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【ブログ記事】『ロッキンオン・ジャパン』2020年10月号の表紙に、あいみょんが『シャイニング』双子の少女Tシャツを着て登場

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 私はいわゆる「ロキノン系」「ロキノン厨」と呼ばれる『ロッキンオン・ジャパン』世代ではなく、元祖である『ロッキンオン』世代です。1970年代後半から1980年代、ハードロック~プログレ~パンク~ニューウェーヴ~オルタナまでフォローし、ニルヴァーナなどのグランジ全盛時代にはもう離れていました。まあ、多感な10代~20代を『ロッキンオン』と『キネマ旬報』で過ごしたといえば、同世代に方には「ああ、あんな感じの奴ね」とわかっていただけるのではないかと思います(笑。  で、その 『ロッキンオン・ジャパン』2020年10月号 の表紙に、あいみょんが『シャイニング』双子の少女Tシャツを着て登場しています。海外ではファッション誌などで、モデルやタレントがキューブリック作品のコスプレをして表紙を飾る、という事例が過去にいくつかありました。日本ではこういった事例はあまり聞かないし、「いよいよキューブリックもここまで(若い世代の間で)メジャーになったか」と感慨深いものがあります。  でも実際は、キューブリック作品のオフィシャルなアイテム化はここ数年のことで、過去に不当な高額で販売されていたものは俗に言う「海賊版」です。もちろん海賊版のTシャツを着て雑誌やグラビアを飾ることはできません。ですので、こういったタイアップが可能になったのは最近の話、ということになります。海賊版時代からキューブリック作品のTシャツ(特に『時計…』)は原宿あたりでよく売られていたし、密かに人気もありました。ですがそれはあくまでアングラな話であって、一般的ではありませんでした。キューブリック人気が一般層に拡大した大きな要因の一つがこの「キューブリックアイテムのオフィシャル化」であったことは、紛れのない事実でしょう。  その一般層が認知しているアーティストの代表格、あいみょんが着ている『シャイニング』の双子の少女Tシャツは、おそらく こちら で紹介したNoodleのものだと思います。タイアップか私物かはクレジットを見れば(衣装協力のクレジットがある)わかりますが、あいみょん自身が『シャイニング』を知っていてこのTシャツを選んだのか、それとも単なる「デザインが可愛い」で選んだのか、はたまたコーディネーターの言われるがままだったのかは分かりません。できれば「知ってて選んだ」であって欲しいものですね。 2025年7月15日追...

【考察・検証】キューブリック版『シャイニング』は、なぜ「シャイニング」ではなくなってしまったのか?

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キューブリック版『シャイニング』でダニーを演じたダニー・ロイド(撮影時5~6歳)。小説版の設定年齢と同じ TV版『シャイニング』でダニーを演じたコートランド・ミード(OA時10歳)。ゆるい口元が利発さを感じさせない   キューブリック版『シャイニング』では、原作で中心的に活躍する「シャイニング」、つまり超能力(ESP能力)がほとんど描かれませんでした。そのため、現在に至るまで「キューブリックの『シャイニング』は『シャイニング』というタイトルながら「シャイニング」ではない」と、原作ファンを中心に批判され続けています。確かにその通りなのですが、あらゆる可能性を探り、判断して映画作りをするキューブリックが、こういった批判の可能性を考慮していなかったとは考えられません。この考察では「キューブリックは『シャイニング』における「シャイニング」の扱いを〈あえて〉矮小化した」という仮定に基づいて、なぜキューブリックがそうしたかのかを考察してみたいと思います。  さて、いきなり結論を書いてみたいと思います。それは、 キューブリックがダニー・トランスを物語の主人公から脇役へと追いやり、ジャックを中心に据えたか らです。原作小説では、物語はダニー・トランスと、ダニーが持つ「シャイニング能力」を中心に物語が進行します。しかしキューブリックはダニーを〈あえて〉物語の中心人物から脇役へと追いやり、父親であるジャックをその中心に据えました。その理由は主に以下の3つが考えられます。 ①小説のダニー・トランスが5歳児とは思えない問題  原作小説のダニーは、物語の序盤では言葉の意味がわからなかったり誤解するなど、5歳児らしい言動を繰り返します。しかし、クライマックスになるとジャックさえ気づいていない「幽霊達の真の目的」を看破し、悪と対峙します。長編の小説であればその変化はゆるやかであり、また、文字として読んでいるだけなのでほとんど違和感を感じさせません。しかし2時間で映像を見せる映画では違います。そんな短い時間で急成長するダニーの姿を映像化すれば、単なる御都合主義に陥ってしまう可能性があります。  そのため、キューブリック版『シャイニング』のダニーは終始5歳児らしさを失いません。常に幽霊や父親に怯え、その真意や意図に気づくことはないのです。唯一聡明さを感じさせるのは、終盤でジャックを迷路でまく...

【関連記事】『時計じかけのオレンジ』から50年、人生とキャリアを振り返る マルコム・マクダウェル「出演した映画のほとんどは忘れてしまった」

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  Malcolm McDowell(IMDb)  映画『時計じかけのオレンジ』の暴力的な主人公、アレックス役で世間に強烈な印象を残した俳優マルコム・マクダウェル。かつては若者の怒りを体現する存在だったが、今ではずいぶん穏やかな雰囲気になった。最新作の撮影裏話から、自身のキャリアや人生、そしてアカデミー賞まで、77歳の今だからこそ語れる本音のインタビューをお届けしよう。 「反抗的な役をずっと演じられるわけじゃないから」 70年代初頭、マルコム・マクダウェルは映画界の小生意気なプリンスだった。かつてリバプールのセールスマンだった彼は、社会の規範をかき乱す存在となった。 リンゼイ・アンダーソン監督の『If もしも…』では、イギリスのパブリックスクールで血の革命を先導する役を演じた。スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』では、コロヴァ・ミルク・バーで仲間とつるみ、夜の計画を思案する主人公のアレックス役だ。 彼の前には、無限の可能性が広がっていた。世界は彼の思うままだ。彼ならどんなことでも達成できるものと思われていた。 〈以下略〉 (引用元: クーリエ・ジャパン/2020年7月31日 )  マルコム・マクダウェルは1972年、原作者のアンソニー・バージェスともに『時計じかけのオレンジ』のプロモーションに世界中を飛び回っていました。最初の頃は二人とも映画を支持し、擁護していましたが、マスコミのバッシングが酷くなり、命を脅かす脅迫が自身の身辺まで達するとその態度を急変、一転してキューブリック批判、映画批判を始めます。それをロンドンの自宅で見ていたキューブリックが「裏切り行為」と捉えたであろうことは想像に難くありません。キューブリックは裏切り者には徹底して冷淡な態度を取ります。そうなってしまえばいくらマルコムがキューブリックに親愛の情を感じていたとしていても、無視されるのは当然と言えます。  もちろん、「自分は安全な場所にいて、自分たちだけ脅迫の危険があるプロモーション活動に従事させている」とマルコムとバージェスが不満に思っていたであろうことも想像できます。しかし脅迫はキューブリックの元にも届いていました。「人間の暴力性を暴いた映画で、人間の暴力性を批判する人たちが、人間の暴力性を露わにして脅迫する」という映画の世界を地でいく現実は、もはや「皮肉」としか...