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【インスパイア】『時計じかけのオレンジ』と「アイドル」に親和性?『時計じかけのオレンジ』にインスパイアされた女性アイドルのPVやMVのまとめ

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平手友梨奈『かけがえのない世界』のMVではこんな「過激な引用」も。ご本人が自覚しているか否かはわかりませんが・・・。  映画『時計じかけのオレンジ』は、破壊的で攻撃的、性衝動などの過激な描写、管理社会とそのアンチテーゼというメッセージ性で、古今東西の数多くのアーティストにインスパイアを与え、オマージュを捧げられ、パロディにされてきました。それは映画の世界だけにとどまらず、アートやファッション、小説や絵画、さらにマンガやアニメなどのサブカル分野まで及んでいます。  特に音楽シーンに与えた影響は大きく、ロック、パンク、ニューウェイブ、ハードロック、ヘビーメタル、スラッシュメタル、ヒップホップなど、いわゆる「不良系」の音楽にはよく引用されています。またその延長線上で、露骨なセクシャリズムや挑発・扇情をパブリック・イメージにした女性アーティスト、例えばマドンナ、リアーナ、レディガガ、かつてティーンのアイドルだったカイリー・ミノーグまでその影響は見て取れます。  ところが近年、「清純」「純潔」「処女性」を旨とする日本の女性アイドルが『時計じかけのオレンジ』をモチーフに採り入れる、ということが散見されるようになりました。言うまでもないことですが、これらアイドルの清廉・清純な世界観と、『時計じかけのオレンジ』の世界観は真逆、対極と言っていいと思います。それはもちろん仕掛ける側の「狙い」であることは明白なのですが、まさかそんな挑戦的な方法論が用いられることなど全く予想していなかったので、いささか驚いています。(ただ単に制作側の「好み」だけなのかもしれませんが・・・笑)  この記事ではそんな日本の女性アイドルが『時計じかけのオレンジ』をモチーフに採用したPVやMVを、時系列でご紹介いたします。 チャオ・ベッラ・チンクエッティ『何度も 何度も…』(2017年)  女性アイドルグループ、チャオ・ベッラ・チンクエッティの2017年12月発売の配信限定シングル『何度も 何度も…』の衣装とMVの世界観が、『時計…』を彷彿とさせるものになっています。残念ながら2018年8月をもって活動停止を決定、解散しました。 欅坂46『Student Dance(Short Ver.)』(2018年)  2018年8月発売のシングル『アンビバレント』のカップリング曲。歌詞を読むと「学校という管理社会に閉じ込め...

【ブログ記事】日本テレビ『行列のできる相談所』 「日本人が好きな映画100!」で『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』がランクイン

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 日本テレビで12月19日(日)に放送された番組『行列のできる相談所』「日本人が好きな映画100」において、55位に『2001年宇宙の旅』、24位に『時計じかけのオレンジ』にランクインしました。このランキングは「ぴあ」「フィルマークス」「みんなのランキング」「COCO」の4つの映画評価サイトを元に番組が独自に集計したもの。なので、ある程度客観性は担保されている(視聴率欲しさに露骨な操作はされていない)と思っていいでしょう。  公開年や「難解」と言われがちなキューブリック作品にとってこれは驚異的です。映画ファンの間ではよく名前が挙がるオーソン・ウェルズもチャップリンもヒッチコックも小津安二郎もランクインしていません。しかも「日本人が好きな映画」だということを考えれば、キューブリックのこの2作品は、ある程度一般的な知名度と評価を獲得していると言えると思います。  ちなみにトップ100は以下の通り。基本的には洋画中心ですが、アニメ作品やマーベル作品、ディズニー系が意外に少ない。あれだけ騒がれている韓国勢も少数派。エンタメ系作品が大多数を占めていますが社会派系作品もチラホラ。金曜ロードショーとのコラボなので金ロー系が厚遇されている気がしますがそこはご愛嬌でしょう(笑。  番組公式紹介ページは こちら 。 ショーシャンクの空に バック・トゥ・ザ・フューチャー ダークナイト レオン インセプション ゴッドファーザー ライフ・イズ・ビューティフル 天空の城ラピュタ ニュー・シネマ・パラダイス ターミネーター2 最強のふたり パルプ・フィクション フォレスト・ガンプ/一期一会 インターステラー プラダを着た悪魔 スタンド・バイ・ミー バタフライ・エフェクト タイタニック トイ・ストーリー3 きっと、うまくいく レ・ミゼラブル マトリックス アベンジャーズ/エンドゲーム 時計じかけのオレンジ スティング シザーハンズ ユージュアル・サスペクツ 風の谷のナウシカ もののけ姫 グラン・トリノ ボヘミアン・ラプソディ ロード・オブ・ザ・リング 羊たちの沈黙 ファイト・クラブ グレイテスト・ショーマン パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち キック・アス となりのトトロ セブン この世界の片隅に ローマの休日 スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望 おくりびと リメンバー・ミー...

