彼とは25年の付き合いだった。それだけ長い間親しく付き合えば、家族のような気さえした。ただし本物の家族ではなくあくまで境界線があった。純粋に仕事上の関係だ。 彼は私をアシスタントとして完全に信頼してくれた。家族を信頼するようにね。家族に近い存在だった。驚くほど親切な人だった。仕事以外の時はね。気にかけてくれていた。そういう意味では仕事だけの関係ではなかった。 気にかけてもらうと私も応えなければと思った。彼の役に立ちたかったから、一度も逆らいはしなかった。一緒に仕事ができたことは大きな名誉だと思ってる。給料なんかには代えられないものだ。もっと個人的な何かだ。私にとってスタンリーはとても大切な人だった。 2001年にパイオニアからDVDとして発売され、「キューブリックファン必見の1本」と煽ったわりにはキューブリック本人のインタビューがない、制作スタッフの小芝居がウザいと酷評したドキュメンタリーですが、逝去直後に制作された最速のドキュメンタリーとして、今となっては非常に資料性の高い一本となりました。このドキュメンタリーの中に、『キューブリックに魅せられた男』ことレオン・ヴィタリのインタビューがあり、その字幕をテキスト化してみたのが上記です。 久しぶりに再見してみて興味深く思うのは、同じキューブリックの関係者でも、スタッフや俳優はキューブリックに対して否定的なのに対し(マルコム・マクダウェルもかなり批判的な口調)、キューブリックに近かったレオンやヤン・ハーラン、それに未亡人であるクリスティアーヌは喪失感をあらわにしている点です。それもそのはず、このドキュメンタリーが制作されたのは1998年秋冬頃から1999年7月頃にかけてで、逝去(1999年3月7日)からまだ数ヶ月しか経っていません。彼ら、彼女らの表情や口調からはそれがひしひしと感じられ、観ていてちょっと辛くなりました。 登場する証言者は以下の通り。 DVD『20世紀の巨匠 スタンリー・キューブリック(Stanley and Us)』 はアマゾンやヤフオクでも投げ売り状態ですので、今なら購入しても悪くはないかな、と思っています。 ポール・ジョイス(ドキュメンタリー『スタンリー・キューブリック:見えない男』の監督) マリット・アレン(『アイズ…』の衣装担当) アレキサンダー・ウォーカー(映画評論家。キュ...