【撮影・技術】ソース・ライティング(Source Lighting)
セットの組み込まれた光源や、ロケ先に予め設置されている光源を主体とした照明の当て方。過去のハリウッド映画ではセットには天井を作らず、スタジオ設置の照明を使うのが一般的だった。その方が俳優やセットの立体感をライティング次第でコントロールできたからだ。反面、いかにも照明を当てました的な不自然さも感じさせてしまうことにもなるため、キューブリックはその「不自然さ」を嫌い、ソースライティングにこだわった。これはキューブリックが報道カメラマン出身という出自が大きく関係していると思われる。報道カメラマンは現場の光源、つまりソースライティングに頼るしかなかったからだ。キューブリックは状況によってはフラッシュも使っていたが、それを感じさせない自然な写真の仕上がりには定評があった。
上記の動画は『現金に体を張れ』でのワンシーン。男たちを照らすペンダントライトを使った「ソース・ライティング」。ライトの影に俳優が入ってしまって顔がよく見えない瞬間があるが、キューブリックはそれを「共謀計画を練る男たちが醸し出す緊張感」としてあえて採用しているのがよくわかる。