【関連記事】巨匠スタンリー・キューブリック監督の名作ホラー映画「シャイニング」に込められたメッセージとは?

 スティーヴン・キング氏の同名小説をスタンリー・キューブリック監督が映画化した「シャイニング」は、冬期は閉鎖されるホテルの管理人をすることになった男が狂気にとりつかれ、妻と娘を惨殺しようとするというホラー映画です。そんなシャイニングに込められたメッセージについて解説したムービーが、YouTubeで公開されています。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:Gigazine/2018年8月26日    



 実は管理人が解説しいている「『シャイニング』のオーバールック・ホテルに巣食う悪霊の正体はネイティブ・アメリカンの怨霊」という指摘は管理人独自の発想ではなく、2000年頃から海外の『シャイニング』解析サイトでは指摘されていたものです(当時はあまり目立った論ではなく、日本でこの論を紹介している評論家や解説者は一人もいなかった)。管理人が独自に指摘してるのは「ジャックが家族を襲う武器が斧であるのは、斧がネイティブ・アメリカンの象徴であるから」とか、「ジャックが禁酒を破る酒がジャック・ダニエルであるのは、バーボンがフロンティア・スピリッツ、すなわちアメリカ大陸侵略を象徴するお酒だから」とか、「ジャックやグレイディがハロランをニガーと呼ぶのは根本に人種差別的な傾向があるから」などのいくつかの補足事項で、これらを加え、整理し、「ではなぜキューブリックはこの設定を『シャイニング』に採り入れたのか?」を解説したのが当該の記事になります。

 上記の解説動画では「暴力の歴史と連鎖」というテーマに重点を置いていますが、このテーマは実は原作のテーマです。原作ではオーバールック・ホテルで繰り返されてきた「暴力の歴史と連鎖」がはっきりと説明され(続編『ドクター・スリープ』もそれがテーマのひとつ)、ダニーがそれを幻視する(マフィアが惨殺された部屋の血の跡をダニーが見る)シーンも存在します。一方で「ネイティブ・アメリカンを虐げてきたアメリカの負の歴史」というテーマは原作にはありません。原作は1945年にダーウェントがホテルを買収・再開した時点からの物語で(TVドラマ版『シャイニング』のパーティーシーンがポップ・ミュージックばかりなのはそのため)、そのダーウェントも幽霊として登場しています。

 しかしキューブリックはラストシーン(「【考察・検証】『シャイニング』のラストシーンの意味を考察する」を参照)に示されているように、1921年というもっと古い年代、つまりホテルが建設された時代まで遡っています。それは「ホテルはネイティブ・アメリカンの墓地の上に建てられた」というセリフが示す通り(原作にこのセリフはない)、キューブリックが「ネイティブ・アメリカンを虐げてきたアメリカの負の歴史」という要素を付け加え、原作にある1945年以降の「暴力の歴史と連鎖」(マフィアの抗争など)を重要視しなかったためでしょう。

 この動画に限らず、様々な解釈がされているキューブリック版『シャイニング』ですが、実はキューブリックは一切の説明をスタッフにさえ行なっていません。キューブリックが目指したのは「どうすれば最怖のホラー映画が作れるか」であって、その一要素としてこの「暴力の歴史と連鎖」であったり、「ネイティブ・アメリカンを虐げてきたアメリカの負の歴史」があったに過ぎないのだと思います。つまり「観客が存分に怖がってくれさえすればそれでいい」のでしょう。事実、キューブリックはラストの病院の一連のシークエンスを「映画のクライマックスで観客の興奮ぶりを初めて目の当たりにして、そのシーンは必要ないと思った」としてカットしています。

 「どのジャンルも一度は作られている。重要なのはそれよりもいい映画を作ることだ」

キューブリックは繰り返しそう語っています。キューブリックがそれぞれのジャンルで名だたる名作・傑作を遺しているのは、「そのジャンルの最高傑作を作ってみせる」という野心と、その結果なのだと、私は考えています。

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