【ブログ記事】『ROOM 237』をネタバレさせ、そのくだらない正体を暴く

 当ブログで『ROOM 237(ルーム 237)』を散々「金儲け主義者のデタラメ陰謀論映画」とこき下ろしていますが、何故観てもいないのにそう断言できるのか、それを説明したいと思います。

 管理人が当ブログの前身であるキューブリックのファンサイト『CataComB』を立ち上げた1998年、『ROOM 237』という『シャイニング』の海外のファンサイトがあるのに気が付きました。内容はマニアとおぼしき連中が、よってたかって『シャイニング』の映像を解析、さまざなま矛盾点や意匠からメッセージをこじつけ、それをネットで披露しあって遊ぶ、という趣旨のサイトだったと記憶しています。

 『CataComB』で海外の良質なサイトを紹介するリンクページを設けていた関係上、こういった海外のサイトの内容には注意を払っていました。有益な情報が集まるサイトならともかく、こういった「隠謀論ごっこ」で遊ぶサイトは無益だと判断し、リンクページには載せませんでした。(ある時期は載せていたかも知れません。なにせ昔の話なので記憶が定かじゃないですが、手元に残っている最終ログには掲載がありませんでした。)つまり公開される『ROOM 237』とは、元々はマニアがネット上で『シャイニング』をネタに隠謀論を披露し合うサイトだったのです。もちろんそれに根拠や証拠など必要ありません。本人たちもそれを承知の上での、単なるお遊びですから。

 では何故そんなデタラメなサイトが映画化されたのでしょう。これは推察ですが、原因は例の『オペレーション・ルーン』にあると思います。フランスのTV局が製作し、2003年のエープリールフールに放送したこのジョーク番組は大きな話題になり、世界中でオンエアされました。日本でも『ビートたけしの世界はこうしてダマされた!?』で短縮版ですが取り上げられています。この成功を目の当たりにした出資者が二匹目のどじょうを狙ってネタ探しをしたであろう事は想像に難くありません。その出資者が目をつけたのがネットで隠謀論ごっこをしていた『ROOM 237』だった、という訳です。

 しかも『オペレーション…』には大きな「免罪符」が備わっています。それはキューブリックの遺族、妻のクリスティアーヌと義弟のヤン・ハーランが出演し、この隠謀論に加担してしまっているのです。(もちろん最後にネタばらししていますが)つまり、キューブリック作品をネタにした陰謀論で何者かが金を稼いでも、この番組に出演してしまっている以上、本来キューブリックの遺志を尊重し、そういった雑音から作品を守るべき立場である筈のクリスティアーヌもヤン・ハーランも何も言えない、という事になります。さすがにクリスティアーヌもヤンもこのままではまずいと思ったのか、『シャイニング』製作の当事者のインタビューを集めた動画を制作、無料で公開しています。しかし、こんな事をしなければならないのなら最初から『オペレーション…』出演のオファーを断り、『ROOM 237』に対し断固たる措置を講ずべきだった、というのは言うまでもありません。

 そういった事情を知り尽くした上で、この映画『ROOM 237』は製作されたと考えています。それに彼らが使う映像のソースが、何故BDやDVDではなくビデオなのか、これでお分かりいただけたかと思います。そうです、1998年にはBDはおろかDVDさえも黎明期で全く普及していませんでした。『シャイニング』の映像を分析するにはビデオを使うしかなかったのです。そういう理由です。

 個人的には、ネット上で隠謀論で遊んでいる分には、まあしょうがないかなと思っています。しかし、それを映画にして金を稼ぐというのは、キューブリックの名声を利用した詐欺に近い行為であり、キューブリックを愚弄していると言ってもいいでしょう。今後、こういった陰謀論映画が製作されないよう、この『ROOM 237』は興行的に失敗しなければなりません。現にネット上では『アイズ…』をネタに隠謀論をばらまくサイトが暗躍しています。こういったハイエナみたいな連中からキューブリック作品を守るのもファンである我々の勤めだ、そう考えています。だから金を払ってまで映画を観にいって、連中に「これは儲かる」と思わせては駄目なのです。だから「金儲け主義者のゴミ映画」と糾弾しているのです。

 もうすでに『オペレーション…』、『ROOM 237』と隠謀論ごっこで荒稼ぎした連中が現れました。次の被害に遭うのは『アイズ…』でしょうか? それとも別の作品?そんな連中に加担してキューブリック作品を貶めたいのなら、どうぞご自由に金を払って観に行ってください。ブログで宣伝してください。ツイートしてください。でもそんな事する輩にファンだとか、マニアとか自称して欲しくはありませんし、その資格などあろう筈がありません。

 キューブリックは作品中に描かれた事象について、何かにつけて意味を無理矢理見いだそうとする連中を、例の鋭い目つきで睨みつけて次のように批判しています。

「それはむしろ詮索好きの見当違いだ」

(引用:ヴィンセント・ロブロット著『映画監督 スタンリー・キューブリック』)

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