【ブログ記事】Shelley Duvall ArchiveさんがX（旧Twitter）にポストした、シェリー・デュバルが『シャイニング』によって精神疾患を患ったというデマに対する「正しい説明」
It seems to be of popular internet belief that Shelley Duvall was traumatized for life because of Stanley Kubrick/The Shining. Here’s a thread, by me a Shelley connoisseur, explaining why her life and career was NOT ruined.
Shelley was intentionally cast by Kubrick because he liked her performance in 3 Women, 1977. He was drawn to the way she cried – and crying surely came in handy for Shining. He sent Shelley King’s book to read first as he didn’t have a script yet.
Shelley is a professional actress (with nearly 10 years under her belt at the start of filming) and she knew what she was signing up for, which was a horror movie. It’s not like she was thrown into it and she was excited to work with Kubrick.
Shelley first met Kubrick in October 1977 at the old Grosvenor Hotel a few months after she was cast in The Shining (May 1977). She describes liking him even upon the first meeting.
“I liked his [Kubrick] humor. I felt very good the first week of shooting. I wasn’t nervous at all. I was just excited about the beginning of the film.” (Shelley Duvall in a 1979 interview with Leon Vitali – my notes from my Kubrick Archives visit)
To admit, The Shining was stressful on Shelley and several stressor did contribute to her being ill on set. Filming in London took 13 months, she was away from home, and her boyfriend Paul Simon broke up with her at the airport as she was departing for this role of a lifetime.
This was acknowledged in Vivian Kubrick’s documentary “The Making of The Shining” as seen in the previous video and Shelley has discussed this grueling filming process many times. But that’s not say that “The Shining ruined her mind”
Shelley Duvall has continuously praised Kubrick and values his lessons. That’s a true actress right there – respecting someone’s craft and learning from it. It’s condescending when people claim that he ruined her when in reality she speaks very highly of him. (2001 interview)
“What an experience. I learned so much from that man [Kubrick]. I tend to sound like a fool when I talk about him, but I was so impressed” (LA Times, May 1979)
Shelley has acknowledged that their differences was a way to improve her performance (which is seen in Vivian Kubrick’s doc). And to be fair Shelley adequately defends herself from Kubrick here. It’s not like she was withering at the sight of him.
“If it hadn’t been for the volley of ideas and butting heads together it wouldn’t have come out as good as it did. At the end of the day we knew that it was for the purpose of enhancing the performance. There were no grudges.” (Shelley in a 1979 interview with Leon Vitali)
Despite how grueling the set was and filming six days a week and up to 16 hour days, Shelley & the cast/crew still found moments to be intimate and playful with each other. Shelley particularly loved playing chess with Kubrick.
In a 2021 interview with The Hollywood Reporter, Shelley Duvall said Kubrick “was very warm and friendly to me. He spent a lot of time with Jack and me. He just wanted to sit down and talk for hours while the crew waited.”
Since Shining was released, the claim the staircase scene was filmed 127 times has been tossed around and even Shelley has mentioned this number in interviews from the 80s. This fact is often used to argue that she was pushed to the breaking point destroying her.
Recently, this number has been debunked by Lee Unkrich’s new book on The Shining. It’s hard to know for certain the amount of takes, but Shelley still took it in stride. The Shining was tough, BUT Shelley was tougher.
(Screenshots from 2 of Lee’s interviews about the book)
Importantly, Shelley’s previous work was mostly with Robert Altman who was famous for very few takes, which would often be adlibbed by his actors. Shelley wasn’t accustomed to Kubrick’s obsessive takes and perfection. Before him, the most takes she had to do was ≈ 15.
People often claim that Shelley’s life after Shining was never the same and she was traumatized for life, but it’s dismissive and infantilizing to think that from ONE movie and this is what irks me the most. We need more appreciation of her career post-Shining.
Shelley had a prolific career as a producer in the 80s/90s with her award-winning series Faerie Tale Theatre, she had her own production company specializing in children’s TV, and still used her acting chops in movies like Popeye, Time Bandits, Portrait of a Lady, among others.
I’ve always hated the framing of Shelley’s life around Shining as if she’s only a victim because all the “arm chair investigators” and film bros don’t realize that one can just get old and simply retire! Shelley’s early departure ≠ her experience on set of a movie from 1980.
Shelley unfortunately has struggles with her mental health, but that has nothing to do with Shining. In all my very recent conversations with her, she still speaks highly of Shining and how she loved Kubrick. She still holds NO grudges.
