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5月, 2022の投稿を表示しています

【関連記事】トム・クルーズ、カンヌ国際映画祭でキューブリックについて語る

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Tom Cruise(IMDb)  トム・クルーズの映画人としての実直さ、並外れた情熱と映画愛 30年ぶりのカンヌで語る「トップガン マーヴェリック」とキャリア 〈前略〉  さらに「アイズ・ワイド・シャット」でスタンリー・キューブリックと仕事をした経験にも触れ、「僕らは多くの時間を掛けて、異なるレンズ、異なるライティング、そして彼が映画に望むトーンなどについて話し合いました。彼は自分の映画のスタイルのなかに観客を混乱させるようなものを求めていたので、僕らはそれがどんなものなのかを見つけていかなければなりませんでした」と語った。 〈以下略〉 (全文はリンク先へ: 映画.com/2022年5月25日 )  トム・クルーズがカンヌ国際映画祭で栄誉パルムドールを受賞した際のティーチインで、キューブリックに触れていたのでご紹介。  最初は映画スターをキャスティングすることを渋っていたキューブリックですが、よほどクルーズのことを気に入ったのか、映画製作に関する多くのことをクルーズに教えたそうです。そのことについてカンヌのティーチインで触れたようですが、詳しい内容は以前インタビューで応えていていました。それについては以前 こちら で記事にしましたが、それがいかにクルーズにとって素晴らしい経験であったはリンク先記事にある通りです。  このように、海外ではキューブリックの映画製作の舞台裏を明かしたインタビューが数多く出稿されており、その独特の方法論が広く知られるようになりました。つまるところキューブリックは、俳優やスタッフとのコラボレーションによって、一緒に作品を作り上げることを目指していたということです。それは俳優やスタッフにも自作への深い関わりを求めるものであり、その要求はキューブリックの高い判断基準に適合していなければならないため、自ずと非常に厳しいものになるのです。その「厳しさ」さえも「パワハラ」だというのなら、クリエイティブな仕事などしない方がいいでしょう。現に出演者もスタッフも誰一人としてキューブリックを「パワハラ」と呼ぶ人はいません。確かに要求は厳しく、辛く苦しい体験でしたが、誰よりも一番厳しい要求を突きつけていたのはキューブリックが自身に向けたものだったのですから。  海外では広く報じられている「キューブリックは俳優やスタッフとのコラボレーションで映画製作をす...

【ブログ記事】『シャイニング』で、ダニー・ロイドのダミー人形を使用したシーン

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  ダニー(・ロイド)は年間40日間しか制作に携わることができず、労働時間にも制約があり、午後四時半にはセットから出ることが厳しく定められていた。事実上、キューブリックはカメラの前におけるダニー・ロイド分の時間に関することを高度に効率化しなければならなかった。規定にはリハーサル時間は含まれなかったので、キューブリックはダニーのリハーサルの日を作り、撮影は別の日に設けた。また、キューブリックは、ウェンディが少年を抱きかかえるシーンのために少年のダミー人形を作らせた。 (引用元:『映画監督スタンリー・キューブリック』)  よく見なければ気がつきませんが、確かに上記のシーンのダニーは人形みたいですね。引用にはダニー・ロイドの撮影時の制約が理由に挙がっていますが、キューブリックはテイクを繰り返すので、シェリーの体力軽減に配慮した面もあるかと思います。また、ダニーの代役も何人かいたようです。このように映画制作にはありとあらゆる視覚的、効率的テクニックが使用されていて、「映画で描かれていること=その通りの現実を撮影したもの」ではないのです。ところが映像制作における「そうと感じさせる手法(映像の魔法)」を真に受ける傾向は、昨今顕著になってきているような気がします。原因は理解力や読解力の欠如など色々と考えられますが、現在のCG映像の氾濫により、その反動で実写撮影されたものが本物だと短絡的に思い込んでしまう、というのがあるのかも知れません。つまりCGは嘘とわかりやすいばかりに、実写で撮影されたものは全て本物と思ってしまう、ということです。特に若い世代にその傾向を感じますが、「ウブだね~笑」と笑ってしまえばいいこととはいえ、根本的な原因は「信じやすい」「影響されやすい」そして「洗脳されやすい」ということですから、非常に危険な兆候です。くれぐれも本質を見抜く力、すなわち「洞察力」をもっと磨いてほしいと思いますね。もちろん、それにはキューブリック作品はうってつけですので(ファン心理丸出しで。笑)オススメします。

