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【関連書籍】スクリーン アーカイブス『スタンリー・キューブリック監督復刻号』がTOHOシネマズ日本橋・新宿、スクリーン・オンラインで発売

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流通限定 スクリーンアーカイブズ スタンリー・キューブリック監督 復刻号(Amazon)  公開時のスクリーン誌の復刻記事を集めた特集号『スクリーンアーカイブズ スタンリー・キューブリック監督 復刻号』がTOHOシネマズ日本橋・新宿のほか、スクリーン・オンラインで限定販売中です(TOHOシネマズ新宿は10月18日より販売開始)。  掲載作品は『スパルタカス』『ロリータ』『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』『バリー・リンドン』『シャイニング』『フルメタル・ジャケット』『アイズ ワイド シャット』。内容は作品解説が主なので、特に目を引く記事はありません。ただ、故荻昌弘氏の解説は「映画愛」に溢れていて読んでいて嬉しくなりますね。  あとは例の星新一氏による『2001年…』に対する「勘違い批判」ですが(詳細はここで)、これは星氏に限らず、当時の多くの「大人たち」がこういった反応を示したそうです。「映像志向」の作品を「言語志向」で批判しても的外れ以外の何ものでもないのですが、公開当時の「空気」を知るにはいい資料と言えるでしょう。  当事者のインタビューは『アイズ…』のトム・クルーズとニコール・キッドマンだけですが、残念ながら内容はあまりありません。ただ、キッドマンが語る「彼(キューブリック)は最初から夫婦の俳優を使うと決めていた」は、この作品を読み解くのに役立ちそうです。  本書に頻出する「クーブリック」という表記ですが、小説『2001年宇宙の旅』の翻訳者である伊藤典夫氏を中心に、「発音はクーブリックなのでそう表記すべし」としてSFファンを中心に一部に広まりました。しかし一般に定着するまでは至らず、当の伊藤氏も「本人も亡くなったのでこれからはキューブリックで」と白旗を上げたので、現在は「キューブリック」で統一されています。  対面販売はTOHOシネマズ日本橋・新宿だけですので、ネットで購入するのが現実的かと思います。A4版48ページで1,800円(税別)という価格は割高感を覚えますが、掲載号数が書いてありますので古本を漁る際に目安になりそうです。スクリーン・オンラインのキューブリックページは こちら からどうぞ。

【考察・検証】『時計じかけのオレンジ』のラストシーン「レイプ・ファンタジー」を考察し、解説を試みる

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※一部画像加工済  『時計じかけのオレンジ』のラストシーン、アレックスが「完ぺきに治ったね」とつぶやく際に見る夢、いわゆる「レイプ・ファンタジー」ですが、この名称はコールシート(撮影予定表)で便宜上そう名付けられていたものです。実はこのシーン、当初は「全裸の女性をアレックスが追いかける」カットが存在し、その後削除された(おそらく検閲の問題)のですが、その件につきましては以前記事にしました。  その「レイプ・ファンタジー」、原作小説では「カミソリで地球を切り裂く」という暴力夢でしたが、キューブリックは性夢に変更してしまいました。どんな夢であれ、登場人物が見る夢を映像化する際には「現実離れ」した映像でないと、そのシークエンスが「夢」であることを表現できません。逆に言えば「現実離れした(性夢の)映像ならなんでもいい」ということになり、結局はキューブリックのセンス次第、となってしまいます。そんなキューブリックのセンス(感覚)で作られたこの「レイプ・ファンタジー」を、キューブリックの頭の中を覗くなど到底不可能だということを承知の上で考察してみたいと思います。 (1)19世紀風の衣装に身を包んだ紳士淑女たち  どうして「19世紀風」と言えるのかというと、男性全員がシルクハットを被っているからです。シルクハットの流行は19世紀前半が最盛期でした。そして19世紀前半といえばベートーベンが活躍した時代です。つまりこのシーンは自分(アレックス)がベートーベンと同時代の19世紀に存在している夢を見ている設定なのです。 (2)スタンディング・オベーション  その19世紀の紳士淑女たちは、全裸で性行為をするアレックスをスタンディング・オベーションで讃えています。これで思い出されるのは「第九」の最終楽章が終わった瞬間、観客がスタンディング・オベーションで指揮者や楽団を讃えるということが定番化しているという事実です。つまり、聴衆(一般民衆)もアレックスの暴力性や性衝動の復活を第九のスタンディング・オベーションという形で「讃えて」いる(と少なくともアレックスは思っている)のです。 結論:(1)(2)の観点から、アレックスが病院のベッドの上で、ベートーベンの第九を浴びながら見ている夢は、性行為(レイプ)をしているという喜びを、自身はおろか聴衆(一般民衆)でさえ讃えているということであり、それは自身の...