【考察・検証】アルトゥル・シュニッツラーの原作小説『夢小説』と『アイズ ワイド シャット』を比較して、ラストシーンの意味を考察・検証する

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顔色一つ変えず「ファック」と言い放つアリス(ニコール・キッドマン)  ●小説『ドリーム・ノヴェル(夢小説)』版 場所:夫婦の寝室 ・・・遂に―彼は彼女の横に身を伸ばして―彼女の上に屈みこみ、今はそこにも朝が現れてくるように思われる大きな明るい眼をつけた彼女の動かない顔を見ながら、懐疑的ではあるが同時に希望に満ちた 口調で、「僕たちはどうすればいいだろうか。アルベルティーネ」と問いかけた。  彼女は微笑した。そして、ちょっとためらってから、「すべての冒険―現実の冒険も夢の冒険も無事に切り抜けたことを運命に感謝すること、だと思いますわ」と答えた。 「無事に切り抜けたと云うが、全く確かだと思うかい」と彼は尋ねた。 「確かだと思いますわ。一夜の現実は、いえ、人間の一生の現実でさえ、現実であると同時に また人間の心の奥底の真実を意味するということにはならないような気がしますもの。」 「そして、どんな夢も」と云いながら彼はかすかな溜息をついた。「完全にただの夢だけというようなものではないね。」  彼女は彼の頭を両手に挟んで、やさしく自分の胸に寝かせた。「これで、わたしたちはすっかり目が覚めましたわね」と彼女は云った―「このさき長く。」  永久に、と彼は云い添えようとしたが、彼がその言葉を云い終らないうちに、彼女は彼の唇に指を一本充てがって、ひとり言でも云うように、「さきのことは尋ねないこと」と囁いた。  そこで、彼らは二人とも黙って、どちらもすこしまどろみながら、夢は見ないで、近く寄り添って横になっていたが―やがて、毎朝の例で七時に寝室の戸がノックされる。街路から聞き慣れたざわめきが伝わってくる。窓掛の隙間から勝ち誇った陽の光がさしこんでくる。隣室から子供の明るい笑い声が聞こえ、新しい一日がはじまるのであった。 (出典:『アイズ ワイド シャット』角川文庫) ●映画『アイズ ワイド シャット』版 場所:おもちゃ屋 「アリス・・・僕たちどうする?」 「どうする?・・・」 「どうって分からない」 「多分・・・きっとわたしたち、感謝すべきなのよ」 「何とか無事にやり過ごすことができた・・・危険な冒険を・・・」 「それが事実であれ、たとえ夢であれよ」 「本当に、そう思うかい?」 「本当に?」 「わたし・・・わたしに分かるのはひと夜の事なんて、まして生涯のどんな事だって、真実かど...

【ブログ記事】1991年10月4日にやっと発売された『時計じかけのオレンジ』のビデオソフトについてと、それまでは非合法な方法で非合法なブツとともに摂取されていたという「裏事情」

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肌色のボカシで修正された『時計じかけのオレンジ』の修正版ビデオソフト  当時多くのキューブリックファンが待ち望んだ『時計じかけのオレンジ』のビデオ化ですが、日本でそれが実現したのは1991年10月4日でした。価格は16,000円(税抜)。安い買い物ではなかったですが、発売開始と同時に買いに走ったファンも多かったと思います。訳は当時キューブリックの信頼を得ていた原田眞人氏が担当。ただ、残念ながら当時の社会情勢から無修正というわけにはいかず、肌色のボカシと一部モザイク処理がされていました。そして1997年になって、やっとニューマスターの「無修正版」が発売になり、これ以降DVD、BD、UHDまでこのフォーマットで定着しています。  当時の「性表現事情」を知らないとなかなか理解できないのですが、 wikiの「ヘアヌード」 の項目によると1991年頃に事実上の「ヘア(陰毛)解禁」となりましたが、それが社会的に認知され、定着するのはインターネットの普及が始まった1995年頃だそうです。これは管理人の記憶とも一致しますね。ですので1997年に無修正版がリリースされたというのはごく自然な流れだと言えると思います。  劇場で『時計じかけのオレンジ』が公開されたのは1972年4月29日、リバイバル公開が1979年8月11日。その後名画座などで公開(管理人は1985年頃に大阪の大毎地下劇場で鑑賞)されましたが、その機会を逃すと観賞できませんでした。アメリカではビデオソフト(もちろん無修正)が1980年に発売になっていますので、それを輸入するという方法もあったのですが、当時、無修正は税関で没収の対象でした。ですので、ケースは別の映画で中のテープは『時計…』という方法で税関逃れをする、ということもあったそうです。  それから、これはあまり褒められた話ではないのですが、事実として申し上げますと(もう時効だと思いますので)、当時一部の若者の間で『時計…』はドラッグ(主にマリファナ)を摂取しながら観る映画という認識がありました(同様の映画にピンクフロイドの『ザ・ウォール』、ビートルズの『イエローサブマリン』など)。管理人が実際にその現場を知っているか否かはご想像にお任せいたしますが、入手が難しかった海賊版『時計…』は特にその対象になりやすく、「アレが手に入ったから今度あそこで鑑賞会があるみたいよ」...

