アーサー・C・クラークによる小説版『2001年宇宙の旅』とキューブリックの映画版『2001年宇宙の旅』にはいくつか相違がありますが、今回はあまり語られてこなかったこの「HAL反乱シークエンス」の違いについて検証したいと思います。 まず小説版と映画版でどこがどう違うのか、整理してみたいと思います。 ●小説版 (1)HALがAE-35ユニットの異常を知らせる。 (2)検討の結果プールが船外活動によってユニットを交換する (3)持ち帰ったユニットを検査したが、異常がない事が判明する (4)ボーマンとプールはHALの方が異常をきたしているのではないかと懸念する (5)HALの予告通りユニットが故障する(HALの自作自演) (6)プールが再度ユニットを交換に船外へ出る (7)HALがポッドをプールに追突させ殺害 (8)ボーマンはコントロールから呼びかけるが、応答なくプールの死を確信 (9)ボーマンは冷凍睡眠中の残りのクルー全員の覚醒を始める (10)HALはディスカバリー号の空気を抜き、クルー全員の殺害を企てる (11)ボーマンはそれに気付き、緊急シェルターに逃げ込み難を逃れる (12)生き残ったボーマンはセントラルユニットに行き、HALを停止させる ●映画版 (1)HALがAE-35ユニットの異常を知らせる。 (2)検討の結果ボーマンが船外活動によってユニットを交換する (3)持ち帰ったユニットを検査したが、異常がない事が判明する (4)ボーマンとプールはHALの方が異常をきたしているのではないかと懸念する (5)それを確認するためにユニット元に戻すことにする (6)プールが再度ユニットを交換に船外へ出る (7)HALがポッドをプールに追突させ殺害 (8)ボーマンはポッドでプールの救出に向かう (9)ボーマン不在を突いてHALが冷凍睡眠中の残りのクルー全員の殺害を始める (10)HALはボーマンの帰還を拒否、ディスカバリー号から閉め出す (11)ボーマンはポッドの扉を爆破、緊急エアロックから強引に船内に帰還する (12)生き残ったボーマンはセントラルユニットに行き、HALを停止させる (2)(5)の違いはあまり問題ではないでしょう。(8)から(11)までの流れの違いが顕著です。大きな違いは (ア)ボーマンがポッドでプールの救出に向かうか否か (イ)HALによるボーマン...