン」をデザインしました。そのうち3つはスタンリー・キューブリックに提供され「アトミックペン」は『2001年宇宙の旅』で使用されました。 〈中略〉  アトミックペンは放射性同位体の小さなパケットを用いてインクを加熱し、選択可能な線幅を生成できます。当然のことながら生産はされませんでした。  パーカーの他のドリームペンは映画に使用されませんでしたが、同社は映画館、デパート、スーパーマーケットでのプロモーションに幅広く使用し、同社の製品を「ペンの現在と未来」として展示しました。 〈以下略〉 (引用元: IEEE Spectrum:A Radioactive Pen in Your Pocket? Sure!/2016年10月28日 )  この記事によると、放射性同位体の小さなパケットでインクを加熱し、線幅を変えられる未来の万年筆としてこの「アトミックペン」をデザインしたようです。ペン軸にある3つのボタンはその線幅を選ぶボタンでしょう。とっても未来を感じるアイデアですが、原子力エネルギーにまだ明るい可能性があると信じられていた当時の世相を反映していますね。チェルノブイリや福島を経験した現在では、当然実用化は不可能です。  パーカー社はすでにデザインされていた「ドリームペン」中の3つをキューブリックに提供し、その内の「アトミックペン」を映画に採用した、という経緯だそうです。つまりキューブリックが映画向けにデザインさせたわけではないんですね。キューブリックは『2001年…』制作にあたり、既存のもので気にいる物があればそのまま使用し、なければオリジナルでデザインさせたようです。映画に登場しているプロップ全てがオリジナルではないのは、予算の圧縮や制作時間の短縮などを狙ってのことだと思いますが、「超絶こだわり主義者」のキューブリックのこと。そのまま採用となるパターンの方が少なかったようです。それでも椅子やデスクなどの家具類や、未来カーの「Runabout」は企業が制作したものをそのまま使用しています。  「映画に登場すれば宣伝になるから」というのはキューブリックの口説き文句だったそうです。そうしてちゃっ...

【プロップ】『2001年宇宙の旅』でフロイド博士がオリオン号で観ていた映像に登場したGMのコンセプトカー「Runabout」

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判別しにくいが、車のシルエットがRunaboutであることがわかる。車の外観のロングショットはデトロイトで撮影された。 GM(ゼネラル・モータース社)が1964年に発表したコンセプトカー「Runabout」 カップル(夫婦?)が語り合うシーン。この映像はロンドンで撮影された。 上記のシーンの撮影風景。椅子はセットで運転席や外の風景はリアプロジェクションのように見える。 Runaboutのフロントパネル。上記の映像と酷似している。 Runaboutのリアに大判カメラ(バイテン?)を突っ込んで撮影中のスタッフ。『ザ・スタンリー・キューブリック・アーカイブ』より キューブリック邸にあった資料を保管しているロンドン芸術大学の「スタンリー・キューブリック・アーカイブ」で展示された『2001年…』の資料にも、「Runabout」の写真が残されている。 Another 3-wheeled concept car by GM is the “Runabout”. The vehicle had a front wheel that could turn 180 degrees to allow parking in the tightest of spots and the rear end of the car contained two detachable shopping trolleys with wheels that would fold away when the trolley was parked in the vehicle. The Runabout had space for 2 adults in the front and 3 children in the rear. The vehicle was first presented at the General Motors Futurama Exhibit in 1964 at the New York World’s Fair.  GMのもう一つの3輪コンセプトカーは「Runabout」です。車両には180度回転可能な前輪があり、車後部には停車したときに折り畳まれる車輪付きの取り外し可能な2つのショッピングカートが収納されていました。Runaboutには、前部座席に2人の大人、後部座席背面に3人の...