【関連記事】マイナビニュース会員による「宇宙が舞台のおすすめ映画20選」のアンケート結果が驚きの順位

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2001: A Space Odyssey(IMDb) 宇宙が舞台のおすすめ映画20選 - ラストフロンティアでのロマンが満載 民間の有人飛行も行われるようになったものの、まだまだ宇宙には解き明かされない謎が多く残されています。最後のフロンティアとして、宇宙は古くから多くの人々を魅了してきました。 そんな魅力的な舞台である宇宙は、映画のテーマにも最適。宇宙を舞台にした映画は数多く制作されています。そのジャンルも、スペースオペラから人間ドラマ、アクション、ホラー、コメディと多岐にわたり、名作も多数存在しています。 今回は、マイナビニュース会員の男女516名にアンケートを実施し、おすすめの宇宙をテーマにした映画について聞いてみました。 Q.あなたが人におすすめしたいと思った宇宙をテーマとした映画はありますか? 『はい』(62.8%) 『いいえ』(37.2%) 調査の結果、約3分の2にあたる63%近くの人がおすすめしたい宇宙映画があると回答しました。さらに、おすすめの宇宙映画を教えてもらったところランキングは以下の通りになりました。 〈中略〉 5位『2001年宇宙の旅』  スタンリー・キューブリックによる、華麗なる映像で描かれた宇宙叙事詩。猿人の進化から、人類の宇宙への旅、人工知能の暴走、木星でのモノリスとの邂逅などが先鋭的な映像で描かれる。まさにSF映画の金字塔という呼び名にふさわしい一作。 出演/ケア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルベスター、ダニエル・リクター 監督/スタンリー・キューブリック 公開年/1968年 ・「AIの暴走がこれからの世界では実際に起こりそうな感じがして、一種の警告のような感じがする」(66歳男性/その他/その他・専業主婦等) ・「未来を想像してわくわくした」(59歳男性/輸送用機器(自動車含む)/営業関連) ・「スケールやテーマが壮大」(57歳男性/その他/その他・専業主婦等) 〈以下略〉 (引用: マイナビニュース/2021年11月22日 )  うーん、なかなかオールドSFな順位でちょっとした驚きです。マイナビニュースとは就活・転職サイト「マイナビ」が運営するニュースサービスですが、回答しているのは「就活中」ではなく「転職中」の層が多いんでしょうね。回答例を見ると中年~シニア層ばかりです。おそらくこの結果はサイト運営者も予...

【パロディ】洋楽パロで有名なNHKの番組『ハッチポッチステーション』の再編集版『2001年(2004年)夢中の旅』のオープニングがやっぱり『2001年宇宙の旅』だった件

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 ある方面では非常に有名な、NHKの子供向け番組『ハッチポッチステーション』。動画説明文によると、2001年の元旦に放送された再編集版が2004年に再放送されたものだそうです。だから2004年という中途半端な数字なのに『2001年宇宙の旅』のパロディがオープニングなんですね。  2018年に公開され、大ヒットしたクイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』の影響もあってか、この『ハッチポッチステーション』の洋楽パロ(GUEENの『犬のおまわりさん』)が再び脚光を浴びたのも記憶に新しいですが、そもそもこの再編集版自体が「エド・サリバン・ショー」のパロディだし、「ヒッチコック劇場」も飛び出すわで完全にお子さまなんか相手にしていません(笑。  この番組で八面六臂の大活躍を見せているグッチ裕三さんですが、ギターはちゃんと弾けないようです(が、それっぽく頑張っています)。ですが、そういう点は差し引いても「童謡×洋楽」のマッシュアップは現在聴いても完成度が高い。個人的には前述した『犬のおまわりさん』もそうですが『あのこはだレイラ』『母さんのうた』『いっしゅうかん』、この動画にはありませんが『おうまの親子』あたりが好み。でも、『山口さんちのツトムくん』(What's going on→いつが都合いいの?)の衝撃度には及ばないかも。世界No.1クラスの大名曲をこんな風にしてしまう大暴挙なんて、いったい誰が思いついたのでしょう?(笑。それらパロディの密度に比べると、オープニングの『2001年…』のパロディはストレートすぎてイマイチですね。まあ、どちらにしても当時のお子さまはポカーンだったと思います。

【インタビュー】『バリー・リンドン』の撮影監督だったジョン・オルコットのインタビュー[その2:カメラ、照明、ズーム、トラッキングショット、蝋燭の光のみでの撮影について]

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酔いつぶれた将校の役で出演しているジョン・オルコット(左) ( 「その1」 より) ーアメリカン・シネマトグラファー誌:このカメラ(アリフレックス35BL)の印象を教えてください。 ジョン・オルコット:素晴らしいカメラだと思います。私にとってはカメラマンのためのカメラですが、それは主に光学システムが非常に優れているからです。光学システムの中には、他のシステムよりもはるかに誇張されたトンネル効果(映像の周辺暗く中心部が明るい映像)が得られるものがあります。先日、映画館にいるような気分になれるという理由で、長いトンネル効果を好む人物に出会ったことがあります。個人的には実際の映像で隅々まで見える方が好きですね。それができるのはアリフレックス35BLだけだと思います。このカメラのもう一つの特徴は、文字通り指先で絞りのコントロールができることです。一般的なカメラよりもはるかに大きな目盛りがついているので、細かく調整することができます。この機能は、スタンリー・キューブリックと仕事をするときには特に重要です。彼は、太陽が沈もうが沈むまいが撮影を続けたがります。『バリー・リンドン』では、バリーが幼い息子に馬を買い与えるシーンで、太陽が出たり入ったりしていました。これに対応しなければなりません。太陽が入ってきたからカットする、というような古い考え方はもう通用しません。 アリフレックス35BLで撮影するキューブリック ーその代わり、撮影中に絞りの開き具合を変えて乗り切ろうとするわけですね?  そう、だからこそアリフレックス35BLにはメリットがあるのです。絞りの調整が他のカメラよりも細かいので、実際に撮影しながら光の変化に対応できるのです。一般的なレンズでは、1つの絞り値と次の絞り値の間に大きな距離はありません。アリフレックス35BLのレンズでも実際にはそうではありませんが、外側のギア機構がスケールを大きくしているため、より正確な調整が可能になっています。1/4インチの動きが1インチの動きになるようなものです。 ー本作でのズームレンズの使用については?  ああ、そうですね。かなり使いました。アンジェニューの10対1ズームをアリフレックス35BLで使用し、エド・ディジュリオのシネマ・プロダクツ社製「ジョイスティック」ズームコントロールを併用しましたが、素晴らしいものでした。これは非常に重...

