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【インスパイア】『時計じかけのオレンジ』と「アイドル」に親和性?『時計じかけのオレンジ』にインスパイアされた女性アイドルのPVやMVのまとめ

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平手友梨奈『かけがえのない世界』のMVではこんな「過激な引用」も。ご本人が自覚しているか否かはわかりませんが・・・。  映画『時計じかけのオレンジ』は、破壊的で攻撃的、性衝動などの過激な描写、管理社会とそのアンチテーゼというメッセージ性で、古今東西の数多くのアーティストにインスパイアを与え、オマージュを捧げられ、パロディにされてきました。それは映画の世界だけにとどまらず、アートやファッション、小説や絵画、さらにマンガやアニメなどのサブカル分野まで及んでいます。  特に音楽シーンに与えた影響は大きく、ロック、パンク、ニューウェイブ、ハードロック、ヘビーメタル、スラッシュメタル、ヒップホップなど、いわゆる「不良系」の音楽にはよく引用されています。またその延長線上で、露骨なセクシャリズムや挑発・扇情をパブリック・イメージにした女性アーティスト、例えばマドンナ、リアーナ、レディガガ、かつてティーンのアイドルだったカイリー・ミノーグまでその影響は見て取れます。  ところが近年、「清純」「純潔」「処女性」を旨とする日本の女性アイドルが『時計じかけのオレンジ』をモチーフに採り入れる、ということが散見されるようになりました。言うまでもないことですが、これらアイドルの清廉・清純な世界観と、『時計じかけのオレンジ』の世界観は真逆、対極と言っていいと思います。それはもちろん仕掛ける側の「狙い」であることは明白なのですが、まさかそんな挑戦的な方法論が用いられることなど全く予想していなかったので、いささか驚いています。(ただ単に制作側の「好み」だけなのかもしれませんが・・・笑)  この記事ではそんな日本の女性アイドルが『時計じかけのオレンジ』をモチーフに採用したPVやMVを、時系列でご紹介いたします。 チャオ・ベッラ・チンクエッティ『何度も 何度も…』(2017年)  女性アイドルグループ、チャオ・ベッラ・チンクエッティの2017年12月発売の配信限定シングル『何度も 何度も…』の衣装とMVの世界観が、『時計…』を彷彿とさせるものになっています。残念ながら2018年8月をもって活動停止を決定、解散しました。 欅坂46『Student Dance(Short Ver.)』(2018年)  2018年8月発売のシングル『アンビバレント』のカップリング曲。歌詞を読むと「学校という管理社会に閉じ込め...

【インタビュー】『バリー・リンドン』の撮影監督だったジョン・オルコットのインタビュー[その2:カメラ、照明、ズーム、トラッキングショット、蝋燭の光のみでの撮影について]

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酔いつぶれた将校の役で出演しているジョン・オルコット(左) ( 「その1」 より) ーアメリカン・シネマトグラファー誌:このカメラ(アリフレックス35BL)の印象を教えてください。 ジョン・オルコット:素晴らしいカメラだと思います。私にとってはカメラマンのためのカメラですが、それは主に光学システムが非常に優れているからです。光学システムの中には、他のシステムよりもはるかに誇張されたトンネル効果(映像の周辺暗く中心部が明るい映像)が得られるものがあります。先日、映画館にいるような気分になれるという理由で、長いトンネル効果を好む人物に出会ったことがあります。個人的には実際の映像で隅々まで見える方が好きですね。それができるのはアリフレックス35BLだけだと思います。このカメラのもう一つの特徴は、文字通り指先で絞りのコントロールができることです。一般的なカメラよりもはるかに大きな目盛りがついているので、細かく調整することができます。この機能は、スタンリー・キューブリックと仕事をするときには特に重要です。彼は、太陽が沈もうが沈むまいが撮影を続けたがります。『バリー・リンドン』では、バリーが幼い息子に馬を買い与えるシーンで、太陽が出たり入ったりしていました。これに対応しなければなりません。太陽が入ってきたからカットする、というような古い考え方はもう通用しません。 アリフレックス35BLで撮影するキューブリック ーその代わり、撮影中に絞りの開き具合を変えて乗り切ろうとするわけですね?  そう、だからこそアリフレックス35BLにはメリットがあるのです。絞りの調整が他のカメラよりも細かいので、実際に撮影しながら光の変化に対応できるのです。一般的なレンズでは、1つの絞り値と次の絞り値の間に大きな距離はありません。アリフレックス35BLのレンズでも実際にはそうではありませんが、外側のギア機構がスケールを大きくしているため、より正確な調整が可能になっています。1/4インチの動きが1インチの動きになるようなものです。 ー本作でのズームレンズの使用については?  ああ、そうですね。かなり使いました。アンジェニューの10対1ズームをアリフレックス35BLで使用し、エド・ディジュリオのシネマ・プロダクツ社製「ジョイスティック」ズームコントロールを併用しましたが、素晴らしいものでした。これは非常に重...