【プロップ】アカデミー博物館がレアな『2001年…』の宇宙船模型を34万4千ドルで購入

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発見されたアリエスIB宇宙船のプロップ Academy Museum Buys Rare ‘2001: A Space Odyssey’ Model For $344,000 Proving the Academy is serious about getting top-drawer content for its new Academy Museum Of Motion Pictures, AMPAS has added a biggie by successfully bidding $344,000 yesterday for a rare visual-effects model of the Aries 1B Trans-Lunar Space Shuttle used in shooting 2001: A Space Odyssey. (引用元: DEADLINE HOLLYWOOD/2015年3月29日 )  なんと、『2001年宇宙の旅』のアリエス1B宇宙船の模型がハリウッドのオークションに出品され、それを映画芸術アカデミーが34万4千ドル(今現在のレートで約4,117万円)で落札したそうです。記事によると1970年代に美術教師に譲渡されていたものを、2017年に開館予定のアカデミー映画博物館の展示用に購入。高さ約32インチ(81cm)、幅27インチ(68cm)、奥行28インチ(71cm)、周囲94インチ(2.4m)ですからかなり大きいですね。  しかしアカデミーってアカデミー賞のアカデミーですよね。キューブリックにそっぽを向き続けたハリウッドの権化たるアカデミーが、ロンドンのスタンリー・キューブリック・アーカイブさえ所有していないレア・アイテムを堂々と購入、博物館の展示の目玉に据えようとするとは・・・。何か釈然としないものを感じてしまいます。

【プロップ】血清 Exp./Serum No. 114

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 『時計じかけのオレンジ』でアレックスにビタミン剤と偽って注射された薬品。詳しくは描写されていないが、ルドビコ療法の主目的であるオペラント条件付けのために、吐き気や倦怠感、嫌悪感を催す成分が入っているものと思われる。  この「Serum No. 114」は「CRM(シーラム) 144」と読め、『博士…』の暗号封鎖回路「 CRM114 」の引用であるとともに、「 クリティカル・リハーサル・モーメント 」の略にもなっている。

【プロップ】1957年型フォード・カントリーセダン(Ford Country Sedan 1957)

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 『ロリータ』でハンバートとロリータが旅をする際に乗っていた車。実際はヘイズ家所有の車だった。  アメリカ各地をドライブするシーンは第二版がアメリカロケをし、スー・リオンの代わりにキューブリックの妻、クリスティアーヌが乗っていたそう。つまり「お前アメリカロケに行ってきてくんない?俺も行きたいけど、こっち(イギリス)での撮影もあるから忙しくて行けないんだよ」「何言ってんの、飛行機乗るの嫌だから行きたくないって正直に言いなさいよ!」という会話がキューブリック家であった・・・のかも知れない。

【プロップ】M16ライフル(M16 rifle)

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ジョーカーやカウボーイが使用したM16ライフル 銃を撃たないシーンではモデルガンを使用。指のような突起物が特徴 銃を撃つシーンでは実銃を使用。突起物がない  『フルメタル・ジャケット』の後半の市街戦で使用されたM16ライフル。この時撮影用に使用されたのが日本の会社MGC社製のモデルガンというのは良く知られた話で、赤丸で示した突起物の形状を見れば容易に識別可能。発砲シーンでは実銃(アメリカ空軍採用のモデル604)の空砲で、それ以外はこのモデルガンを使用したそうです。これをもって「完全主義者のキューブリックにしては・・・」という論を展開する方を見かけますが、映画撮影では安全を優先させ、必要のないシーンではダミーを使うと言うのは常識です。特に危険がつきまとう戦争映画の撮影で、必要のないシーンまで本物のライフルを使って撮影するなどあり得ません。そうでなくても映画撮影での事故(死亡事故)は珍しくないのですから。  大体「カメラに映るもの全て本物でなければならない」なんて言い出したら映画なんて作れません。要はキューブリックの求めている高いクオリティに達していればいい訳で、そういう意味ではMGC社製のM16はキューブリックのお眼鏡にかなった高品質のモデルガンである、とガンマニアやユーザーは胸を張っていいんじゃないんでしょうか。

【プロップ】MG-TD

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 『現金に体を張れ』で馬を狙撃したニッキが乗っていた車。MGとはイギリスの自動社メーカー、モーリス・ガレージ社の意味で、このTDは1950年台前半に生産されたスポーツカーです。『現金…』は1956年の映画なので、当時の洒落者が乗っていたスポーツカーという認識でよさそうです。  でも・・・オープンカーで白昼堂々と銃をぶっ放すっていうのはどうかと。まあそういった細かい事よりも犯罪映画としてのダイナミズムを優先した、と良心的に解釈しておきましょう。

