『ロリータ』に登場した、ロリータを裏で操る怪しげな男。放送作家という事だがその正体ははっきりしない。ハンバートは、「キルティ殺しで有罪」(Guilty of Killing Quilty)となってしまうんだけど、「キルティ」という変なネーミングは、このシャレから来ているんでしょう。キルティを演じたピーター・セラーズの妙な存在感が忘れられない。
オープニングに続けてのハートマン先任軍曹による新兵罵倒シーンの全セリフと、その邦訳です。訳は映画監督の原田眞人氏、出典は『フルメタル・ジャケット』DVD版字幕から採録しました。リズミカルで含蓄・示唆に富んだ麗しき罵倒語の数々をお楽しみください(笑。 <HARTMAN> I am Gunnery Sergeant Hartman, your Senior Drill Instructor. From now on, you will speak only when spoken to, and the first and last words out of your filthy sewers will be "Sir!" Do you maggots understand that? 訓練教官のハートマン先任(ガナリー)軍曹である 話し掛けられた時以外口を開くな 口でクソたれる前と後に“サー”と言え 分かったか ウジ虫ども <RECRUITS> Sir, yes, sir! <HARTMAN> Bullshit! I can't hear you. Sound off like you got a pair. ふざけるな!大声出せ! タマ落としたか! <RECRUITS> Sir, yes, sir! <HARTMAN> If you ladies leave my island, if you survive recruit training, you will be a weapon, you will be a minister of death, praying for war. But until that day you are pukes! You're the lowest form of life on Earth. You are not even human fucking beings! You are nothing but unorganized grabasstic pieces of amphibian shit! 貴様ら雌豚が おれの訓練に生き残れたら 各人が兵器となる 戦争に祈りをささげる死の司祭だ その日まではウジ虫だ! 地球上で最下等の生命体だ 貴様らは人間ではない 両生動物のクソをか...
『2001年宇宙の旅』で初めて発せられる人類の言葉がこの「メーン・フロアです」。原語では「Here you are, sir. Main IeveI, pIease.」 キューブリックとビートルズの結びつきといえば、「TV映画『マジカル・ミステリー・ツアー』の『フライング』のシーンは、『博士…』のオープニング・シークエンスのアウトテイクの流用」とか、「『2001年…』の猿人「月を見るもの」を演じたダン・リクターは、ジョンとヨーコが購入し『イマジン』のMVの舞台となった邸宅、ティッテンハースト・パークで一緒に暮らしていた」とか、小ネタがいくつかあるのですが、それにまたひとつネタが加わりました。 『2001年…』で記念すべき人類初のセリフ「メーン・フロアです」を発するエレベーターガールを演じたのは、当時売れっ子のモデルだったマギー・ロンドン(Maggie London)という女性です。このマギー、ビートルズ初の主演映画『ハード・デイズ・ナイト(旧題:ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!)』のディスコシーンでリンゴ・スターと踊っている女性がそのマギーになります。 左:Ringo Starr Jiving With Maggy London At Les Ambassadeurs Nightclub In London To Shoot Part Of The New Film 'a Hard Day's Night'. 1964 . Rexmailpix.(Shutterstock)/右:マギー・ロンドンの近影) しかもこのマギー、結婚した相手が1960年代ブリティッシュ・インヴェイジョンの一翼を担ったバンド、マンフレッド・マンのボーカル、マイク・ダボで、結婚時はマギー・ダボを名乗っていたとか(2子をもうけ、現在は離婚)。 ヒット曲『Doo Wah Diddy 』。ロックファンにはクリームのジャック・ブルースが在籍していたバンドとして有名。 まあ、当のキューブリックはポピュラー・ミュージックには疎かったそうですので、どこまでこういった細かい事情を把握していたのかは不明ですが、この『2001年…』も当時の「スウィンギング・ロンドン」の影響(ハーディ・エイミスがデザインしたコスチュームに顕著)を受けていたんだな、と思わせるエピソードですね...
これが戸田氏の訳だったらどんな「甘い」ものになっていたのやら・・・ ※P144より抜粋 Q『フルメタル・ジャケット』の字幕訳者を交代した理由は? そのマシュー・モディーンが主演した『フルメタル・ジャケット』の監督、スタンリー・キューブリックは究極の完璧主義者でした。自分の映画が公開されるときは、あらゆる国のポスターデザイン、宣伝コピーなどの宣材を全て、フィルムの現像の焼き上がりチェックまで、とにかく全てに目を通します。たとえば日本で印刷したポスターは色が気に入らないと言って、自分が住んでいて目の届くイギリスで印刷させていたほどです。 じつは『2001年宇宙の旅』(1968年)、『時計じかけのオレンジ』(1972年)など、過去の作品は大先輩の高瀬鎮夫さんが字幕をつけられていて、「キューブリックは字幕原稿の逆翻訳を要求するバカげたことをなさる大先生だ」とぼやいておられました。その高瀬さんが亡くなられ、私に回ってきたのが『フルメタル・ジャケット』だったのです。 ベトナム戦争たけなわの頃、アメリカ国内の陸軍基地(注:海兵隊基地の間違い)でしごき抜かれた新兵たちが、やがて地獄のようなベトナムの戦地へと送られて行く。これだけで言葉の汚さは想像つくでしょうが、とくに前半の鬼軍曹のしごき場面のすさまじいことといったら!日本人にはまったくないののしり文句を、新兵に浴びせまくるのです。たとえば、「Go to hell, you son of a bitch!」というセリフに「貴様など地獄へ堕ちろ!」という字幕をつけたとします。キューブリック監督の要求通り、その字幕を文字通り英語に直すと、「You - hell - drop」となり、英語の構文に整えるとなると「You drop down to hell !」のようなことになる。「Go to hell, you son of a bitch !」が「You drop down to hell !」になって戻ってきたら、キューブリック監督でんくても「違う!」と怒るでしょ。英語とフランス語のように語源を共有し(注:語源が語族という意図なら英語はゲルマン語族、フランス語はラテン語族で全く異なる)、いまも血縁関係を保っている言語同士ならともかく、まったく異質の言語の間で翻訳・逆翻訳をやって、元の文章に戻ることはありません。 「a son ...