【関連動画】キューブリックのルック社時代の写真集『Through a Different Lens: Stanley Kubrick Photographs』の紹介動画


動画は全ページ紹介していますので、ネタバレを回避したい方は視聴をご遠慮ください(音量注意)

 キューブリックのルック社時代の写真集『Through a Different Lens: Stanley Kubrick Photographs』を入手しましたので紹介動画を作りました。かなりのボリュームと重さなので、届いた時は驚きました。内容はキューブリックのルック社時代の取材写真と、その掲載ページが時系列で紹介されていて、キューブリックの「ポートフォリオ」を見ているような、そんな一冊になっています。

 ここに採り上げられているのは主なものだけで、キューブリックはルック社在籍時に残っているだけで15,000枚もの写真を撮影しています。その全てはニューヨーク市立博物館の検索ページで「Stanley Kubrick」と検索すれば見ることができるのですが、あまりにも多いのでダイジェストとはいえ、写真集として見ることができるのはありがたいですね。

 2005年に刊行された『スタンリー・キューブリック ドラマ&影:写真1945‐1950』はかなりアート寄りな切り口でしたが、今回は「報道カメラマン」としてのスタンスでまとめられています。当時のキューブリックの実像としてはこちらの方が正しいので、個人的には本書の方をおすすめしたいです。『ドラマ&影』も悪くはないのですが、ちょっと大上段に構えすぎのような気がしますので。

 ひとつ気がかりなのはネット全盛の現代で、「ルック」という報道写真誌がどこまで理解されているか、という点です。日本では「グラフ誌」と呼ばれ、アサヒグラフや毎日グラフといった雑誌が出版されていましたが、今世紀に入ってすでに廃刊になっています。当然雑誌なので、売らんがためのセンセーショナリズムやヤラセ、仕込み、恣意的な編集などの「演出」はあって当然ですし、「報道」と言いながら戦前・戦中にはプロパガンダに利用されていました。そういうメディアであったことをよく理解した上で、キューブリックが撮った(撮らされた)これら写真の数々を鑑賞すべきでしょう。

 キューブリック本人もこれらの写真を「アート」だとは1ミリも考えていなかったはずです。そんな「制限」の中でもキューブリックらしい視点や切り口、構図やライティングは散見されます。日本で言えば高校在学中(16歳)から高校卒業時(17歳)、そして大学卒業(22歳)までの年齢でキューブリックが成し遂げた、しかし最終的には「くだらない」と捨て去った「仕事」のすべてを、ぜひ本書でご堪能ください。

 

TOP 10 POSTS(WEEK)

【関連記事】リドリー・スコット「『2001年宇宙の旅』以降、SFは死んだ」

【ブログ記事】スケジュールも予算も守れず、際限なくテイクを繰り返すキューブリックは「無能監督」か?

【関連記事】『ロリータ』の暗部。主演の少女女優の処女を奪ったプロデューサーのジェームズ・B・ハリスとその後のスー・リオンの人生

【関連記事】スタンリー・キューブリックは『シャイニング』でどのようにエレベーターに血を溢れさせたか?

【関連記事】マイナビニュース会員による「宇宙が舞台のおすすめ映画20選」のアンケート結果が驚きの順位

【関連動画】キューブリック vs スティーブン・キング!映像化された両者の『シャイニング』を同時表示して比較した動画

【台詞・言葉】『時計じかけのオレンジ』に登場したナッドサット言葉をまとめた「ナッドサット言葉辞典」

【関連記事】仏映画サイトが選ぶ、オープニングが素晴らしい20作品

【関連動画】NHK BS8KでしかOAされていないはずの8K版『2001年宇宙の旅』のサンプル映像がYouTubeにアップされました

【ブログ記事】『ロッキンオン・ジャパン』2020年10月号の表紙に、あいみょんが『シャイニング』双子の少女Tシャツを着て登場