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JY=矢追純一 SK=スタンリー・キューブリック JS=ジュリアン・シニア

JS –ええ、ミッシェルです。やあスタンリー、探したよ。今ちょっと話せるかい?ミスター矢追と今一緒に立っている。

SK – 準備できているかい?

JS –できているよ、ちょっと待って。

JY –はじめまして。私の名前は矢追純一です。いくつか質問してもよろしいでしょうか?

SK – はい、もちろんです。

JY – 最新作にホラーを選んだのはなぜですか?

SK – まず、直接お話しできないことをお詫びします。ジュリアンが説明したと思いますが、私はラボやサウンドスタジオを駆け回っていて、実は今は電話ボックスからあなたに電話しています(注:キューブリックはカメラ嫌いなので避けている)

JY – はい、分かりました。

SK – ホラーストーリーを選んだのはなぜですか・・・うーん、私がこれまでに制作したすべての映画について同じ質問をされたとしても、答えるのは難しいでしょう。私はたくさん本を読み、もちろん常に映画のストーリーを探しています。それはなぜ奥さんに恋をしたのかと聞かれるようなものなのです。好きなストーリーを読むと、映画の可能性が示唆されることがあります。このプロットはそのジャンルで最も巧妙で、最も興味深いものだと思いました。そして、それを読んだとき、私はこれを映画にしたいと思ったのです。

JY – なるほど。超能力についてはどう思いますか?

SK – つまり、本当にどう思っているのかということですか?

JY – はい。

SK – わかりませんが、オカルト体験をした人々の興味深い話や報告はたくさんあると思います。有名な天文学者が宇宙、つまり世界と宇宙における生命について語り、「私は宇宙に生命があると思うが、いずれにしてもそのような考えは驚異的だ」と言ったのと少し似ています。生命があったとしても、なかったとしても、ある意味驚異だと思います。

JY – ええと、何か超能力みたいなものをお持ちですか?

SK – もう一度言ってください。

JY - あなたには超能力がありますか?

SK – いいえ、あればいいのですが。

JY – (笑)あなたは未来を予測したり、役者の心を読んだり、異次元からイメージを考えたりする能力があるはずだとみんな言っていました

SK – そうですね、私には超能力があると言えればいいのですが(笑)。いえ、私はただ、できる限りのことをして、人々がそれを気に入ってくれることを願っているだけだと思います

JY – わかりました。UFOや空飛ぶ円盤についてはどう思いますか?別の惑星から来た宇宙人が地球を訪れていると思いますか?

SK – そうですね、私はまだ確信したことはありません。また、これはほとんど信じられない話の部類に入りますが、同時に、目撃情報の中には非常に異常なものもあり、目撃した人々は非常に尊敬に値する人物で、疑う余地がないように思われるので、信じたいとしか言​​えません。

JY – ええと、日本の皆さんはあなたの映画、特に『2001年宇宙の旅(スペーストラベル2001)』が大好きです。でも、最後のシーンの意味を知りたいという人がいます。あの、家の中でベッドに横たわっている老人のシーンですよね。その意味を教えていただけますか?

SK – そうですね、私はこの映画が公開されて以来、こういうことは避けるようにしていました。ただでさえアイデアをただ口にすると馬鹿げているように聞こえるのに、ドラマになるとさらに馬鹿げているように感じるからです。でも、やってみましょう。アイデアは、彼が神のような存在、つまり形も形もない純粋なエネルギーと知性を持つ生命体に連れ去られ、人間動物園とでも言うべき場所に彼を入れ、研究するというものでした。彼はその瞬間から一生をその部屋で過ごし、時間の感覚がなくなり、映画のようにただそうなるのです。そして、彼らはフランス建築の非常に不正確なレプリカであるこの部屋を意図的に選びました。不正確であるというのは、彼らが何がいいのかと思うかもしれない考えはあったものの、それがよくわからなかったということを示唆しているからです。それは、動物園で動物に自然な環境を与えるために、私たちが何をすべきかよくわからないのと同じです。いずれにせよ、世界中のあらゆる文化の多くの神話で起こるように、彼らが彼を殺し終えると、彼はある種の超人へと変身し、地球に送り返され、変身してある種のスーパーマンになります。そして、彼が戻ったときに何が起こるかは推測するしかありません。これは多くの神​​話のパターンです。そして、それが私たちが示唆しようとしていたことです。

JY – なるほど。それでは『シャイニング』についても同じ質問をしてもいいですか。 『シャイニング』の最後のシーンについて、写真が登場しましたが・・・

SK - ジャック・ニコルソンに気づくのに苦労しましたか?

JY - いいえ、私はそうじゃなかったです。

SK – それが何を意味するのかが分からないのですか?

