【関連記事】映画ファン1000人が選ぶ クラシック音楽が印象的な映画
物語を盛り上げ、感情を揺さぶる美しいメロディーの数々。スクリーンを通してこそ気づく、名曲の知られざる魅力がある。映画ファン1000人が、クラシック音楽が印象的な作品を選んだ。
〈中略〉
8位 2001年宇宙の旅 <交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」(R・シュトラウス)>
271ポイント トランペットの響きが特徴的
謎の黒い石板との接触を通し、ヒトザルが人類へと進化し宇宙を開拓する様子を描いたSF映画。同曲は冒頭シーンをはじめ計3回使われる。厳かなトランペットの響きが特徴的で、「壮大な登場感を表現するのにぴったり」と西村さん。
〈中略〉
クラシック人気 映画が一役
〈中略〉
戦後の映画史とクラシック音楽の関わりの上で欠かせない存在となるのがスタンリー・キューブリック監督だ。今回ランクインした作品のほかにも、ベートーヴェンの交響曲第9番が登場する「時計じかけのオレンジ」(71年)など同監督の作品には多くのクラシック音楽が使われており、「曲の背景を考え抜いた上で意識的に映像が作られている」と小室さんは話す。「ツァラトゥストラはかく語りき」のように、映画を通じて有名になった曲も少なくなく、西村さんは「映画がクラシック音楽人気を作っていった」と指摘する。
〈以下略〉
(全文はリンク先へ:日経新聞/2022年7月23日)
※無料会員登録で購読可
キューブリックが本格的にクラシック曲を自作に使用するようになったのは、記事にある通り『2001年宇宙の旅』からです。キューブリックはその理由を「いい曲がいっぱいあるのだからいろいろ試さないと」「編集時に試行錯誤できる」という理由を挙げていますが、何よりも「映画は映像と音楽、セリフ(言葉)はその次」というキューブリックの考え方によるものです。無声映画にハマっていた若い頃、セルゲイ・エイゼンシュテインの『アレクサンドル・ネフスキー』で使用された『氷上の戦い(The Battle of the Ice)』を狂ったように聴き続けた(・・・あげくの果てに怒った妹のバーバラにレコードを叩き割られた。笑)経験から(詳細はこちら)、音楽がそのシーンを表現する力は言葉以上だと実感したのでしょう。
クラシックファンやミュージシャンにキューブリックファンが多いという事実は、こいった経緯と無関係ではないでしょう。また、音楽に合わせて映像編集するという手法は、後のミュージックビデオ界に与えた影響も大きいと考えられます。MV出身の映画監督が影響を受けたとして、ことごとくキューブリックの名を挙げるのはもはや常識です。
「映画にクラシックが使われることの全てがキューブリックの影響である」というのは言い過ぎですが、少なくともキューブリックはクラシックの選び方、使い方に長けていて、その影響を受けたクリエーターが世界中にあまた存在する、というのは疑いようがない事実です。ただしキューブリックはオリジナルの劇伴音楽を軽視していたわけではなく、『時計じかけのオレンジ』『シャイニング』のウェンディ・カルロス、『フルメタル・ジャケット』のアビゲイル・ミード(ヴィヴィアン・キューブリック)、『アイズ ワイド シャット』のジョスリン・プークが果たした功績も、同時に忘れてはならないと思っています。
情報提供:オリオン様