【インタビュー】『バリー・リンドン』の撮影監督だったジョン・オルコットのインタビュー[その1:ロケーション撮影、フィルター、照明、ネガフィルムについて]

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ポラを確認するジョン・オルコットと、ファインダーを覗くキューブリック スタンリー・キューブリック『バリー・リンドン』の撮影について (1976年のインタビュー) 〈前略〉 ーアメリカン・シネマトグラファー誌:スタンリー・キューブリックとは3本の映画で仕事をしていますね。『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』そして今回の『バリー・リンドン』です。その関係について教えてください。 ジョン・オルコット:私たちは非常に親密な関係にあり、その関係は『2001年宇宙の旅』から始まりました。私はジェフリー・アンスワースのアシスタントをしていましたが、ジェフリーが最初の半年で辞めてしまったので、私が引き継ぐことになりました。つまり、スタンリー・キューブリックが私に有名になるきっかけを与えてくれたのです。私たちの仕事の関係が緊密なのは、撮影に対する考え方がまったく同じだからです。本当に見解の一致した撮影をしています。 ー『バリー・リンドン』の事前計画段階ではどうでしたか?  例えば蝋燭の明かりのように、写真的なアプローチや効果の可能性を試すことが多かったです。実は『2001年…』の後にスタンリーが『ナポレオン』の撮影を計画していたときにも、蝋燭の明かりだけで撮影しようという話があったのですが、その頃は必要になる高感度レンズを持っていませんでした。また『バリー・リンドン』の撮影準備では、オランダの巨匠たちの絵画に見られる照明効果を研究しましたが、少し平面的な印象を受けたので、横からの照明を足すことにしました。 ー『時計じかけのオレンジ』と『バリー・リンドン』両作品をキューブリックの元で撮影しましたが、この2つの作品の撮影スタイルは明らかに異なっています。この2つの撮影を比較して、そのスタイルの違いをどのように表現しますか?  『時計じかけのオレンジ』では、より暗く、よりドラマチックなタイプの撮影が行われていました。この作品は1980年代(※1990年代の間違い?)という先進的な時代を舞台にした現代的な物語ですが、実際にはその時代が特定されているわけではありません。その時代では、非常に冷たく、荒々しい撮影のスタイルを必要としました。一方、『バリー・リンドン』は『時計じかけのオレンジ』に比べて絵画的で、光と影の表現がよりソフトで繊細なものになっています。私の考えでは、『バリー・リン...

【台詞・言葉】ハートマン軍曹語録の中で最も汚い言葉、「頭ガイ骨マ●コ」ってどういう意味?

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 数あるハートマン軍曹語録の中で、最上級で汚い言葉がこの「頭ガイ骨マ●コ」だと思うのですが、たいていの人の反応は「なんだよ頭ガイ骨マ●コってwww」という軽いものだと思います。でもこれ、どういう意味(状態)かご存知の方は、かなりのマニアかそういう方面に詳しい人だと思います。かくいう管理人もだいぶ後になって知りました。内容が内容だけにこのブログで意味を書くのは憚られますので、 こちら を参照してください。いずれにしても「非常に強い侮蔑の表現」であることはまちがいないですので、日常生活では使わないようにしましょう(使うことないですけど。笑)。  さて、知ってしまった以上、このシーンで笑うと「えっ?この人意味知ってるの?」ということになってしまうのでお気をつけください。意味を知らず、語感だけで笑うと誤解の元にもなりかねません。また、キューブリックに「言葉の汚さが出ていない」と戸田奈津子氏が翻訳を降ろされた件ですが、この部分についてだけは戸田氏に同情します。さすがに・・・ねえ・・・これを女性に訳させるのはちょっと酷ですよね。

