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【関連動画】『2001年宇宙の旅』の未公開シーンとセット画像を集めた動画と、クラビウス基地で登場したハンディカメラをニコンがデザインしたという説明の信憑性について

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動画内で「ニコン製」と説明されたハンディカメラと登場シーン  『2001年宇宙の旅』の製作時に撮影された写真と未公開シーンを集めた動画がありましたのでご紹介。  どの写真やイラストも こちら のサイトからの引用だと思いますが、引用元のサイトは製作当時撮影されたものと、後の時代に再現されたものが混在しているので、ある程度の知識がないと判断は難しいと思います。その点この動画でチョイスされている写真・イラストは私が判断するかぎり全て「当時もの」だと思います。ただし、概要欄で注釈がある通り、6:22の年老いたボーマンのメイク写真は『2010年』製作時のものですね。もちろんスターチャイルドの造形を担当したリズ・ムーアが『時計じかけのオレンジ』のヌードテーブルを製作している写真(5:18)も違いますが、まあこれはリズのキャリアを説明するために用意しただけなので、間違いとは言えないでしょう。  この動画で一番驚いたのは   クラビウス基地の会議室で使われていたハンディカメラはニコンが提供したという説明です。もちろん初耳です。確かにニコンのレンズはHALの見た目映像(魚眼)で使用され、プロップにも埋め込まれたことは知られています(詳細は こちら )。しかしこれはニコンが協力したというより、キューブリック側が「採用した」という話であって、レンズの入手は単に正規ルートで購入したということだと思います。ですがハンディカメラの話はそれとは異なり、ニコンがデザインしたものをキューブリック側に提供したということになります。そんな話は今まで見たことも聞いたこともありませんし、これを鵜呑みにすることはできないでしょう。なぜなら、それが事実なら日本人である我々がとっくに知っていなければならない話だからです。  キューブリックは『2001年…』の製作にあたり、映画内でロゴを登場させるなどの宣伝と引き換えに、数多くの企業に最先端の未来技術の提供を呼びかけました。それに応じたのがIBM、ベル、ボーイング、クライスラー、パンナム、BBC、GE、パーカーなどの企業です。その中にニコンが含まれていれば当然公開当時から話題になっていたはずです。動画内でその情報のソースは示されていない以上、軽々に鵜呑みにはできません。もちろん確かなソースがあれば別ですので、この情報の詳細をご存知の方がい...

【関連記事】手塚治虫『惑星ソラリス』『2001年宇宙の旅』を激賞する

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  SF映画の魅力  今年はSF映画の年だなんていうんで、ずいぶん期待していたのに、上半期はロクなのがこない。  ただひとつ、これは、『Apache』を買う金があったらみにいってちょうだいよ。いや、 間違い。『Apache』を買って映画へいこう。ソ連製SF映画「惑星ソラリス」だ!  これはもう、NHKのニュースセンター9時でも紹介したくらいだから、みたがっている人が 多いだろう。残念なことに特殊な配給方法なので、東京、大阪など大都市以外の地方館では上映しないようだ。この映画の、なんてったってみどころは、あの主役のナタリヤ・ボンダルチュク。 このコの演技がまず、アカデミー賞もの。  このコの役は、ハリーという、死んじまった若い人妻の役。この人妻そっくりに、得体の知れ ないものが化けて、スーッと現れるのだ。そして主人公の男に惚れちまって寝ようってわけなんだが、亡き妻そのままの姿に、男は気味悪がって逃げの一手。  まといつこうとする、にせハリーの執念がすさまじい。金属のドアを手でブチやぶって、血だらけになって出てくるのだ。ついに彼女は液体酸素を飲んじまって、そり返ってのたうちまわって、凍ってしまう。  いやなんとも、こんなものすごい女優の演技は、めったにお目にかかれないよ。  この「惑星ソラリス」、どうも、アメリカSF映画「2001年宇宙の旅」をひどく意識して つくったみたい。そういうわけで、いよいよ来春再公開がきまった「2001年―」 には、みていないヤング諸君も、もうゼツ大の期待をもっていてほしい。  さっきぼくが、今年はSF映画の年なのにロクなのがこないといったのは、実は、「2001 年―」が今年の夏に封切られるハズになっていたのに、都合で来年にまわされたから、いよいよヤケクソ気味なのだ。というのは、この春に、題名のまぎらわしい「2300年未来への旅」 なんていうのが封切られてしまったせいだという説がある。「2001年―」に比べれば「2300年―」は、やはり、格がかなり落ちる。  なんてったって、「2001年宇宙の旅」は史上最高にして唯一のSF大作なのでありますぞ、 お立ちあい。  ぼくは、なにも配給会社から金一封もらって宣伝しているのではない。仲間のSF作家が口を 揃えて絶賛しとるのだ。それに、この映画には、ぼくは、ちょっとした思い出がある。この映画の監督...

【BD/4K UHD】ワーナーより『バリー・リンドン』4K UHD+BDセット2025年12月24日発売決定!!

