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4月, 2025の投稿を表示しています

【関連記事】ルック社時代、上司だった著名なフォトジャーナリスト、アーサー・ロスシュタインが撮影した入社したてのキューブリックのポートレート

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アーサー・ロシュタインが撮影した17歳のキューブリック。当時まだ目は悪くなかったはずで、メガネはふざけてかけたものだと思われる 〈前略〉 キューブリックの写真スタイル  ルック誌のカメラマン見習いとして働き始めた最初の6か月間、キューブリックは同誌のより経験豊富なカメラマンから指導を受けた。その指導者の1人がアーサー・ロスシュタインだった。1978年のインタビューでロシュスタインは「年配のカメラマンにとって仕事で得られる最大の満足感は、若いカメラマンが何かを達成するのを手助けすることです。私はキューブリックがルック誌の専属カメラマンだった初期の頃、彼を助けました」と語っている。 フォトエッセイ   ロシュスタイン の著書「フォトジャーナリズム」によると、この雑誌には6段階のフォトエッセイ制作プロセスがあった。写真家は、写真編集者からストーリーを割り当てられると、プロセスの第3段階に参加することになる。写真家はアイデアを提案できるが、通常は自分の能力と好みに基づいてフォトストーリーが割り当てられる。  プロセスの第4段階では、写真家とライターが現場に出向き、記事用の写真を撮影します。  撮影現場に出発する前に、写真家は編集者と撮影内容について話し合い、撮影台本を含む被写体に関する情報を受け取ります。  ルックは、作家が写真家と協力して物語を完全に理解することが重要だと信じていました。作家は視覚的に考えるよう奨励され、脚本を準備する際には、写真家が物語を捉えるのに役立つ主題や設定に関する情報をすべて盛り込むように指示されました。  この雑誌は、写真家たちに、表現力豊かな孤立した写真ではなく、フォトエッセイや物語性のある連続写真の制作を求めていました。原稿から逸脱することが頻繁にあったため、写真家たちは柔軟に対応する必要がありました。  この撮影アプローチは、キューブリックの映画人生を通じて貫かれました。後のインタビューで彼は「最後の瞬間に適応できること」と、たとえ脚本の弱点が露呈することになったとしてもチャンスを活かすことが重要だと語っています。 報道を受ける   ロスシュタイン の本では、撮影範囲の重要性についても触れています。『ルック』は実際の記事よりも写真に重点を置いており、キューブリックを含むスタッフカメラマンは、雑誌の美術部門に記事のレイアウトに幅広い選択肢を...

【上映情報】昨年秋、ロンドンで上演された舞台版『博士の異常な愛情』が2025年5月9日よりTOHOシネマズ日本橋ほかで映画として上映決定!!

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『博士の異常な愛情』 5/9(金)〜 TOHOシネマズ日本橋ほか あのキューブリックの名作が舞台になって登場! 演出:ショーン・フォーリー(映画『マインドホーン』監督、オリヴィエ賞受賞演出家) 作:スタンリー・キューブリック 脚色:ショーン・フォーリー、アーマンド・イアヌッチ(映画『スターリンの葬送狂騒曲』監督・脚本、映画「どん底の作家に幸せあれ!」監督・脚本、エミーアワード受賞歴あり) 主演:スティーヴン・クーガン(4役) 撮影場所:ノエル・カワード・シアター 上映時間:2時間5分 ポイント:BAFTA賞を7度受賞したスティーヴ・クーガン(『アラン・パートリッジ』『トリップ』)が、スタンリー・キューブリックの傑作コメディ『博士の異常な愛情』の世界初舞台化で4役を演じる。アメリカの悪徳将軍が核攻撃を引き起こしたとき、政府と一人の風変わりな科学者が世界滅亡を回避するために奔走する、シュールな競争が繰り広げられる。 エミー賞受賞のアーマンド・イアヌッチ(『ザ・シック・オブ・イット』、TVドラマ『Veep/ヴィープ』)、オリヴィエ賞受賞のショーン・フォーリー(『The Upstart Crow』、『The Play What I Wrote』)など、世界的に有名なクリエイティブ・チームが率いる、爆発的に面白い風刺劇。 (引用: ナショナル・シアター・ライブ『博士の異常な愛情』公式サイト )  昨年秋、ロンドンのノエル・カワード・シアターで上演された、スティーヴン・クーガン主演(ストレンジラブ博士、マフリー大統領、マンドレイク大佐、コング機長の4役)の舞台版『博士の異常な愛情』が、2025年5月9日よりTOHOシネマズ日本橋ほかで「映画として」上映決定いたしました。ロンドンの上演を観ることができず、悔しい思いをされた方には朗報ですね。  私は一足早く、試写版を視聴させていただきましたが、キューブリック版をかなり忠実に再現していたのには驚きました。舞台である以上、俳優の着替え時間や場面転換などの制約があるのですが、さまざまな工夫を凝らすこと(詳細は語りません。笑)で上手くそれらを回避しています。さらにあの「北の大国」や例の「チョビ髭」も(必要以上に?)コスられていて、お笑いにはシニカルな私もおもわず声を上げて笑ってしまいました。  とにかく、あの名場面もあの台詞もあの曲も登場...

