【サウンドトラック】ザ・サウンドトラック・アルバム・スパルタカス(The Sound Track Album Spartacus)
ザ・サウンドトラック・アルバム・スパルタカス/アレックス・ノース(Amazon)
- Main Title (3:20)|メイン・タイトル
- Love Theme (2:51)|スパルタカスの愛のテーマ
- Gladiators Fight To The Death (2:23)|剣闘士達は死ぬまで斗う
- Blue Shadows And Purple Hills (3:12)|ブルー・シャドウズ・アンド・パープル・ヒルズ
- Homeward Bound: (A) On To The Sea (B) Beside The Pool (6:30)|故郷へ:海へ~池のほとりで
- Hopeful Preparations, Vesuvius Camp. (2:00)|希望への準備~ベスビアス・キャンプ
- Prelude To Battle: (A) Quiet Interlude (B) The Final Conflict (5:14)|戦いへの序曲:静かなる間奏曲~最後の争い
- On To Vesuvius: (A) Forward, Gladiators (B) Forest Meeting (4:55)|ベスビアスへ:進め!剣闘士よ~森での会合
- Oysters And Snails - Festival (3:26)|牡蠣と蝸牛~祭礼
- Headed For Freedom (2:22)|自由の身へ
- Goodbye. My Life, My Love. - End Title (4:18)|生命も恋も捨てて~エンド・タイトル
映画本編はカーク・ダグラスの聖人君子ぶりや、脚本のメロドラマ性、絵に描いた理想主義が鼻につく『スパルタカス』だが、王道とはいえこの堂々としたサントラは良曲揃いでクオリティが高い。作曲したアレックス・ノースは完成までに1年以上を費やしただけの事はあり、どの曲もよく練られている印象だ。『2001年…』でキューブリックが再びノースにサントラを依頼したのも頷ける。
1950年代という時代は映画製作において非常に音楽が重要視された時代で、大作映画の上映時には観客の高揚感を煽るためオーバーチュア(序曲)の演奏が通例であった。ただ、残念な事にこのサントラではカットされてしまっている。
『メインタイトル』の小刻みなスネアはソール・バスの斬新なオープニング・グラフィックと相まって映画の期待感を盛り上げてくれる。『スパルタカスの愛のテーマ 』はこのサントラの中では最も有名な楽曲だろう。クラッシックやジャズ、果てはラテンまで様々アーティストにカバーされている。
『剣闘士達は死ぬまで斗う 』は黒人奴隷ドラバとの決闘シーンに、『ブルー・シャドウズ・アンド・パープル・ヒルズ 』はバリニアが食事の世話をするシーンに、『故郷へ:海へ~池のほとりで 』、『希望への準備~ベスビアス・キャンプ 』、『戦いへの序曲:静かなる間奏曲~最後の争い』、『ベスビアスへ:進め!剣闘士よ~森での会合』はそれぞれタイトルのシークエンスに使用されている。
面白いのは公開当時に「同性愛を示唆する」とカットされた「牡蠣と蝸牛」シーンに使用された『牡蠣と蝸牛~祭礼』がサントラには収録されている事だ。本編のカットがギリギリだったためにサントラの対応が間に合わなかったのか、それともカットされた事に対する当てつけでわざと残したのか資料がないのではっきりとした事は分からないが、後者だったらちょっと興味深い。
『自由の身へ』から『生命も恋も捨てて~エンド・タイトル 』はラストのクライマックスを悲劇的に彩っている。エンドタイトルが終わった後でも延々と音楽が鳴り続けているが、当時はこれが大作映画のフォーマットとして常識だったので、きっちり最後まで楽しみたい。
このサントラ全般を聴いて感じることだが、後世の映画音楽作曲家に与えた影響はかなり大きいと推察できる。ハリウッドの大作主義がこの映画音楽の隆盛をもたらしたのだとすれば、それはそれで歓迎すべき事だが、映画の劇伴音楽としての方法論はここで出尽くしていているようにも感じる。一部の特徴的なメインテーマ等を除き、現代のサントラの楽曲は既視感でいっぱいだ。キューブリックが既成曲使用にこだわったのは、どれも同じような楽曲になってしまうならオリジナルで劇伴音楽を製作する意味がない、と判断したためかもしれない。