I think this is why misinfo about her experience on set is still rampant. People see her public battles with mental illness and Shelley simply aging and suddenly people think it’s connected to Shining because they were led to think that way from internet rumors.
In conclusion, if you’re reading this and your only exposure to Shelley Duvall IS from Shining, you must see her work with Robert Altman, her trailblazing cable shows, and appreciate her contributions to TV and film. She is so extraordinary and I don’t people to miss out.
シェリー・デュバルはスタンリー・キューブリック監督作『シャイニング』のせいで心に傷を負い、人生を棒に振ったという説がネット上で流布しているようです。シェリー愛好家の私が、彼女の人生とキャリアが台無しにならなかった理由を説明するスレッドを紹介します。
シェリーがキューブリックに意図的に起用されたのは、1977年の『三人の女』での彼女の演技が気に入ったからです。彼は彼女の泣き方に惹かれ、『シャイニング』では確かにその泣き方が役に立ちました。脚本がまだなかったため、彼はまずシェリーにスティーブン・キングの本を送って読ませました。
シェリーはプロの女優であり（撮影開始時点で10年近いキャリアを持つ）、ホラー映画という契約内容を理解していました。彼女は放り込まれたわけではなく、キューブリックと仕事ができることに興奮していたのです。
シェリーがキューブリックに初めて会ったのは、『シャイニング』（1977年5月）に出演が決まって数ヵ月後の1977年10月、旧グロスヴェナー・ホテルでした。彼女は初対面でも彼を気に入ったと語っています。
「彼（キューブリック）のユーモアが好きでした。撮影の最初の週はとてもいい気分だったわ。全然緊張しなかった。映画の始まりにただ興奮していたの」(シェリー・デュバル、1979年のレオン・ヴィタリとのインタビューより。）
『シャイニング』はシェリーにとってストレスの多い作品であり、撮影中に体調を崩す要因にもなりました。ロンドンでの撮影には13ヶ月を要し、彼女は家を離れ、ボーイフレンドのポール・サイモンとは、一生に一度のこの役のためにアメリカから出発する際、空港で別れました。
このことは、前のビデオで見たヴィヴィアン・キューブリックのドキュメンタリー『メイキング・オブ・シャイニング』でも認められているし、シェリーもこの過酷な撮影プロセスについて何度も語っています。しかし、『シャイニング』が彼女の心をダメにしたとは言っていません。
シェリー・デュバルはキューブリックを称賛し続け、彼の教えを大切にしています。それはまさに真の女優であり、誰かの技術を尊重し、そこから学ぶということです。実際、彼女はキューブリックをとても高く評価しています。（2001年のインタビュー）
「なんという経験でしょう。あの人（キューブリック）から多くのことを学んだわ。彼のことを話すとバカみたいに思われがちだけど、とても感銘を受けたわ」（LAタイムズ1979年5月号）
シェリーは、2人の違いが彼女の演技を向上させる方法であったことを認めています（これはヴィヴィアン・キューブリックのドキュメントに見られる）。そして公平を期すために、シェリーはここでキューブリックから十分に自己主張しています。彼の姿を見て怯えていたわけではないのです。
「もしアイデアのぶつかり合いがなかったら、これほど良い作品にはならなかったでしょう。一日の終わりに、私たちはそれがパフォーマンスを向上させるためであることを知っていました。恨みはありませんでした」（1979年のレオン・ヴィタリとのインタビューにおけるシェリー）
撮影現場がいかに過酷で、週6日、1日16時間にも及ぶ撮影があったにもかかわらず、シェリーとキャストやクルーは親密で遊び心のある時間をお互いに見つけていました。シェリーは特にキューブリックとチェスをするのが好きでした。
2021年の『ハリウッド・レポーター』紙のインタビューで、シェリー・デュバルはキューブリックについて「とても温かく、親しみやすい人でした。彼はジャックと私に多くの時間を費やしてくれました。クルーが待っている間も、彼はただ座って何時間も話したがっていました」と語りました。