【関連記事】『シャイニング』の不気味な写真に隠された45年間の謎が解明されたか?

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 引退した学者兼ジャーナリストが、古典ホラー映画の悪名高い写真に写っていた男性を特定した。  これは『シャイニング』のラストシーンに重ねて使用されたとされるオリジナル写真です。1921年2月14日、ロンドン、ケンジントンのロイヤル・パレス・ホテル、エンプレス・ルームで開催されたバレンタインデー・ダンスと社交ダンスの大会に出席する観客たちを捉えています。手前中央で両腕を大きく広げているのは、南アフリカ出身の社交ダンス教師、サントス・カザーニ(通称ジョン・ゴールマン)です。( Morey/Topical Press Agency/Hulton Archive/Getty Images )  それはホラー映画の歴史に刻まれた瞬間です。  スタンリー・キューブリック監督の1980年のホラー映画の傑作『シャイニング』で、 カメラはオーバールック・ホテルの廊下に掛けられた白黒写真にズームインする。写真には1921年7月4日の日付が記されている。中央には、ジャック・ニコルソン演じるジャック・トランスが、パーティー参加者の群衆の中で微笑んでいる。    しかし、この写真はエキストラを使って撮影されたものではありません。1920年代の実際の写真で、ニコルソンの顔が誰かの顔に重ねられていました。一体誰の顔だったのでしょうか?  〈以下略〉 (引用: CBC Radio/2025年4月10日 )  『シャイニング』のラストシーンに登場した、ジャック・ニコルソンが写り込んだ古い集合写真は映画のために撮影されたのではなく、既存の古い写真にニコルソンの写真を合成(切り貼りしてその境目をエアブラシで補修)したことは以前 この記事 でお伝えした通りです。そして今回、ついにその「古い写真」の詳細がわかったということでそれは記事にある通りです。  意外だったのが映画の設定年と実際に撮られた年が1921年と一致していたこと。数年のズレはあっても仕方ないだろうと考えていたのですが、どうやらその年のバレンタインデーのパーティーか、独立記念日のパーティーかの違いしかなかったようです。これはラッキーでしたね。  キューブリックは原作小説の「呪われたホテルが焼け落ちる」というラストを早々に「陳腐だ」と廃棄し、代替案をいろいろと考えていたようですが、その一つに病院シーンの後に単にホテルの...

