【関連記事】スティーブン・キングがスタンリー・キューブリックの『シャイニング』の脚色をひどく嫌った理由
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| The Shining(IMDb) |
ホラーファンに「歴代ホラー映画のベスト10を挙げてください」とお願いすると、スタンリー・キューブリックの『シャイニング』が登場することが多い。スティーブン・キングの同名小説を映画化した1980年の作品は、ホラー映画の傑作として大きく評価されており、2018年には「文化的、歴史的、または美学的に重要 」として、米国議会図書館による米国国立フィルム登録簿への保存が決定しています。
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スティーブン・キングはジャック・ニコルソンのキャスティングを嫌っていました
キングは、キューブリックがニコルソンの役割を検討していると聞いた瞬間から、キャスティングを否認しました。『FrightFavorites:31 Movies to Haunt Your Halloween and Beyond』という本によると、キングは俳優のマイケル・モリアーティ、ジョン・ヴォイト、マーティン・シーンを提案していました。キューブリックは、ニコルソン、ロバート・デ・ニーロ、ハリソン・フォード、ロビン・ウィリアムズを候補に挙げていました。
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キューブリックはウェンディ・トランス(そしてシェリー・デュヴァル)を完全に変えました
キングはこの変更に非常に批判的であり、デュバルによるウェンディの性格描写を「これまでに映画に登場した中で最もミソジニー的なキャラクターの1人」と呼んでいます。キングは「彼女は基本的にただ愚かで悲鳴を上げるためにそこにいるだけであり、それは私が書いた女性ではない」と付け加えました。
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キングとキューブリックは、何がホラーに向いているのかについての意見が根本的に分かれています
キューブリックはキングに「幽霊話は基本的には楽観的な感覚がある」と語った。「幽霊話は死後の存在を暗示しているからだ」。キングは「地獄は楽観的か?」尋ねるとキューブリックは「私は地獄を信じていない」と答えた。これはキングとキューブリックが考える恐怖のビジョンの根本的な断絶です。キングの善と悪の見方は聖書の影響に根ざしていますが、キューブリックは悲観論者として知られています。何が善か悪かについてのこれらの異なる見解は、ジャック・トランスに関する彼らの異なる信念に直接影響を及ぼしています。
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(引用元:SLASH FILM/2022年2月28日)
何度も語られている話なので目新しさはありませんが、キングとキューブリックが羅列したジャック役の候補にはなんとなく傾向が見られますね。このキャスティング云々は1976~1977年頃のことなので、その時期の話として受け取らなければなりませんが、マーティン・シーンは『カサンドラ・クロス』の頃ですからイケメン熱血漢のイメージでしょうか? 対するキューブリックはクセのある俳優を選んでいます。ハリソン・フォードが意外ですが、コッポラの『カンバセーション…盗聴…』の印象からでしょうか?『スター・ウォーズ』はギリギリキャスティング前に観ていた可能性があります。
キングはシェリーのウェンディを「これまでに映画に登場した中で最もミソジニー的なキャラクターの1人」と一蹴していますが、当のキングがTV版でキャスティングしたのはレベッカ・デモーネイで、それはまさしく原作のイメージ通りでした。ただ、シェリーのウェンディをミソジニーだと言い切っていますが、果たしてそうでしょうか? ウェンディはジャックより賢く立ち回り最終的には生き延びます。キューブリック作品に登場する女性キャラは、強烈な男性キャラに阻まれてあまり目立ちませんが、意外に「強さ」「したたかさ」を発揮しています(『ロリータ』『アイズ ワイド シャット』など)。ストーリー全体でその役割を語らず、そのシーンの印象だけで「ミソジニー」で片付けてしまうのはどうかと思いますね。