【アーティスト】アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)

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 オランダ、アムステルダム出身の建築デザイナー。『2001年宇宙の旅』で、ボーマンとプールが食事に使用したカトラリーは、ヤコブセンが1957年にコペンハーゲンのSASロイヤルホテルのためにデザインしたもの。そのミニマムなフォルムは『2001年…』の世界観にピッタリで、キューブリックが採用したのもうなずけますね。しかし・・・高すぎます(笑。インテリアが好きな方にはAJテーブルランプやセブンチェア、ローゼンダール時計などが有名。

【プロップ】アメリカ陸軍パラシュート部隊ブーツ(US Army Paratroopers Jump Boots)

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   『時計じかけのオレンジ』でアレックスたちドルーグが履いていたブーツはアメリカ陸軍パラシュート部隊ブーツです。いわゆる 「ボバーブーツ」 ですね。マルコム本人に確認済だそうです。ただ現在同じものを入手するのは非常に難しいでしょうね。コスプレ等で愛用されているのはドクターマーチンが多いようです。定番は1460の8ホールですが、イメージが近いのは 1490の10ホールです。  マーチンといえばMade in Englandでしたが、2003年にイギリス国内での生産を止め、全ての工場が中国にシフトしたためイギリス製のマーチンは今でも中古市場で人気があるみたいです。私も以前、黒とチェリレ、黒のサイドゴアと3足所有していましたが丁度その頃に手放してしまい、今は別のブランドのブーツを履いています。

【プロップ】『シャイニング』のタイプライターはヴィヴィアンが所有!?

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  ヴィヴィアン・キューブリックと『シャイニング』のタイプライター  上記の写真を見る限り、どうやら『シャイニング』でジャックが使用していたアドラー・ユニバーサル39・タイプライターは撮影終了後、ヴィヴィアンが譲り受けたようです。薄いベージュから濃いグレーに塗り替えられている事、そしてスペースバーのシール(?)が映画と一致しています。  そうなると現在もヴィヴィアンは所有したままなのか、という事ですが、キューブリック一家は1980年頃にアボッツ・ミードからハートフォード・シャーに引っ越しをしています。しかも当のヴィヴィアンは『フルメタル…』の後、家を飛び出して現在はカリフォルニア暮らし。すでにその頃はPCの時代だったのでカリフォルニアにタイプライターを持っていったとは考えにくい。アボッツ・ミードからの引っ越しの際に処分されていないとすれば、現在もハートフォード・シャーの邸宅のどこかにあるはずです。  現在スタンリー・キューブリック展が世界を巡回中ですが、そこで展示されているタイプライターは同型機種の別物です。もちろん資料的価値は全くありません。もし現存するなら是非撮影現物をキューブリック展で展示して欲しいものです。

【プロップ】ビッグ・ホイール三輪車(Big Wheel Trike)

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 『シャイニング』でダニーが乗っていた三輪車はアメリカのルイ・マルクス&カンパニー製の「ビッグ・ホイール」という三輪車です。当時大ヒットした商品でしたが、残念ながら『シャイニング』がまだ製作中だった1979年にルイ・マルクス社は倒産、ビッグ・ホイールのブランドはエンパイル・プラスチック社に移ります。しかしここも2001年に破産を申請、現在は他者に権利が移っているそうです。  詳しい型番まで特定できず、しかも『シャイニング』以外の画像さえ見つける事ができませんでした。でも、もし現存していたらマニアは放っとかないでしょうね。撮影に使用された物はとっくに処分されてしまっているでしょうから、同機種でさえキューブリック展で展示できるくらいの価値はあります。ebayなどに出品されたら結構な値段が付くのではないでしょうか。

