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B-52の飛行シーンなのに影がB-17なのは、撮影機材がB-17だったから

『博士の異常な愛情』を撮影中のギルバート・テイラー

 〈前略〉

 映画のプリプロダクション期間中、テイラーは消息不明になったB-52に乗っているシークエンスで使用される、リアプロジェクションの背景のために必要な大規模な空撮を撮影していた。「スタンリーは飛行機を嫌っていた」とテイラーはACに語った。「だから『博士の異常な愛情』の準備期間中、私はB-17フライングフォートレスに乗って28,000マイルほど空撮をしたんだ。私は離陸した夜のことを覚えている。午後4時には真っ暗になっていて、爆撃機に乗ってアイスランドとグリーンランド目指して飛んで行ったんだ。空港には小雪が降っていて、突然誰かが「スタンリーが来た」と言ったんだ。私は「なんてこった、今はまずい!」。彼は飛行機に乗り込んできて整備士に言ったんだ「カメラの取り付けがきつすぎる」とね。私はその種の仕事をたくさんしてきたので、マウントは絶対にしっかりしたものにしたいと思っていたし、グラグラするものではなかった。スタンリーが講評を始めたとき、私はパイロットに「エンジンを1つ始動してくれないか」と言ったんだ。すると彼はエンジンを始動させ、スタンリーは文字通り飛行機から飛び出して行ったよ。彼がドアの外に出るとすぐに、私は彼らにボルトを締め直してもらったんだ」

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:American Cinematographer/2021年1月9日




 映画制作のすべてに関わりたがるキューブリックは、空撮スタッフにも事細かに指示しようとしたのですが、このときは飛行機嫌いを利用され、体良く飛行機から追い出されてしまいました(笑。それに映画のB-52の飛行シーンで、影がB-17なのは撮影機材がB-17だったという理由だったそうです。

 テイラーは他にも「『博士…』は照明がセットに組み込まれ、他の照明はほとんどか、またはまったく使用されなかったため、当時としてはユニークな体験だった」と語っています。いわゆる「自然光照明」や「自然光撮影」と言われる、その場にある光源を使って「わざとらしい照明ではない、自然に見える照明で撮影する撮影方法」ですが、キューブリックはこの「自然光撮影」へのこだわりは並大抵なものではありませんでした。それはベテラン撮影監督であるテイラー(当時51歳)が「ユニークな体験」と語るほど当時はこの照明方法は珍しがられたようです。

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