JY – ええ。

SK – これは、彼 (ジャック) がホテルの歴史の一部であるという、ある種の邪悪な輪廻転生のサイクルを暗示するのです。男性用トイレで、彼は元管理人 (グレイディ)と話しています。元管理人の幽霊は彼にこう言いました。「あなたは管理人です。あなたはずっと管理人でした。私はずっとここにいたことを知っているはずです」 1 つは、単にこの邪悪な輪廻転生のある種の終わりのないサイクルを暗示しているだけで、うーん、また・・・まあ、それだけです。これは説明しない方がよいと思う類のものですが、あなたが尋ねたので説明しようとしました

JY - ありがとうございます。このインタビューの最後に、日本の視聴者にメッセージをいただけますか?

SK – どういう意味ですか?

JY – 日本の皆さんに何かメッセージはありますか?

SK – ご多幸をお祈り申し上げます。そして、えーと、あなたの質問がよく理解できません。

JY – (笑) ああ、すみません、えーと、わかりました。えーと・・・『シャイニング』について何か言うことはありますか?

SK – ああ、おっしゃる意味がわかりました。私は自分自身について話すのが好きではありません。なぜなら、観客が自分で発見する喜びこそが、良い映画を好きになる理由の多くだと考えているからです。私は、映画の内容や意味を、観る前に事前に説明されたり、読んだりしようとは思いません。観客が映画を見て、自分が見たものが偶然なのか、監督や脚本家が観客に知らせたかったのか疑問に思うときが最高だと思います。私は曖昧さや、観客が自分で発見できるようにすることが最も重要だと考えます。だからこそ、私はインタビューや映画の説明は避けるようにしています。映画は映画そのものが語るべきだと思います。

JY – よく分かりました、キューブリックさん、どうもありがとうございました。

SK – ええと、あなたが話したいのはそれだけですか?

JY – 素晴らしかったです、ありがとうございました。

SK – 出演できなかったことをお詫びします。私の娘があなたを助けていればいいのですが。

JY – ええ、あなたの娘さんには助けられています。どうもありがとう。



 1980年10月24日、日本テレビの番組『木曜スペシャル』の「火星移住計画」の取材でロンドンを訪れていたTVプロデューサーの矢追純一氏は、エルスツリー・スタジオで『シャイニング』のポストプロダクション(おそらく各国語版)の作業をしていたキューブリックの取材が「電話でならOK」と可能となり、急遽スタジオに向かいました。

 スタジオではワーナーのヨーロッパ広報担当であるジュリアン・シニアが出迎え、スタジオ内を案内(『シャイニング』のセットは撤去済み)した後、キューブリックの三女であるヴィヴィアンにバトンタッチ。『シャイニング』のポストプロダクションの作業内容やキューブリックの作業室、倉庫(『2001年宇宙の旅』で『人類の夜明け』のシークエンスで使用されたポジフィルムや、『バリー・リンドン』の衣装、そしてF値0.7レンズなど)を案内しましたが、元々「火災が起こるなど『シャイニング』の撮影現場で起こる超常現象について」が取材目的だった矢追氏は興味を示しませんでした。

 そしていよいよキューブリックとのインタビューとなるのですが、顔出しを嫌がるキューブリックは、スタジオ内にいるのにも関わらず電話でのインタビューとなりました(矢追氏は後にキューブリックとスタジオ内ですれ違ったそうだ)。そのインタビュー内容は矢追氏の本来の目的通り「UFO」や「超能力」がメインとなるのですが、そんな事情を知らないキューブリックはそんな「愚問」にも真摯に応じています。ただ、あまりにも「模範的な回答」だったためか、矢追氏的には期待外れに終わったことは、この動画の最後の矢追氏の表情から見て取れます。

 次に三女ヴィヴィアンとのインタビューが行われましたが、彼女は自分が感じた「超常現象」について延々と喋り続けたため、いささか矢追氏もウンザリ。ただ、彼女がこの後に陰謀論者のアラン・ジョーンズに傾倒する「片鱗」は伺うことができます。つまり「エキセントリックで落ち着きがない」のです。その後もインタビューは続き、二人の姉の話や両親の馴れ初め(『突撃』で知り合ったこと)などを語っています。最後は自身が撮影・監督を担当した『メイキング・ザ・シャイニング』について。重要なコメントは「シェリーがジャックに嫉妬していたことや、監督が一生懸命働いていたことを見せたかった」の部分です。そう言われればそんな意図は感じますが、言われなければちょっとわからないですね。

 動画はロンドン市内に戻り、『シャイニング』上映中の映画館を写して終わります。全編はこちらから視聴できます。

参考:
映画.com『キューブリックとなぜコンタクトできたのか? 矢追純一、奇跡のインタビューを述懐』/2019年10月25日
Real Sound『矢追純一、スタンリー・キューブリックとの思い出を語る 「愛想のよいいい人」』/2019年10月24日

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