【パロディ】『ルパン三世』TVシリーズ(セカンドシーズン)のLDのジャケットが『時計じかけのオレンジ』だった件

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  ・・・最初見たときはコラかと思いましたよ(笑。実はこれ、『ルパン三世』TVシリーズ(セカンドシーズン)のLD BOXセットのインナースリーブになります。ボックスセットのジャケ写は以下の通り。  で、このインナースリーブ、見ての通り古今東西の名作映画のパロディになっているんですね。アイデアは面白いと思いますが、イラストのクオリティがイマイチでちょっと残念。  ところでこのセカンドシーズン、結構長い間OAされていましたし、映画のパロディもふんだんに散りばめられていたので、どこかでキューブリック・パロもあるかもしれません。ご存知の方がいらっしゃいましたらぜひご一報を。 画像引用: オークファン

【ロケーション】『シャイニング』の迷路を歩くウェンディとダニーを、ジャックが模型の中に幻視するシーンが撮影された高層マンション「カンタベリー・ハウス(Canterbury House)」

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 『シャイニング』が撮影されていたエルスツリー・スタジオのすぐ近くにある「カンタベリー・ハウス」という高層マンション。その駐車場に迷路の中央部のみのセットが組まれました。そこをシェリーとダニーが歩き、それをマンションの上層階から撮影、その映像を中央部をくり抜いた模型の映像と合成し、あの摩訶不思議なシーンが作られたそうです。確かによく見ると、実写と模型と合成部分がなんとなくわかりますね。でもパースを正確に合わせなければ違和感が出てしまいますので、かなり微調整を繰り返したのではないかと思います。  このシーンは小説にはない映画オリジナルですが、キューブリックが特撮や特殊メイクに頼らず、「映像の違和感」で恐怖を演出しようとしたのは、ルック社のカメラマン時代から「ストレートな表現」を好んだことにルーツがあると思います。確かに『2001年宇宙の旅』では特撮を多用しましたが、どれも特撮の技術水準を極限まで高めたもので、特撮による技巧には走りませんでした。キューブリックは「技術」には頼るが「技巧」には頼らないのです。それは『シャイニング』でも同様であるし、そのことはスティーブン・キングのTVドラマ版『シャイニング』と比較すればよく理解できます。キングの『シャイニング』は安易に「技巧」に走ってしまった失敗例と言えるでしょう。  ・・・まあ、それなら北米版にある、あの「骸骨パーティー」はなんだったんだ?という話なんですが(笑。あのシーンはギャレット・ブラウンも批判していましたね。  Googleマップのリンクは こちら 。

【考察・検証】原作小説『バリー・リンドンの幸運(The Luck of Barry Lyndon)』のあらすじと映画版の違いを検証する

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絶版になっている角川文庫のサッカレーの小説『バリー・リンドン』(Amason) ●小説『バリー・リンドンの幸運』のあらすじ  (自称)上流だが没落貴族の家系に生まれたレドモンド・バリーは気性が荒く、喧嘩っ早い性格だった。父親が病死するとますます生活に困窮するようになったが、プライドだけは高かった。15歳のバリーは年上の従姉ノーラに激しい恋心を抱くが、ノーラは子供扱いして相手にしない。そのノーラに求婚してきたのはイギリス軍の将校ジョン・クィン大尉だった。ノーラ家の借金の返済を申し出たクィン大尉にバリーは激しい嫉妬心を燃やし、決闘しろと迫る。その結果はクィン大尉の死亡だった。事が表面化する前にバリーは母親の金を手にダブリンへ逃れるが、そのダブリンで詐欺師夫婦にまんまと所持金全額を詐取される。無一文になったバリーは日銭を求めて仕方なくイギリス軍に入隊、大陸に渡る船に乗る。そこで巨漢のトゥールと喧嘩になり、同じ船内で決闘の立会人をしていたフェイガン大尉と再会する。フェイガンからクィン大尉の死はバリーを村から追い出すための狂言だと聞かされ、バリーは激怒しつつも犯罪者にならなかったことに安堵した。  大陸に渡ったバリーはミンデンの戦いに参加するが、軍隊の中で後見人となってくれていたフェイガン大尉が戦死する。バリーは軍隊のみすぼらしくて野獣のような生活に嫌気が差し、重傷を負ったフェイケナム中尉が担ぎ込まれた農家で、傷により気の触れた中尉と入れ替わることを企てる。その策略に農家の娘リシェンが協力した。フェイケナムの身分証明書を手に偽の中尉となったバリーだが、プロセイン軍の大尉にあっという間に見破られ、乱闘の末取り押さえられてしまう。囚われの身となったバリーはプロセイン軍の捨て駒の兵士としていくつか戦いに参加させられる。そこでもなんとか生き残り軍功も挙げた。戦争が終わると所属の連隊はベルリンに駐屯する。バリーは隊長であるポツドルフ大尉に取り入り部下になり、同じアイルランド人であるシュヴァリエ・ド・バリバリを監視するように依頼される。バリバリは行方不明だった伯父であることに気づいたバリーは伯父と結託し、伯父は甥を密航させる手配をしてベルリンから逃げ出す。二人はドレスデンで合流、賭博師としてピッピ伯爵と共謀し大金をせしめるが、ピッピに売上金を持ち逃げされる。二人は今度はマニ伯爵に狙いを定...