【関連商品】『2001年宇宙の旅』のHAL 9000のようなデザインのファズ・ペダル、その名も「TMA-1 Fuzz」が登場

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  映画『2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)』のファンにはたまらない名前とルックスの「TMA-1 Fuzz」は、4ステージ仕様のトランジスター・ファズ。2ステージ目と3ステージ目に歪み用のダイオードを2種類搭載し、トグル・スイッチの切り替えによって、バリエーション豊かなファズ・サウンドが得られるのが特徴です。3ポジションのトグル・スイッチは、上方向でゲルマニウム・ダイオード、下方向でシリコン・ダイオードが有効になり、真ん中はバイパスという仕様。このスイッチが2つ備わっているので(2ステージと3ステージ)、3×3で9通りの組み合わせを選択できることになります。加えて上部の3つノブでは、ボリューム、トーン、ゲインを調整することが可能。歪み量に応じて点灯する赤色のランプも備わっています。  「TMA-1 Fuzz」の販売価格は199ドルで、出荷は2021年12月初旬を予定しているとのこと。さらなる詳細は、Acorn AmplifiersのWebサイトをご覧ください。 (引用: ICON/2021年10月16日 )  まず「ファズ」とは何か?ということなのですが、エレキギターはアコースティック・ギターとは異なり、単体では音を出すことができません。ですのでシールドと呼ばれるコードでギターアンプに繋げて音を出すのですが、アンプは基本的には音を増幅する装置です(話をわかりやすくするためにそう説明させてください。汗)。では「バリバリ」という歪んだ音や「ワーン」というエコーなどの音色はどうするかというと、ギターとアンプの間に「エフェクター」という小型の装置を挟み(かませると言います)、その装置についているノブやスイッチを調節して音を「作る」のです。で、そのエフェクターにはいくつか種類があり、その中でも音をバリバリと歪ませる役割を持つものを「歪(ひず)み系」と言い、その歪みの程度によって大きく3種類に分かれます。軽い歪みの「オーバードライブ」、そこそこ歪む「ディストーション」、がっつり歪む「ファズ」。つまりこの「TMA-1」はギターの音をがっつり歪ませるファズの新製品、ということになります(ついてこれていますでしょうか・・・汗)。ファズ使いで有名なギタリストといえば何と言ってもジミ・ヘンドリクス。ジミヘンの動画をご覧いただければ、ファズの音がどんな...

【考察・検証】原作? ノベライズ? 小説版? アーサー・C・クラークの小説『2001年宇宙の旅』の立ち位置を正しく理解する

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左から『宇宙のオデッセイ2001』と題された初版。映画と同タイトルの再発版。全面改訂・新訳の決定版   アーサー・C・クラークが映画公開後の1968年7月に発表した小説『2001年宇宙の旅』について、「原作」と呼ぶべきなのか、「ノベライズ」と呼ぶべきなのか・・・。一時期ファンの間で問題になったこの話題も、現在では「小説版」と呼ぶことで一定のコンセンサスを得ています。それは後年映画の製作経緯がはっきりしたからですが、このことをご存知のない方は、いまだに「原作」「ノベライズ」と呼ぶことがあるように見受けられます。ですので、その製作経緯を以下に記して、その誤解を解きたいと思います。  まずはアーサー・C・クラークによる『2001年宇宙の旅』制作秘話『失われた宇宙の旅2001』からの引用から。  わたしのほうは1964年時点では、漠然と意識しているに過ぎなかったが、スタンリーは百も承知だった。彼はこう提案した。シナリオという骨折り仕事にかかるまえに、想像力を自由にはばたかせ、まず長編小説を書いてストーリーをふくらませようじゃか。〈中略〉というわけで理論上は小説がまず書かれ(片方の目はスクリーンを気にしつつ)シナリオはそれを元につくられることになった。  このように当初はクラークが小説を書き、完成させ、それを元に映画のシナリオを作る予定でした。この通りに作業が進んだのならクラークの小説は「原作」となりますが、実際はそう簡単ではありませんでした。キューブリックは1964年12月25日、一旦完成した(この時点ではボーマンがスターゲートに到着したところまで)小説『星の彼方への旅(仮題)』を、1965年2月の記者発表の後にボツにし、ストーリーの練り直しを命じたのです。その結果、  じっさいには、ことははるかに複雑化した。(映画製作の)終わりごろには小説とシナリオは同時進行となり、フィードバックは相互に行われた。小説の初期の稿にもとづいてシナリオができ、それをもとに撮ったラッシュ(フィルム)を見て、最終稿を手直しするといったようなことを各所でくりかえした。(以上『失われた宇宙の旅2001』より) ということになりました。ただ、小説は1966年の夏にはほぼ完成していたらしく、クラークはキューブリックに出版許可のサインを求めるのですが、キューブリックはこれを固辞。これはおそらく小説...

【関連記事】SCREEN読者が選ぶ『私の好きなSF映画』はコレだ!【アンケート結果発表】『2001年宇宙の旅』は何位?