【関連記事】キューブリック財団が『2001年宇宙の旅』の衝撃を描くドキュメンタリー制作に着手、レオナルド・ディカプリオ、マイク・メダヴォイらがプロデュース

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独占:スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』の影響が、この伝説の映画監督の財団とスタンリー・キューブリック・アーカイブとの提携により制作されるドキュメンタリーで探究される。  映画『モノリス』のプロデューサーは、フェニックス・ピクチャーズのマイク・メダヴォイとマイケル・リー・ピーターソン、キャッチライト・スタジオのジェイソン・クラーク、ショーン・リチャード、そしてアカデミー賞受賞者のレオナルド・ディカプリオとアピアン・ウェイのジェニファー・デイヴィソンです。パートナーズ・イン・カインドとタイム・スタジオが共同出資しています。  2026年の公開が予定されているこのドキュメンタリーは、今月から制作が開始されます。監督は、2015年に公開され高い評価を得たブランドをテーマにしたドキュメンタリー『Listen to be Marlon 』のスティーヴン・ライリーです。  「『2001年宇宙の旅』は究極の時代精神を体現した映画です」とライリーは声明で述べた。「最近、映画監督たちによって史上最高の映画に選ばれましたが、それも当然のことです。この映画は、私たちが今日直面している劇的な技術と社会の変化を予見し、それを物語っています」  キューブリックとアーサー・C・クラーク(クラークの短編小説『前哨』に基づく)が脚本を担当した『2001年宇宙の旅』は1968年に公開され、キア・デュリアとゲイリー・ロックウッドが主演し、ダグラス・レインがスーパーコンピューターHALの不気味な声を演じた。  「『モノリス』は、スタンリー・キューブリック、アーサー・C・クラーク、そして彼らの協力者たちのパートナーシップから生まれた、現代を形作った多くの画期的なアイデアを深く掘り下げています」とリリースには記されています。「このドキュメンタリーでは、キューブリックとクラークの間で交わされた、これまで公開されたことのない個人的な手紙や物語を紹介するほか、現代の先見者や、様々な分野の変革者たちによる洞察に満ちたインタビューも収録されます。彼らは映画からインスピレーションを得て、今日の世界を創造したのです」 〈中略〉  公開から数十年を経ても、『2001年宇宙の旅』の評価は高まるばかりだ(1969年には批評家のポーリン・ケイルが酷評したことで有名だが、これは異端だった)。2013年、キリアン・...

【関連記事】THE NEW YORKER誌に『博士の異常な愛情』のパロディが登場

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バリー・ブリットの「Left to Their Own Devices」 トランプ政権のそれほど機密扱いされていないグループチャット。  2025年4月7日号の表紙で、漫画家のバリー・ブリットはスタンリー・キューブリック監督の1964年映画『博士の異常な愛情 あるいは私は如何にして心配するのをやめ、核爆弾を愛するようになったか』のビジュアルイメージを借用し、最近ニュースを見る誰もが襲われる切迫した破滅感を表現している。そして、シグナルゲート事件を受けて、デイヴィッド・レムニックが書いているように、トランプ政権がその独裁的な意図を隠そうとしなかっただけでなく、「その悪意、報復、そして途方もないスピードという性質が、その指導者たちの無能さを幾分か覆い隠している」ことが明らかになった。  恐怖と安全策に関するその他の記事については、以下を参照してください。 (引用: THE NEW YORKER/2025年4月7日 )  記事にある「シグナルゲート事件」とは、イエメンのフーシ派に対する攻撃情報をこともあろうか「シグナル」というメッセージアプリを使ってやりとりし、それが漏洩(原因は関係者の単純なアプリ操作ミス)したという事件なのですが、それは『博士の異常な愛情』で、核攻撃を止める暗号文を公衆電話で、しかも交換手を通して平文で伝えようとしたシーンを彷彿とさせる話です。  それを受けてのこの表紙イラストだと思うのですが、ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻以来、キナ臭い話題には『博士…』がよく引用されます。まあ昔から戦争に関する話題でこのような引用は散見されたのですが、現在は「核攻撃」がシリアスな問題になっていますので、正直笑ってもいられません。だた、『博士…』公開当時のアメリカの切迫感を身近に感じられるという意味では、貴重な「追体験」と言えなくもないですが・・・。せめてこの程度の「追体験」で終わって欲しいと願うばかりです。