【関連動画】ヴァル・キルマーが直接キューブリックに手渡すために渡英までした『フルメタル・ジャケット』のオーディションビデオ

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動画は削除されました。上記はドキュメンタリー『VAL』の予告編で、件のオーディションビデオが登場しています。   ヴァル・キルマーといえば一般的には『トップガン』のアイスマン役ですが、個人的には『ドアーズ』のジム・モリソン役が印象深いですね(ちなみにドアーズファンにはこの映画はすこぶる評判が悪いが、ヴァルのそっくりさん演技は評価されている)。そのヴァルがキューブリックに渡した『フルメタル・ジャケット』のオーディション・ビデオがありましたのでご紹介。ソースはヴァルの自伝的ドキュメンタリー『VAL』からです。  このオーディションテープはおそらく1985年くらいに撮影されたものだと思いますが、ヴァルはこのビデオをキューブリックに直接渡したくてロンドンに飛んだそうです。動画では「直接渡した」となっていますが、キューブリックは秘密主義者で、製作中は直接の関係者以外は会いたがらないことから、本人ではなく、本人に近い関係者に渡した可能性もあります。そのくらいヴァルが『フルメタル…』での役を渇望していたのは、最初のシーンでネズミの耳をつけていることからも伺えます。原作では(映画でも)ネズミ(ミッキーマウス)=海兵隊員ですからね。  結局ヴァルは採用されず、代わりに『トップガン』に出演し名声を得ることになるのですが、その『トップガン』のオファーを断ったマシュー・モディーンが、『フルメタル…』主役のジョーカーを演じることになりました。結果だけ見ればオーライということになりますが、このようにキューブリック作品に出たいと考える俳優はゴマンといたのです。たとえ大量のテイクと長期間に及ぶ撮影、自分のアイデアをその一滴まで搾り取られるとわかっていてもです。キューブリックの俳優に対する扱いが酷いと揶揄するばかりで、その意図を正しく伝えないのは、それを知らない単なる無知なのか、もしくは知っていても刺激的な見出しでアクセス稼ぎをしたい低質な迷惑YouTuberか、その迷惑YouTuberレベルの自称映画評論家か解説者だと思っていただければ良いかと思います。まったくもって「迷惑」な話ですね。

【インスパイア】adieu(上白石萌歌)『よるのあと』のMVがとっても『シャイニング』な件

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 adieu(上白石萌歌)さんの曲、『よるのあと』のMVがとっても『シャイニング』だったのでご紹介。全体的にダークなイメージですが、なぜかバスタブに入っていたり、廊下で三輪車をこぐシーンがあったり、最後はクマのぬいぐるみまで登場(笑。歌詞を読むとそこそこに憂鬱なので、そのイメージからの引用かな?という印象です。ご本人はこの時点(2019年)では元ネタは知らなかったようで、最近こんな記事がありました。 “ホラー絶対ダメ”上白石萌歌が「シャイニング」観た結果… 女優・上白石萌歌(21歳)が、7月24日に放送されたラジオ番組「#LOVEFAV」(J-WAVE)に出演。ホラー映画が「絶対!ダメ」な上白石が映画「シャイニング」を観に行ったと語った。 〈中略〉 上白石は「午前十時の映画祭11」で公開されていることから観に行ったそうで、「私、ホラー映画、絶対!ダメで。人が殺されるところとか見られないし、ちょっとうわっていう突発的なホラーも本当はダメなんですけど、『シャイニング』はそういう怖さではなくてヒューマンミステリーみたいな恐ろしさがある映画と聞いたので、勇気を出して行ってみようと思い、この間観に行ってきました。ずっと恐ろしくてひたすら奥歯と眼のまぶたをぐっと潰すように観てました。ずっと不穏な感じがたまらなくて。役者さん方はもちろん、撮り方とか音の使い方が面白くて、面白いホラー映画って音楽が本当に素晴らしいんだなと実感しました。最初から最後までずっと何かが迫り来るような恐怖心を煽るような音楽ばかりで、ずっと不穏な感じ。壊れそうな吊り橋を渡るような恐ろしさがある作品でした。映画の中の構図も幾何学的で、シンメトリーな撮り方が多くて、余計な空白みたいなものがなくて、計算し尽くされた構図だなとずっと思ってました」とコメント。 〈以下略〉 (引用: ハッピーニュース/2021年7月25日 )  上白石さんは「午前十時の映画祭11」で鑑賞されたそうです。東宝シンデレラ出身で事務所が東宝芸能ということなので、その関係で観に行かれたんでしょうか。もしくは「元ネタくらい知っておけ」と指示があったとか? どういう理由にせよ、若い世代がキューブリック作品を発信していただけるのは、ファンとしては嬉しい限り。これからもご活躍を期待しております。

