【撮影・技術】ドリーショット(Dolly Shot)
キューブリックが好んだ撮影方法のひとつ。カメラをドリー(台車)に乗せて動かしながら撮影する方法。台車の下にレールを敷く場合もある。広義にはカメラを移動させながら撮影する方法の全般を指すが、キューブリック作品の場合、ステディカムやクレーン撮影と区別するため、「台車を使った撮影」の意味で使われる場合が多い。
キューブリック作品で有名なのは『現金に体を張れ』のアパートのシーン。壁を突き抜けて横に移動しながら俳優の動きを追っている。また『バリー・リンドン』の戦闘時の行進シーン、『フルメタル・ジャケット』のラストシーンでは集団で一方向へ歩いていく部隊を平行移動するドリーショットで撮っている。『時計じかけのオレンジ』のオープニングは奥から手前の引きのドリーショットで、この時は台車だけでレールは敷かずに撮影された。
上記動画は『突撃』でドリーショットを使用しているシーンが連続して登場する。塹壕内ではまるでステディカムのように滑らかなカメラ移動に驚かされる(当然この頃はまだステディカムは存在しない)。キューブリックはこの映像が撮りたいために、史実とは異なり塹壕を台車が通れる幅に広げたという。続いての突撃シーンではキューブリックお得意の平行移動によるドリーショットだ。これらのシーンはカメラマン出身のキューブリックのこだわりが遺憾なく発揮されたまさしく「GREAT SCENE」と呼ぶにふさわしい。