【考察・検証】キューブリック版『シャイニング』でオーバールック・ホテルに巣食う悪霊の正体とは

ネイティブ・アメリカンの意匠で飾られた『シャイニング』のコロラド・ラウンジ キューブリックの映画版『シャイニング』では、ホテルに巣食う悪霊の正体が「過去にこの土地を聖地としていたネイティブ・アメリカン(インディアン)の怨霊」となっています。今回はそれを示すシーンや台詞を集め、この事を証明したいと思います。 ジャックがダニーに「ドナー隊の悲劇」に付いて教える。 現支配人のアルマンがジャックに「このホテルはネイティブ・アメリカンの聖地で墓地の上に建っている」と説明する。 ホテルの外観が山小屋風で、どことなく西部開拓時代(ネイティブ・アメリカンにとっては搾取・侵略)を思わせる。 ホテルには壁面やカーペットの柄など、ネイティブ・アメリカンの意匠があちこちに飾られている。 ウェンディの髪型やセーターの柄がネイティブ・アメリカン風である。 ジャックが禁酒を破る酒が「ジャック・ダニエル」である。 ジャックが「白人の責務」に言及する。 ジャックやグレイディがハロランを「ニガー」と呼び、白人優位主義で人種差別的である事が示唆される。 ハロランがウェンディに説明する食料倉庫にカルメット缶のネイティブ・アメリカンのラベルが見えるように置いてある。このカルメット缶はジャックが倉庫に閉じ込められたシーンで重要な意味を持って再登場する。 ジャックが使う凶器が斧(トマホークはネイティブ・アメリカンの象徴)である。 ジャックが写る写真の日付が1921年(禁酒法時代)のアメリカ独立記念日(ネイティブ・アメリカンにとっては土地を奪われた屈辱の日)である。 ネイティブ・アメリカンの飾りからテニスボールが突然飛び出してくる(このシーンは初公開版には存在したが、思い直したキューブリックによってすぐカットされた) 以上のように、このホテルに巣食う悪霊の正体がネイティブ・アメリカンの怨霊である事は明確に示されています。また、霊が白人ばかりなのは、ネイティブ・アメリカンにとってヨーロッパから渡って来た白人達はすべて忌むべき存在だからです。 キューブリックは典型的なアメリカ白人男性が持つ、過去の苛烈な白人至上主義と、現在でも心の奥底に潜んでいるその人種的偏見、そしてかつてネイティブ・アメリカンを迫害したという負い目を巧みに利用し、「ネイティブアメリカンの悪霊によって白人が惑わされ、狂わされ、殺し合いをする」と...