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 キューブリックが、上記動画にも登場するステディカムのデモ・フィルムを観たのは『バリー・リンドン』のポストプロダクションの頃でした。その時点ではスティーブン・キングの小説『シャイニング』の存在をまだ知りません。キューブリックはすぐギャレット・ブラウンに連絡を取り、「私は黙っておくから、装置の正体がバレる危険性がある装置の影が映り込んだ14フレームをカットするように」と伝えました。その後キューブリックはどの高さまでカメラを下げられるか問い合わせをしていて、ブラウンは「ローモード」と呼ぶ装置を開発、『シャイニング』の撮影にそれを使いました。実際の撮影ではさらに床から1インチ(2.5cm)の高さまで下げるため、車椅子使うなどの工夫しました。撮影現場でブラウンは、キューブリックの多テイクぶりに驚いたそうです。

 動画でブラウンは、『シャイニング』におけるスティディカムの映像を「神視点」「悪魔的性質」と語り、「超自然現象(スーパーナチュラル)」と表現しています。まさしくそれはキューブリックが狙ったことで、『シャイニング』の数々の改変(生垣動物を生垣迷路に、こじんまりとしたリゾートホテルを各室が廊下で繋がれた巨大ホテルに)は、まず「スティディカムありき」だったことが伺えます。つまり、キューブリックは初めから「超自然現象」を視覚的に表現するために、スティディカムの映像を最大限利用つもりだったのです。小説『シャイニング』の映画化における改変は、キングとキューブリックの宗教観や家族感、映像化の方向性の違いとしてよく語られてきました。ですが、全ての権限を掌握して映画作りをするキューブリックは「欲しい映像のためにはストーリーはおろか設定さえも変更する」ということをします(例えば『2001年宇宙の旅』におけるディスカバリー号の目的地の土星を木星に変更するなど)。それはこの『シャイニング』でも同じなのです。

 キューブリックはストーリーやコンセプト、テーマを「映像で語る」監督です。キューブリックが小説『シャイニング』を、スティディカムの映像ありきで改変をしたのでは?という考察は、あまりなされてきていませんが、映画『シャイニング』を理解する上でとても重要なことではないかと考えています。

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