【アーティスト】『時計じかけのオレンジ』の裸婦像テーブルのデザインに影響を与えたアレン・ジョーンズ

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キューブリックが『時計じかけのオレンジ』のプロップデザインを依頼したアーティスト、アレン・ジョーンズ(1970年頃)  『時計じかけのオレンジ』の裸婦のテーブルや自動ミルク販売機のデザインのアイデアは、60年代にポップ・アートの旗手として、あのアンディ・ウォホールと並び称されたアレン・ジョーンズの一連の半裸のボンデージ家具からインスパイアされたものです。少し前ですが、その家具がサザビーズで3点セット3億2000万円で落札された事がニュースになっていました。 「女体家具」が3億2000万円で落札 制作された当初は、フェミニストらに嵐のような抗議を浴びせられた、アンディ・ウォーホルと並ぶ60年代ポップアートの旗手のひとり、アレン・ジョーンズ (Allen Jones)の作品3点が、サザビーズのオークションにかけられ、記録的な高値となる260万ポンド、日本円にして3億2000万円で落札されました。 出品されたのは、いすとテーブル、それに帽子掛けの3点で、いずれも半裸の女性がモチーフとして使われています。コレクションは、元ブリジッド・バルドーの 夫でもあるドイツの億万長者、ギュンター・サックスが所有していたもので、今回のオークションでは最も入札の多かった品物でした。 ( 引用:GIGAMAN )  キューブリックはジョーンズのボンデージ家具が気に入り、映画でオファーしたそうですが、両者の折り合いがつかずこの話は流れ、結局『2001年宇宙の旅』でスター・チャイルドを製作したリズ・ムーアに製作を依頼、映画で使用されました。 試作されたウェイトレスのボンデージ衣装  ネット上では、ジョーンズ側が断ったという話と、キューブリック側が断ったという話が入り乱れていますが、実際はジョーンズは一旦オファーを引き受けたようで、上記のような試作までしています。でも凝り性のキューブリックの事、あれこれ注文を付け、それに嫌気がさしたジョーンズが断ったのでは、と考えています。 Table(1969)Allen Jones  ジョーンズのボンデージ家具はマネキンのようで、実際の女性に近い印象です。この事からフェミニスト団体から嵐のような抗議をうけたそうですが、キューブリックは無用なトラブルには巻き込まれたくなかったので、より抽象的な、裸婦像のような形への変更を考えたのではないでしょうか。しかし、自分の...

【プロップ】アドラー・ユニバーサル39 タイプライター(Adler Universal 39)

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タイプライターの初登場時は薄いベージュ色をしている このシーンでは濃いグレーに塗り替えられている 『メイキング・ザ・シャイニング』を編集中のヴィヴィアンと撮影に使用されたタイプライター。場所はおそらく自宅ではないかと思われる  あまり指摘されていませんが、実は作品内でタイプライターの色が淡いベージュ色から濃いグレーに変わっています。これはキューブリックが塗り直しの指示をしたそうで、担当した美術部門のロン・パンターによると「おそらく他との色調を合わせようとしたからではないか」との事です。(個人的にはタイプライターの紙が薄い黄色なので、本体の色と同化するのを避けたかったのではないか、と推察しています)  確かにタイプライターが初めて画面に登場するシーンと、ウェンディがジャックの様子を見に来た時とは色が若干違うようです。その後のジャックが悪夢にうなされるシーンや、「All work and no play・・・」を発見するシーンでははっきりと色が濃くなっているのが分かります。また、初登場時のシーンではロゴの横にシールの跡のようなものがありますが、後のシーンではそれがなくなっています。塗り直した際に剥がしたのだと思われます。  撮影に使われた現物はその後、三女のヴィヴィアンが使用していたようですが、ヴィヴィアンは『アイズ…』の頃にアメリカに渡ってしまったので現在の所在は不明です。残念ながら『スタンリー・キューブリック展』に展示中の物は同機種の別物、という事になります。塗り直した跡もないですし、色も違いますのでそれは歴然としていますね。

【プロップ】ジンチェア(Djinn Chair)