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IMDb - 2001: A Space Odyssey(IMDb) SCREEN読者が選ぶ『私の好きなSF映画』はコレだ!【アンケート結果発表】  SCREEN9月号で募集した『あなたの好きなSF映画は?』の読者アンケート結果をここに発表!まさに王道というべき大ヒットSF作品が並びました。もし未見という人がいたら、これだけは見ておくべきラインナップです! 『スター・ウォーズ』シリーズ(1977~2019) 『E.T.』(1982) 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ(1985 ~ 1990) 『ターミネーター』シリーズ(1984~2019) 『レディ・プレイヤー1』(2018) 『ブレードランナー』(1982) 『2001年宇宙の旅』(1968) 『インターステラー』(2015) 『エイリアン』シリーズ(1979 ~ 2017) 『スター・トレック』シリーズ(1979 ~2016) 〈以下略〉 (引用元: SCREEN ONLINE/2021年10月12日 )  いわゆるエンタメ系SF映画(シリーズ)ばかりが並んだという印象ですね。評論家筋やSFマニアに評価の高い『ブレードランナー』『インターステラー』の順位が低いのは読者層を反映してのことでしょうか? そんなエンタメ系SF映画の中で『2001年宇宙の旅』が7位に入るというのは画期的だと思います。このことからも昨今の「キューブリック・リバイバル」の影響の大きさを感じさせます。クリストファー・ノーランなど若い世代の監督によるリスペクト、アパレル展開による若い世代への浸透などが原因として考えられますが、もちろん最大の要因は作品のパワーが落ちていないこと。クラークは「(当時の宇宙開発競争によって)10年くらいは時代遅れや爆笑ものにならない作品」と語っていましたが、なんのなんの実に50年以上も現役!しかもここに挙がったトップテン作品の「全てが何らかの影響を受けている」んですから、実にとんでもない作品です。  おそらく『2001年宇宙の旅』は、これからも新しい世代のクリエーターを(視聴機会さえあれば)刺激し続けるでしょう。順位など超越したまさに「原点にして頂点」と言える作品だと思います。

【考察・検証】キューブリックがマルチアスペクトでの収録を指示した『博士の異常な愛情』クライテリオン版LDと、「核爆弾ロデオ」シーンのマユツバな話

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ヨーロッパビスタでの表示。劇場公開時はこのアスペクト比だった スタンダードでの表示。このアスペクト比で表示されれば、左右カットで再生(放映)されるリスクはない 当該のクライテリオン版レーザーディスク(LD)   キューブリックがワイドのマスクをNGにし、マルチアスペクトでの表示を指示した『博士の異常な愛情』クライテリオン版LDの詳細がありましたのでご紹介(引用元は こちら )。発売は1992年6月24日です。   『博士の異常な愛情』のwiki には この処置で破棄された効果の最たるものは、核爆弾と共にコング少佐が落下して行く場面でビスタサイズの背景に対し1:1.33で撮影された爆弾と少佐がはみ出し、光学合成で人為的に作られたフィクション、あるいはジョークを強く意識させる点である。 とあります。これは「通説」であり、キューブリック本人がそう発言したわけではありません。キューブリックは「1.33:1(正確には1.37)および1.66:1のマルチアスペクトで映像を表示しろ」と指示しただけです。  この件に関しては こちらの記事 で検証した通り、キューブリックが危惧したのは当時のブラウン管テレビ、すなわちスタンダードサイズでの再生時に、ワイド映像の左右カットで再生されてしまうのを恐れていたからではないかと考えます。この頃(1994年)のキューブリックはTVオンエアやビデオ化を睨んで「撮影はスタンダード、劇場上映は上下マスクのワイド(アメリカンビスタ)」というフォーマットで映画製作をしていました。この『博士の異常な愛情』もそれに準じ、スタンダードの映像でビデオ化しておけば、ワイド映像の左右カットで視聴される危険性がないと考えたのではないかと思います。wikiにある指摘、「光学合成で人為的に作られたフィクション、あるいはジョークを強く意識させる点である」は、TVで視聴している時ならともかく、ワイド(この時代はヨーロッパビスタ)で劇場上映された際にはそうなりません。もしキューブリックが通説通り「ジョーク」としてこのシーンを作ったのなら、劇場でもスタンダードで上映しろという指示があるはずです。しかしそういった事実はありません。この点からもこの「通説」は破綻していると私は考えます。ですので、こんな説得力のかけらもない「通説」は誤解を生むので、wikiから削除していただきたい...

【インタビュー】『バリー・リンドン』の撮影監督だったジョン・オルコットのインタビュー[その1:ロケーション撮影、フィルター、照明、ネガフィルムについて]

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ポラを確認するジョン・オルコットと、ファインダーを覗くキューブリック スタンリー・キューブリック『バリー・リンドン』の撮影について (1976年のインタビュー) 〈前略〉 ーアメリカン・シネマトグラファー誌:スタンリー・キューブリックとは3本の映画で仕事をしていますね。『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』そして今回の『バリー・リンドン』です。その関係について教えてください。 ジョン・オルコット:私たちは非常に親密な関係にあり、その関係は『2001年宇宙の旅』から始まりました。私はジェフリー・アンスワースのアシスタントをしていましたが、ジェフリーが最初の半年で辞めてしまったので、私が引き継ぐことになりました。つまり、スタンリー・キューブリックが私に有名になるきっかけを与えてくれたのです。私たちの仕事の関係が緊密なのは、撮影に対する考え方がまったく同じだからです。本当に見解の一致した撮影をしています。 ー『バリー・リンドン』の事前計画段階ではどうでしたか?  例えば蝋燭の明かりのように、写真的なアプローチや効果の可能性を試すことが多かったです。実は『2001年…』の後にスタンリーが『ナポレオン』の撮影を計画していたときにも、蝋燭の明かりだけで撮影しようという話があったのですが、その頃は必要になる高感度レンズを持っていませんでした。また『バリー・リンドン』の撮影準備では、オランダの巨匠たちの絵画に見られる照明効果を研究しましたが、少し平面的な印象を受けたので、横からの照明を足すことにしました。 ー『時計じかけのオレンジ』と『バリー・リンドン』両作品をキューブリックの元で撮影しましたが、この2つの作品の撮影スタイルは明らかに異なっています。この2つの撮影を比較して、そのスタイルの違いをどのように表現しますか?  『時計じかけのオレンジ』では、より暗く、よりドラマチックなタイプの撮影が行われていました。この作品は1980年代(※1990年代の間違い?)という先進的な時代を舞台にした現代的な物語ですが、実際にはその時代が特定されているわけではありません。その時代では、非常に冷たく、荒々しい撮影のスタイルを必要としました。一方、『バリー・リンドン』は『時計じかけのオレンジ』に比べて絵画的で、光と影の表現がよりソフトで繊細なものになっています。私の考えでは、『バリー・リン...