【関連記事】スティーブン・キング原作のリメイク版 映画・ドラマをランキングにしてみた

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Stephen King’s The Shining(IMDb)  〈前略〉 7位『シャイニング』(1997年テレビドラマ)  スティーブン・キング原作でとても有名になった映画の一つ『シャイニング』はスタンリー・キューブリック監督で1980年にリリースされました。原作は1977年。映画『シャイニング』は原作でキングがメインにしたかったダニー少年の持つ超能力「シャイニング」よりも、ホラー要素が強かったため、自分の思い描いている通りの映像を作りたいと自分で脚本を書いてリメイクしたのが1997年のドラマ版。でもキューブリックの映像とジャック・ニコルソンの演技というホラー映画の最高傑作を先に見てしまってからのテレビドラマ版の特殊効果は、2022年の映像技術が進化した今見るとちょっと陳腐な感じに見えてしまいます。 〈以下略〉 (引用元: GIZMODO JAPAN/2022年5月19日 )  スティーブン・キングはキューブリックの『シャイニング』のキャスティング、特にジャック・ニコルソンとシェリー・デュバルについてさんざん批判を繰り返してきましたが、じゃあ自分はどうなのかというと、パツキン美女のレベッカ・デモーネイはまあいいとして、ジャック役のスティーブン・ウェバーとダニー役のコートランド・ミードは、どう考えてもミスキャストとしか言いようがありません。大泉洋がいくら狂った演技をしても大泉洋でしかないですし(狂った人間を演じるには、いい人成分が多すぎるという意味)、ミードの「わあい!」という全く怖がって見えない演技も、理知的に見えないその口半開きのルックスも、到底キューブリック版ダニーの利発さに敵うものではありません。キューブリックは「作品の成否はほぼキャスティングで決まる」と語っていましたが、まさにその通りで、キャスティングの失敗がここまでわかりやすい作品も珍しいと思います。

【関連動画】幽霊がカメラに写った瞬間 ランキング Top20

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 微妙なナレ声と作品チョイスで観る者を困惑させる「WatchMojo Japan」。そのランキング動画『幽霊がカメラに写った瞬間 ランキング Top20』でキューブリック作品がランキングされていたのでご紹介(3回目。笑)  とっても誤解を招くタイトルですが、要するに実際に幽霊が写真に写りこむ騒ぎがあり、それと関連した映画を結びつけたもの(かなり強引なものも含む)。15位の『シャイニング』は動画にあるように、小説版やTVドラマ版の舞台である実在するスタンリー・ホテルには、幽霊に関する逸話があるのを紹介しています。  以下はその後編ですが、あんまり面白くないですね。まあそれがWatchMojoさんですから仕方ないですが。

【インスパイア】TVアニメ 『ダンス・ダンス・ダンスール』第5話『死ね、ねーだろっ』で、「上半身は『バリー・リンドン』、下半身は『時計じかけのオレンジ』」というセリフが登場

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「上半身は『バリー・リンドン』」 「下半身は『時計じかけのオレンジ』」 「俺ってとってもスタンリー・キューブリック!」 「・・・と思えばこの衣装もむしろカッコイイと言えるだろう」   要するに、白粉と衣装が『バリー・リンドン』っぽくて、白いタイツとシューズカバーが『時計じかけのオレンジ』のブーツとパンツっぽいという話なんですが、調べてみるとこのセリフ、原作準拠でした。中学生がキューブリック(特に『時計…』)を観ているというのもなかなかですが、作者が映画好きなんでしょうね。と、なるとこの作品の元ネタは『リトル・ダンサー』でしょう。  公式サイトは こちら 。