『シャイニング』が公開されて以降、階段のシーンは127回撮影されたという主張がまことしやかに語られ、シェリーも80年代のインタビューでこの数字に言及しています。この事実は、彼女が壊れるほど追い詰められたと主張するためによく使われます。
最近、リー・アンクリッチの『シャイニング』に関する新著によって、この数字は否定されました。『シャイニング』の正確な撮影回数を確認するのは難しいですが、それでもシェリーはそれを受け止めていました。『シャイニング』はタフでしたが、シェリーはそれ以上にタフでした。
重要なのは、シェリーの『シャイニング』以前の仕事はほとんどロバート・アルトマンとのものだったということです。ロバート・アルトマンはテイク数が非常に少ないことで有名で、俳優がアドリブを入れることが多かった。シェリーはキューブリックの執拗なテイクと完璧さには慣れていませんでした。キューブリック監督以前は、15テイクが限界でした。
よく、『シャイニング』以降のシェリーの人生は決して同じにはならなかった。彼女は生涯トラウマを負った、と主張する人がいますが、たった1本の映画からそう考えるのは軽率かつ稚拙であり、私が最も腹立たしいのはこの点です。『シャイニング』以降の彼女のキャリアをもっと評価する必要があります。
シェリーは80年代から90年代にかけて、受賞歴のあるシリーズ『フェアリー・テイル・シアター』でプロデューサーとして多忙なキャリアを積み、子供向けTVを専門とする自身の制作会社を持ち、『ポパイ』『バンデットQ』『ある貴婦人の肖像』などの映画で演技力を発揮しました。
『シャイニング』を軸にしたシェリーの人生を、あたかも彼女が被害者であるかのように描くのは、「安楽椅子探偵（注：椅子に座ったままで探偵を気取る人）」と映画マニアたちが、人はただ年をとって引退するものだということに気づいていないからです！シェリーの早すぎる引退と、1980年の映画の撮影現場での経験はイコールではないのです。
シェリーは現在不幸にも精神衛生上の問題を抱えていますが、それは『シャイニング』とは何の関係もありません。彼女とのごく最近の会話の中で、彼女はいまだに『シャイニング』を高く評価し、いかにキューブリックを愛していたかを語っています。彼女は今でも恨んでいません。
これが、撮影現場での彼女の経験に関する誤った情報がいまだに横行している理由だと思います。彼女が精神疾患と闘い、シェリーが単に年をとっただけなのに、人々は突然、それが『シャイニング』と関係していると考えるのです。
結論として、もしあなたがこれを読んでいて、『シャイニング』のシェリー・デュバルしか知らないのなら、ロバート・アルトマンとの仕事、先駆的なケーブルテレビ番組、そしてテレビと映画への彼女の貢献を評価しなければなりません。彼女の素晴らしさを見逃すわけにはいかないのです。
（以下は投稿者の告知のため略）
（引用：X Shelley Duvall Archive（@shelleyduvallxo）のスレッド）
残念ながら「シェリー・デュバルが現在精神的な健康を害している原因が『シャイニング』でありキューブリックである」という言説は、ここ日本でも多くの人々が信じ込んでしまっているデマです。そのデマに対し、SNS上で明確に反論し、事実を時系列に沿って説明しているシェリー・デュバルのファン、Shelley Duvall Archiveさんのスレッドをここに転載・邦訳いたしました。
Shelley Duvall Archiveさんは、シェリーと個人的な親交があり、彼女（若い女性であることに驚かれるかも）の主張には揺るぎない信念と確信があるように思われます。また、それらは私が長い間このブログで主張してきた論旨との齟齬はなく、彼女がこのスレッドで挙げたソースも、それに関する解釈も全く同意するものです。
もし異なる点があるとすれば反論の動機で、私はいわれのないデマからキューブリックの名誉を守るためであり、彼女はシェリーの『シャイニング』以降のキャリア軽視に対する反発であるという点です。まあこれはそれぞれが「ファン」とする対象が異なるので、当然といえば当然ですね。ただし私はキューブリックがシェリーに対し、現在なら「パワハラ」と言われかねないような精神的圧力をかけていたことは認めます。ですがシェリーはそれを一方的に耐えるだけでなく、激しく反論するなど気の強さも持ち合わせていました。
とにもかくにも、もしシェリーの現在の精神疾患の原因が『シャイニング』であり、キューブリックからの圧力であるとするのなら、『シャイニング』以降、シェリーが約20年間もエンタメ業界で活躍できた理由を説明しなければなりません。また、その間に行われた、ごく普通に振る舞うシェリーのインタビュー姿に対しても、説得力のある説を唱えなかればなりません。もしそれが「時間が経って表面化する精神疾患もあるんじゃね？」という小並感程度のものなら、小学生からやり直すことをおすすめいたします。