【台詞・言葉】ハートマン軍曹語録の中で最も汚い言葉、「頭ガイ骨マ●コ」ってどういう意味?

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 数あるハートマン軍曹語録の中で、最上級で汚い言葉がこの「頭ガイ骨マ●コ」だと思うのですが、たいていの人の反応は「なんだよ頭ガイ骨マ●コってwww」という軽いものだと思います。でもこれ、どういう意味(状態)かご存知の方は、かなりのマニアかそういう方面に詳しい人だと思います。かくいう管理人もだいぶ後になって知りました。内容が内容だけにこのブログで意味を書くのは憚られますので、 こちら を参照してください。いずれにしても「非常に強い侮蔑の表現」であることはまちがいないですので、日常生活では使わないようにしましょう(使うことないですけど。笑)。  さて、知ってしまった以上、このシーンで笑うと「えっ?この人意味知ってるの?」ということになってしまうのでお気をつけください。意味を知らず、語感だけで笑うと誤解の元にもなりかねません。また、キューブリックに「言葉の汚さが出ていない」と戸田奈津子氏が翻訳を降ろされた件ですが、この部分についてだけは戸田氏に同情します。さすがに・・・ねえ・・・これを女性に訳させるのはちょっと酷ですよね。

【関連記事】キューブリックとハリスが『ロリータ』の直後に映画化を検討していた『レッスンC(Passion Flower Hotel)』

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ツインテのナスターシャ・キンスキー。本編シーンか宣材写真なのかは不明。萌える人は萌えるか…も? 〈前略〉  『ロリータ』の製作が終了して間もなく、キューブリックとハリスは、全寮制女子校の中にある売春宿を描いたロザリンド・アースキンのコミカルな小説『パッション・フラワー・ホテル』の映画化を企画した。この小説は、後にジョン・バリーの音楽で舞台ミュージカルになり、さらに後にナスターシャ・キンスキー主演で映画化された。 「当時、映画を公開するために必要なプロダクション・コードに縛られていたので、性的表現のある映画を撮ろうと真剣に話し合ったんです」とジェームズ・B・ハリスは振り返る。「念のために言っておきますが、すべては仮定の域を出ませんでした。スタンリーの考えは、才能のある俳優を使って、正直で自由なものを撮れば、美しく、真実味があり、さらにはストーリーを語ることができるというものでした」 〈中略〉 「スタンリーが考えていたのはポルノではなく、検閲を超えた何かだった。1950年代半ばの問題はそうだった。そんな映画をどこで見せられるのか。検閲を通らなければ、新聞に広告を出すこともできないし、映画館で合法的に上映することもできない」 〈以下略〉 (全文はリンク先へ: FADE IN/2012年12月26日 )  この小説『パッション・フラワー・ホテル』は1978年に『レッスンC』(原題『Passion Flower Hotel』)として映画化されました。主演はナスターシャ・キンスキーです。1974年に官能映画『エマニエル夫人』が世界的に大ヒットして以降、ソフトポルノ映画が制作されるようになり、1970年代後半から1980年代前半にかけて十代の若者の性を描くいわゆる「青春エロ映画」「性のめざめ映画」(『青い珊瑚礁』『初体験/リッジモント・ハイ』『グローイング・アップ』『ポーキーズ』『超能力学園Z』などなど)とうジャンルが大流行しましたので、その流れでこの小説も映画化されたのだと思います。1978年というのはソフトポルノから青春エロ映画への転換点くらいの時期になるでしょう。  キューブリックがこの小説の映画化を検討していたのは1962年ごろだと思いますので、それよりもずいぶんと早い時期です。「性の解放」といわれる時代は1970年代に入ってからですので、約10年以上は早いですね。『ロリ...

【関連動画】ヴァル・キルマーが直接キューブリックに手渡すために渡英までした『フルメタル・ジャケット』のオーディションビデオ

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動画は削除されました。上記はドキュメンタリー『VAL』の予告編で、件のオーディションビデオが登場しています。   ヴァル・キルマーといえば一般的には『トップガン』のアイスマン役ですが、個人的には『ドアーズ』のジム・モリソン役が印象深いですね(ちなみにドアーズファンにはこの映画はすこぶる評判が悪いが、ヴァルのそっくりさん演技は評価されている)。そのヴァルがキューブリックに渡した『フルメタル・ジャケット』のオーディション・ビデオがありましたのでご紹介。ソースはヴァルの自伝的ドキュメンタリー『VAL』からです。  このオーディションテープはおそらく1985年くらいに撮影されたものだと思いますが、ヴァルはこのビデオをキューブリックに直接渡したくてロンドンに飛んだそうです。動画では「直接渡した」となっていますが、キューブリックは秘密主義者で、製作中は直接の関係者以外は会いたがらないことから、本人ではなく、本人に近い関係者に渡した可能性もあります。そのくらいヴァルが『フルメタル…』での役を渇望していたのは、最初のシーンでネズミの耳をつけていることからも伺えます。原作では(映画でも)ネズミ(ミッキーマウス)=海兵隊員ですからね。  結局ヴァルは採用されず、代わりに『トップガン』に出演し名声を得ることになるのですが、その『トップガン』のオファーを断ったマシュー・モディーンが、『フルメタル…』主役のジョーカーを演じることになりました。結果だけ見ればオーライということになりますが、このようにキューブリック作品に出たいと考える俳優はゴマンといたのです。たとえ大量のテイクと長期間に及ぶ撮影、自分のアイデアをその一滴まで搾り取られるとわかっていてもです。キューブリックの俳優に対する扱いが酷いと揶揄するばかりで、その意図を正しく伝えないのは、それを知らない単なる無知なのか、もしくは知っていても刺激的な見出しでアクセス稼ぎをしたい低質な迷惑YouTuberか、その迷惑YouTuberレベルの自称映画評論家か解説者だと思っていただければ良いかと思います。まったくもって「迷惑」な話ですね。