【関連記事】まるで『2001年宇宙の旅』のモノリスに集う猿人 ザ・フーの名盤『フーズ・ネクスト(Who's Next)』のジャケ写制作の裏話

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『Who's Next』のジャケ写のアウトテイク。まさに『2001年宇宙の旅』 〈前略〉 『フーズ・ネクスト』の象徴的なアルバム・ジャケット  5月7日に新曲のテストと改良のため、小規模な会場で公開ライヴの第一弾を行なった。 5月23日、小規模なライヴの最終日が行われた。 スコットランドのダンディーにある二千人収容のケアード・ホールでライヴを行なった。  会場の近くで一夜を過ごした後、バンドは霧雨の降る灰色の月曜日の朝、ロンドンに戻った。  4台のキャラバンを率いるピート・タウンゼントがハンドルを握り、制限速度を大幅にオーバーして運転し、後部座席にはアメリカ人写真家のイーサン・ラッセルが横たわっていた。 バンドはラッセルがザ・ローリング・ストーンズの『ロックンロール・サーカス』を撮影した際に一緒に過ごしたことがあった。 当時26歳だったラッセルは、ローリング・ストーンズとの仕事と、ビートルズのアルバム『レット・イット・ビー』のジャケットとなる写真を撮影し、すでに名声を博していた。   バンドはしばらくの間、アルバム・ジャケットのアイデアを練っていた。 キース・ムーンが女装したり、SMグッズを身につけたり、裸の大柄な女性の下半身をメンバーの写真に置き換えたものなどがボツになったアイデアだ。 ラッセルが撮影した写真もあり、ムーンがいろいろな服を着ている写真もあった(引用元参照)。特にタウンゼントは、これまでのアイデアに満足しておらず、もっと芸術的な選択肢のアイデア出しをしたいと望んでいた。  ラッセルはこう語る。  「アイデアを得るために、私はイングランド中部で行われたギグに同行した。ピート・タウンゼントの運転が怖くて、後部座席に寝そべったんだ。パニックになったよ。帰り道、ピートはまた高速で運転していた。僕はあのコンクリート製のものを3つか4つ見たけど、それが何なのか分からなかった。彼はロータリーでスピードを落とし、何かアイデアはないかと聞いてきたので、あの形状のことを話したんだ」  タウンゼントは、おそらくA19号線を走行中、イージントン村の近くを通過していたのでしょう。 高速道路を降りて海岸に向かい、100年にわたる石炭生産で大きな影響を受けた地域の海岸沿いの町、イージングトン炭鉱にたどり着いた。 そこでは廃棄物の先端がなだらかな丘のような風景に変...

【関連記事】ワーナーの元CEO、テリー・セメルとトム・クルーズがインタビューで愛すべき監督、スタンリー・キューブリックとその最期の瞬間について語る

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元ワーナー・ブラザースのCEOテリー・セメルとトム・クルーズ  〈前略〉 アネット・インスドルフ :スタンリー・キューブリックが名監督として不朽の名声を保っているのは、主にその芸術的、技術的スキルに起因すると思いますか?それともそれ以上のもの、つまり彼の世界観からくるものなのでしょうか? テリー・セメル :私は後者だと思います。トムと私は、スタンリーと一緒に仕事をした誰もが、彼を愛していたことを保証します。彼は本当に素晴らしい人物で、とても頭がよく、明晰で・・・。 トム・クルーズ :・・・そして、とても面白い。 セメル :そうです、彼は素晴らしいユーモアのセンスを持っていました。『バリー・リンドン』(1975)になる映画に取り組んでいたとき、私はワーナー・ブラザーズの同僚に、この監督は日々どう進めばいいか指示されることはない、と説明したのを覚えています。彼がすべてのショットを決定するつもりだったのです。彼はすべてを自分でやったのです。全編を撮影しただけでなく、撮影現場には主要な俳優以外のスタッフはほとんどいませんでした。だから彼の仕事のやり方はリスキーだった。疑問もあった。でも『バリー・リンドン』は、私たちが一緒に仕事をした一連の映画の最初の作品であり、その後のプロジェクトで私たちが守り続けたルーティンを確立してくれたのです。 クルーズ :テリー、あなた方が行っていたルーティンを話してください。私はこれが大好きなんです。 セメル :ルーティンは決して変わりませんでした。私はスタジオの責任者ですから、スタンリーに手錠をかけるのは無理だと判断しなければならないと思いました。だから、これが私のルーティンでした。とてもシンプルなものでした。スタンリーは何本かの脚本に取り組み、次の作品にどうしてもやりたい脚本があると思うと私に電話してきて、「どのくらいでロンドンに来れるか」と言うのです。彼はカリフォルニアのスタジオに脚本を送りたがらなかったんです。『時計じかけのオレンジ』が公開された後、彼はたくさんの死の脅迫を受けたので、ロンドンという地域から離れたくなかったんです。だから私はロンドンに飛んで行きます。彼の義弟(注:ヤン・ハーラン)が毎回、同じホテルの同じ部屋に泊めてくれたんです。そして、スタンリーが電話で「テリー、今は必ず早く寝てたくさん休んでくれ」と言うんです。「...