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バリー リンドン 4K UHD + ブルーレイ セット [Blu-ray](Amazon)  【DISC1】 本編: 約185分 ディスク仕様:   4K ULTRA HD(片面3層) 本編: 2160p Ultra High Definition 本編サイズ: ヨーロピアンビスタサイズ/16×9LB 音声: 1. DTSHDMA 5.1ch:英語 2. DTSHDMA 2.0ch:英語 字幕: 1. 日本語 2. 英語(SDH) 字幕翻訳: 高瀬鎮夫 【DISC2】 本編: 約185分 ディスク仕様:  ブルーレイ(2D)(片面2層) 本編サイズ: スクイーズビスタサイズ/16×9FF 音声: 1. ドルビーデジタル  5.1chEX:英語 字幕: 1. 日本語 2. 英語(SDH) 字幕翻訳: 高瀬鎮夫 (引用: ワーナーブラザース公式サイト )  正直「やっとか・・・」との思いはぬぐえません。ワーナーはBD版発売時にキューブリックの意図通りのヨーロッパビスタサイズの1.66(1.78表示で左右にレターボックス)という仕様にせず、16:9のフル表示で発売して世界中のファンから不評を買っていました。おまけにオープニングロゴをメタル仕様にする改悪までしでかす始末。それを改善したのが後発のクライテリオン版でしたが、残念ながら日本語字幕は未収録。それもあって買い控えをした方にとって、このワーナー版のリリースは心待ちにしていたものなのです。  今回、その問題アリアリのBDとセットで4K UHD版が発売されるわけですが(最悪のBD版との比較をしやすくしてくれたワーナーさんに感謝!とでも言っておきましょう)、残念ながら音声はキューブリックが意図したモノラルは未収録です。モノラル音声版はDVDの初版を入手するしかなさそうです(詳細は こちら )。クライテリオン版の5.1chはアシスタントだったレオン・ヴィタリの監修でしたが、ワーナー版はその表記がないので不明です。加えてクライテリオン版にはあった関係者インタビューなどの特典映像ディスクは未収録になります。まあでもこれは発売元が違うので仕方ないですね。  クライテリオン版の見本動画は こちら にありますが、おそらくこれと同等な品質でのリリースになると思われます(そうですよね?ワーナー...

【関連記事】『シャイニング』は実話に基づいている? コロラド州の実在する恐ろしいホテルについて

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小説版とTVドラマ版の舞台になった「スタンリー・ホテル」   スタンリー・キューブリック監督による1980年公開の『シャイニング』。映画史上最高のホラー映画と名高い同作は、1977年に出版されたスティーブン・キングの小説を原作に作られたものとして知られ、実際に起きた事件を基にした作品ではないが、実は、キングがインスピレーションを受けたというホテルが実在している。  同作は、コロラド州ロッキー山中にある人里離れたホテルで、閉鎖される冬の間暮らすことになった3人家族を追う物語だが、キングが自身のウェブサイトで明かしたところによると、彼が1974年に家族とともに宿泊したという、ロッキーマウンテン国立公園にほど近いスタンリー・ホテルからインスピレーションを受けたそうだ。 〈以下略〉 (引用: クランクイン/2025年11月1日 )  記事は小説版とスティーブン・キングが監修したTVドラマ版『シャイニング』の話であって、キューブリックの映画版とは関係ない話です。ただ、商魂たくましいこのスタンリー・ホテルは一番有名な映画版『シャイニング』の意匠を利用して集客を図っているようで、記事にある 「シャイニング・スイート」 を始め、 庭には生垣迷路 まであるそうです。  一方でキューブリックの映画版の外観モデルとなったティンバーライン・ロッジや内装のモデルとなったアワニー・ホテル(ここには是非泊まってみたい!)は(詳細は こちら )特に目立ったプロモーションなどはしていません。まあ、どちらとも元より有名なホテルなので、そんなことをしなくても集客には苦労していないのでしょう。  上記の写真の通り、原作小説とTVドラマ版に登場したスタンリー・ホテルは、映画版のオーバールック・ホテルとは随分と趣を異にしています。これについては過去に 「【考察・検証】なぜキューブリックは小説『シャイニング』のオーバールック・ホテルを改変したか?を検証する」 という記事で考察していますので、ぜひご覧ください。

【関連動画】キューブリックが憧れたスクープカメラマン、ウィージーにインスパイアされた映画『裸の街(The Naked City)』の全編がYouTubeにて公開中

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  ジュールズ・ダッシン監督、バリー・フィッツジェラルド、ハワード・ダフ、ドロシー・ハート、ドン・テイラーらが出演した1948年公開の映画『裸の街(The Naked City)』。この映画は事件現場の血なまぐさいスクープ写真を発表していたウィージー(本名アッシャー・フェリグ)の写真集『裸の街』にインスパイアされたもので、ウィージーはビジュアルコンサルタントとして製作にも協力しています。そのウィージーのファンだった、当時ルック社の若きカメラマンのキューブリックはこの映画の撮影現場を訪れ、取材写真を撮影しています。  その後映画監督になったキューブリックは、『博士の異常な愛情』のスチール写真撮影のためにウィージーを招聘、ついに憧れの人と一緒に仕事をすることになったのですが、オーストリア出身のウィージーのドイツ語訛りの英語は録音され、それをピーター・セラーズが真似てストレンジラブ博士のキャラクターが出来上がりました(ウィージーのインタビュー動画は こちら )。  ところでこの映画、キューブリックのフィルム・ノワール『非情の罠』製作に影響を与えたかもしれません。映画をどうしても当てたかったキューブリックにとって、この『裸の街』が大ヒットしたこと。撮影がニューヨークで行われ、その現場を取材していたことなどがその根拠です。もちろん証言はありませんので推測の域を出ませんが、当時資金もコネも何もないキューブリックにとって、身近な題材で、慣れ親しんだ街で撮影できるテーマやジャンルを選んだとしても何の不思議もないと思います。  その写真集『裸の街』を紹介した動画は以下をどうぞ。キューブリックの写真集『Through a Different Lens: Stanley Kubrick Photographs』(詳細は こちら )と比べてみても、やはり影響は感じられます。キューブリックはダイアン・アーバスの影響云々とよく言われるのですが、キューブリックがカメラマンだった頃はアーバス夫妻は売れっ子の単なるファッションカメラマンでしかなかったのでそれは間違いです。キューブリックの志向(嗜好)に合致するのは断然ウィージーだということがこれでよくわかりますね。