【インスパイア】adieu(上白石萌歌)『よるのあと』のMVがとっても『シャイニング』な件

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 adieu(上白石萌歌)さんの曲、『よるのあと』のMVがとっても『シャイニング』だったのでご紹介。全体的にダークなイメージですが、なぜかバスタブに入っていたり、廊下で三輪車をこぐシーンがあったり、最後はクマのぬいぐるみまで登場(笑。歌詞を読むとそこそこに憂鬱なので、そのイメージからの引用かな?という印象です。ご本人はこの時点(2019年)では元ネタは知らなかったようで、最近こんな記事がありました。 “ホラー絶対ダメ”上白石萌歌が「シャイニング」観た結果… 女優・上白石萌歌(21歳)が、7月24日に放送されたラジオ番組「#LOVEFAV」(J-WAVE)に出演。ホラー映画が「絶対!ダメ」な上白石が映画「シャイニング」を観に行ったと語った。 〈中略〉 上白石は「午前十時の映画祭11」で公開されていることから観に行ったそうで、「私、ホラー映画、絶対!ダメで。人が殺されるところとか見られないし、ちょっとうわっていう突発的なホラーも本当はダメなんですけど、『シャイニング』はそういう怖さではなくてヒューマンミステリーみたいな恐ろしさがある映画と聞いたので、勇気を出して行ってみようと思い、この間観に行ってきました。ずっと恐ろしくてひたすら奥歯と眼のまぶたをぐっと潰すように観てました。ずっと不穏な感じがたまらなくて。役者さん方はもちろん、撮り方とか音の使い方が面白くて、面白いホラー映画って音楽が本当に素晴らしいんだなと実感しました。最初から最後までずっと何かが迫り来るような恐怖心を煽るような音楽ばかりで、ずっと不穏な感じ。壊れそうな吊り橋を渡るような恐ろしさがある作品でした。映画の中の構図も幾何学的で、シンメトリーな撮り方が多くて、余計な空白みたいなものがなくて、計算し尽くされた構図だなとずっと思ってました」とコメント。 〈以下略〉 (引用: ハッピーニュース/2021年7月25日 )  上白石さんは「午前十時の映画祭11」で鑑賞されたそうです。東宝シンデレラ出身で事務所が東宝芸能ということなので、その関係で観に行かれたんでしょうか。もしくは「元ネタくらい知っておけ」と指示があったとか? どういう理由にせよ、若い世代がキューブリック作品を発信していただけるのは、ファンとしては嬉しい限り。これからもご活躍を期待しております。

【ブログ記事】クリスマスを祝うキューブリック夫妻の写真~キューブリックの宗教観やユダヤ人観、私生活など、プライベートついてのまとめ

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クリスマスを祝うキューブリック夫妻。キューブリックはユダヤ教の一切の宗教的行事には関心がなかった。妻のクリスティアーヌはナチスに近い家系のドイツ人なので、普通にキリスト教徒だったと思われる ●宗教観について  キューブリックはユダヤ人でありながら、宗教には関心がなかったことが知られていて、「たまたま両親がユダヤ人だっただけ」と語っていたという話さえあります。上記のクリスマスを祝うキューブリック夫妻の写真は1980年代に撮られたもので、長女カタリーナが公開したものです。ただ、クリスマスを祝っているからといって、キューブリックがキリスト教に改宗したわけではないと思います。フレデリック・ラファエル著『アイズ・ワイド・オープン』によると、キューブリックは「キリスト教徒たちがどう感じるかなんて、私たち(ユダヤ人)に何がわかる?」というキューブリックの発言の記述があります。また有名な話として『シャイニング』の原作者、スティーブン・キングとの電話での会話で「地獄を信じない」「死後の世界があるなんて楽天的な考え方」」と発言したそうです。端的に言えば「一切の宗教を信じないリアリスト」と言えるでしょう。とはいえ、クリスマスプレゼントの風習を非常に楽しんでいたそうなので、クリスマスを「単なる季節行事」として捉えていたのだと思います。 ●ユダヤ人差別について  宗教としてのユダヤ教には無頓着でも、人種としてのユダヤ人差別には敏感に反応していたようです。前述の『…オープン』にも反ユダヤ主義に関する記事に憤る姿の記述があったり、ハリウッド時代には「ユダヤ野郎」などの蔑視の言葉を投げかけられることもあったようです。また、妻のクリスティアーヌによると「彼はタフだった。ニューヨーク時代のひどい仕打ち(人種差別のこと)に慣れていたのかも」と発言しています。この件についてはナチスによるユダヤ人迫害を扱った『アーリアン・ペーパーズ』の企画が実現していれば知ることができたのですが、残念ながら中止になってしまいました。最近になって「ユダヤ人としてのキューブリックとその作品」というアプローチがなされるようになり、2016年にサンフランシスコで開催された『スタンリー・キューブリック展』は現代ユダヤ博物館で開催されました。また『Stanley Kubrick: New York Jewish Intellectua...

