【考察・検証】『フルメタル・ジャケット』のエンディングに使用された『黒くぬれ!』は、キューブリックのファーストチョイスではなかったのではないか?という推論

ダナンの基地に置かれたミッキーマウスの人形 1988年に公開されたスタンリー・キューブリック監督作品『フルメタル・ジャケット』。そのエンディング曲に使用されたザ・ローリング・ストーンズの『黒くぬれ!(Paint It, Black)』ですが、公開当時、映画ファンやロックファンの間ではあまり評判が良くありませんでした。なぜなら当時流行していたベトナム戦争映画では必ずロックが使われていたし、しかもよりによって「誰でも知っている」レベルのありきたりな曲だったからです。 この使用についてキューブリックは 「ストーリーをまとめたいと思うなら、あの曲を使うよ。また、ローリング・ストーンズはあの頃のシンボルのようなもので、あの曲はちょうどいい時期に世に出てきた。だからあの時代はローリング・ストーンズ抜きには語れないんだ」(引用元:キネマ旬報1988年3月上旬号) と発言しています。時代の象徴のストーンズという意味はわかりますが、では他の曲ではなくなぜ『黒くぬれ!』なのかはこれではわかりません。一説によるとキューブリックはポップ・ミュージックに疎く、この曲が「有名すぎるぐらい有名な曲」だということを知らなかったのではないか?という話もあります。 キューブリックにしてはあまりにも安易(たとえ「戦争の真実は権力によって黒く塗りつぶされる」という意図だとしても)ではないか?と考えた管理人は、他に理由があるのではないかと考え、「実はキューブリックはこの『黒くぬれ!』はファースト・チョイスではなかったのでは?」と、以下のような仮説を提唱しています。 キューブリックは当初、行軍で『ミッキーマウス・クラブマーチ』歌うシーンに続けて、エンディングに『ミッキーマウス・マーチ』のオリジナルバージョンを使用する予定だったが、ディズニーから許可が下りず、仕方なくセカンンドチョイスとして『黒くぬれ!』を使用した。 その根拠として、キューブリックは『ミッキーマウス・クラブマーチ』について 『ミッキーマウス・クラブ』の歌は実際に海兵隊員によって歌われたんだよ。もっとも「MICKY MOUSE」ではなく「FUCKED AGAIN」と歌ってたけどね。この『ミッキーマウス・クラブ』の歌を歌ったのは18~19歳の少年兵で、彼らは数年前までTVで『ミッキーマウス・クラブ』を見ていたんだ。彼らがつい最近まで子供だ...