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 『2001年宇宙の旅』宇宙ステーションV(ファイヴ)内、ヒルトンホテルのロビーに設置されていた赤いイス、それがジンチェアです。デザインしたのはフランス人のデザイナー、オリビエ・ムルグ。1939年生まれで、フランスのインテリア・メーカーのエアボーン・インターナショナルに在籍中にこのジンチェアを製作したそうです。1965年だったそうですから、キューブリックまさに当時最先端の家具を採用したんですね。キューブリックが『2001年…』のセットや模型のほとんどは破棄(一部は現存している)してしまっていますので、キューブリック展に展示されているのは多分レプリカでしょう。  このジンチェア、家具好きの間ではいわゆるミッドセンチュリー系として知られていますが、日本でミッドセンチュリーといえばイームズ・チェアの方が一般的で、レプリカでもを扱っている店はあまりないようです。どうしても座ってみたい方は、家族サービスと称してラスクで有名な ガトーフェスタ ハラダの新本館シャトー・デュ・ボヌール へ訪れてみてはいかがでしょうか?。嫁さんと子供が美味しいラスクを選んでいる間にニンマリしながら座り心地を楽しむ・・・うーん、一石二鳥ですね。

【プロップ】シコルスキー HUS-1 シーホース(Sikorsky HUS-1 Sea Horse)

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 『フルメタル・ジャケット』に登場したベトナム戦争時に使用されたアメリカ海兵隊のヘリコプター。例の「戦場は地獄だぜ」と非戦闘員を撃ちまくっていたヘリや、フエでの市街戦の負傷者を運んでいたヘリなど登場するヘリは全てこれ。  ナム戦でヘリといえば『地獄の黙示録』や『プラトーン』などのUH-1をイメージしますが、軍史家のリー・ブリミコウム=ウッドによると 「フエの海兵隊は大きくなかったからLCH格納庫の中に収まるような(小型の)ヘリが好まれた」(引用:『キューブリック全書』) のだそうです。  ちなみに撮影で使用されたヘリは「個人所有機を何とか見付けて、塗り替えて使った」のだそう。 (参考: Flying Leatherneck )

【プロップ】ピエロの仮面(Clown Mask)

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 『現金に体を張れ』でジョニーが強盗で押し入る際にかぶっていた仮面。キューブリックは気に入ると後の作品でも同じアイデアを使い回す事がよくあり、『時計じかけのオレンジ』でもアレックスが作家夫婦の家に押し入る際に同じようにピエロの仮面をかぶっていた。  ピエロのモチーフはルック時代のスチール写真に遡る事ができる。あるサーカス団を追った一連のフォト・ルポルタージュは、決して暖かく幸せに満ちたサーカスの姿を微塵も感じさせてはくれない。そこにはどうしょうもない人間の愚かさ、滑稽さ、悲哀、諦観が漂っている。また、長編映画第2作『恐怖と欲望』にもピエロ(道化師)が登場する。これも窃盗という犯罪をカモフラージュするためのもので、本来の喜劇性は欠片も無い。  ピエロといえば『ロリータ』のハンバートもそうだ。ハンバートはロリータへの偏愛を利用され、キルティの手のひらで踊らされただけの哀れなピエロに過ぎない。その結末が殺人と獄死なのは当然の帰結だろう。そしてそれは『アイズ ワイド シャット』のビルとて同じ。あのクルーズの馬鹿っぽい白い歯をキラキラ見せながら笑う笑顔は手にした貸衣装屋の仮面と同じく滑稽で空々しい。  もっと解釈を広げてみてはどうだろうか。ピエロとは「悲しいまでに滑稽で哀れで矮小な存在」としたら。それは自滅のシステムを止められない政治家や軍人たちであり、18世紀に己の欲望のままに生き、そして自滅した貴族であり、悪霊の意のまま操られたジャックであり、戦争という大義なき大義に振り回されたジョーカーであり、そして宇宙という広大な秩序の前ではケシツブ同然の「人類」という存在を象徴しているように思える。  そんな「ピエロたち」の営みを冷徹に観察していたキューブリック。キューブリックにとってピエロとは人間、ひいては人類そのものだと看過していたのだとしたら、各作品の持つキューブリック作品ならではの独特の空気感はまさしくそれを表現していたのだ。  

【プロップ】人工冬眠装置(Cold Sleep)

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 『2001年宇宙の旅』に登場したこの人工冬眠(コールド・スリープ)装置ですが、SF小説では古くからあったアイデアでハインラインの『夏への扉』(1956)などが有名です。『2001年…』と同年に公開された『猿の惑星』でも登場していました。キューブリックはインタビューで人工冬眠(冷凍保存)について「現在利用できる適切な施設があれば関心を持つだろうな」とインタビューで応えています。