【関連動画】世界の終わりを描いたパニック映画ランキングTop10

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  ナレーターが変わっても、やっぱり微妙なナレ声が気になるWatch Mojo Japanさんに『世界の終わりを描いたパニック映画ランキングTop10』という動画がありましたのでご紹介(ネタバレ注意!!)。  キューブリック作品をよく採り上げてくれるWatch Mojoらしく、あの作品が堂々の1位でした。ただ、ナレーションの内容に違和感が・・・。「防ぎました」ではなく「防ごうとしました」ですね。訳の問題か、それとも元動画がそうなっていたのかわかりませんが、どうも作りが雑なのが気になります(まあ、昔からちょっとそういうところがあるんですが)。  1位以外のランキングはというと、2000年以降の作品が半分を占め、知られていないマイナーな作品がいくつか採り上げられているのがちょっと意外でした。旧作ですと『渚にて』は名作なので観ても損はないですが、旧作SF映画ファン的には定番の『地球最后の日』とか『性本能と原爆戦』などは、もう現在の映画ファンの口の端に上がることもないんでしょうね。

【ブログ記事】カーク・ダグラスがキューブリックの才能に惚れ込んで、『突撃』の出演を決めたというエピソードの「裏事情」

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  カーク・ダグラスが『突撃』の企画を知った時、自伝によるとキューブリックにこう語ったそうです。 「スタンリー、この映画では1セントも稼げやしないだろう。でもこれは作らなきゃだめだ」 若いキューブリックの才能に惚れ込み、それを後押ししようとする後輩思いのカーク・ダグラス。カークは出資者であるユナイトにも『バイキング』と『突撃』を一緒に作るのか?それとも他社に行くのか?と迫り、出資を渋るユナイトを説得したそうです。まさに「美談」ですね。  実はこの話には裏があって、ここまでカークがこの『突撃』に固執したのは、脚本やキューブリックの才能に惚れ込んでいたから・・・だけでなく、大作映画である『バイキング』でヨーロッパ長期滞在が予想されるため、その間にもう一本映画を作るのにはヨーロッパが舞台であったこの『突撃』が都合が良かったからなのです。この件については、『突撃』の音楽を担当したジェラルド・フリードがインタビューで証言しています。  『突撃』が作られた理由を知っていますか?『バイキング』のおかげなのです。これは興味深い映画史であり、事実です。カーク・ダグラスはスタンリーに感銘を受け、彼と話し、カークは「間に少し時間があるので、『バイキング』のオフの日に『突撃』 を作ってみないか?」と言ったのです。 『突撃』はこうして出来たんです!  この『バイキング』、アーネスト・ボーグナイン、ジャネット・リー(ブレイクしたのは『サイコ』の出演後)、トニー・カーティスなど超有名スターが勢ぞろいし、ナレーターにあのオーソン・ウェルズを起用。カークの事務所であるブライナ・プロダクションが製作し、しかもカークにとってヴァイキングを演じるのは長年の夢だったのです。これほどまでに力が入った、しかも大ヒットが予想される映画の企画がすでに存在していれば、そりゃ「作らなきゃだめだ」などと言えるはずです。  『突撃』は1956年から1957年にかけて主にミュンヘンで撮影され、『バイキング』は1957年の夏にノルウェーやフランスで撮影されました。しかもカークの思惑通りに『バイキング』は大ヒット。その反面『突撃』は制作費さえ回収できませんでした。しかし、時の経過によって立場は逆転。『バイキング』は映画史の過去の末席へと置き去りにされ、「懐かしのハリウッド大作」として懐古的に語られるのがせいぜい。現在に至...

【ブログ記事】ポーリン・ケイルが『2001年宇宙の旅』を悪意満載で評したエッセイ『ゴミ、芸術、そして映画』

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  映画の芸術性が叫ばれているが、私たちが楽しんでいる映画のほとんどは芸術作品ではないということを忘れているかもしれない。 ポーリン・ケイル著 〈中略〉 VIII  『2001年宇宙の旅』は『欲望』の主人公が作ったかもしれない映画だ。巨大なSFセットや装置を作って、それをどう使うかを考えようともしないキューブリックが、本当にやりたい放題やっていると考えると楽しい。フェリーニもまた、「組み立ておもちゃ」を使った映画作りに夢中になっていたが、『8 1/2』のラストで公開された彼の大きな宇宙船のセットは解体されてしまった。キューブリックも本当に作りたい自分の映画を作ることはできなかったが、彼はそれに気づいていないようだ。「アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ」(※B級映画制作会社)の作品をとてもバカげているから好きだという人もいる。キューブリックがそういうバカバカしいことをやって、超SFバカのファンタジーのようなものをやって見せたんだと、『2001年…』を好きになる人もいるかもしれない。ある意味では、この作品は最大のアマチュア映画であり、アマチュア映画のお約束である、監督の小さな(巻き毛の)娘がパパにどんなプレゼントが欲しいかをねだるシーンまで登場している。  『007は二度死ぬ』のタイトル前のシークエンスで、宇宙にいる宇宙飛行士が出てくるが、これは『2001年…』よりもゆるくて自由なスタイルで、ちょっとした大胆さがあり、『2001年』よりも面白かったと思う。それは叙情的な宇宙での死を見つけた時のショックという予想外の要素があった。キューブリックはこのアイデアに夢中になっている。『博士の異常な愛情』の副題『私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』は、風刺的なものだと思っていたが、キューブリックにとっては完全な風刺ではなかったようだ。『2001年…』は、人間以外の生命の高次化に向けた進化の道として、死の道具の発明を祝福している。キューブリックは文字通り、心配するのをやめて爆弾を愛することを学んだ。彼は地球外生命体ゲーム理論のハーマン・カーン博士のように、自分自身の尻に敷かれるようになったのだ。漠然としたこの映画の魅力は、ラリった観客をこの世から連れ出し、優れた神のような心に支配された、優美な宇宙の慰めのビジョンの世界へ連れて行き、そこで主...