【ブログ記事】ポーリン・ケイルが『2001年宇宙の旅』を悪意満載で評したエッセイ『ゴミ、芸術、そして映画』

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  映画の芸術性が叫ばれているが、私たちが楽しんでいる映画のほとんどは芸術作品ではないということを忘れているかもしれない。 ポーリン・ケイル著 〈中略〉 VIII  『2001年宇宙の旅』は『欲望』の主人公が作ったかもしれない映画だ。巨大なSFセットや装置を作って、それをどう使うかを考えようともしないキューブリックが、本当にやりたい放題やっていると考えると楽しい。フェリーニもまた、「組み立ておもちゃ」を使った映画作りに夢中になっていたが、『8 1/2』のラストで公開された彼の大きな宇宙船のセットは解体されてしまった。キューブリックも本当に作りたい自分の映画を作ることはできなかったが、彼はそれに気づいていないようだ。「アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ」(※B級映画制作会社)の作品をとてもバカげているから好きだという人もいる。キューブリックがそういうバカバカしいことをやって、超SFバカのファンタジーのようなものをやって見せたんだと、『2001年…』を好きになる人もいるかもしれない。ある意味では、この作品は最大のアマチュア映画であり、アマチュア映画のお約束である、監督の小さな(巻き毛の)娘がパパにどんなプレゼントが欲しいかをねだるシーンまで登場している。  『007は二度死ぬ』のタイトル前のシークエンスで、宇宙にいる宇宙飛行士が出てくるが、これは『2001年…』よりもゆるくて自由なスタイルで、ちょっとした大胆さがあり、『2001年』よりも面白かったと思う。それは叙情的な宇宙での死を見つけた時のショックという予想外の要素があった。キューブリックはこのアイデアに夢中になっている。『博士の異常な愛情』の副題『私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』は、風刺的なものだと思っていたが、キューブリックにとっては完全な風刺ではなかったようだ。『2001年…』は、人間以外の生命の高次化に向けた進化の道として、死の道具の発明を祝福している。キューブリックは文字通り、心配するのをやめて爆弾を愛することを学んだ。彼は地球外生命体ゲーム理論のハーマン・カーン博士のように、自分自身の尻に敷かれるようになったのだ。漠然としたこの映画の魅力は、ラリった観客をこの世から連れ出し、優れた神のような心に支配された、優美な宇宙の慰めのビジョンの世界へ連れて行き、そこで主...

【パロディ】『時計じかけのオレンジ』のルドヴィコ療法の被験者にさせられたアニメキャラのみなさまのまとめ

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ちさ先生・・・うっ・・・  『時計じかけのオレンジ』に登場するルドヴィコ療法ですが、「被験者が見たくないものを強制的に見せて洗脳する」という定番の方法として定着している感があります。それが良いのか悪いのか判断はつきませんが、なんにしてもキューブリックの影響力を感じさせるし、また、元ネタを知っていると楽しめる(楽しんでいいの?笑)シーンでもあります。  この記事ではその被害に遭われたアニメキャラをご紹介します。なお、情報提供をTwitterで募ったものもあるので、それはそれぞれ情報提供者のお名前を入れされていただきました。もし不要だと思われた方がいらっしゃいましたらご一報ください。 タイトル:『僕のヒーローアカデミア』 第5期 第100話『新しい力とオール・フォー・ワン』(2021年) 被験者:峰田実 被験者になった理由:セクハラ行為をされた芦戸三奈が、峰田のエロ思考を矯正するため タイトル:『続・終物語』第5話『こよみリバース 其ノ伍』(2019年) 被験者:阿良々木暦 被験者になった理由:アレックスのコスプレをした斧乃木余接に責められたため。 余談:斧乃木余接がメインキャラの『憑物語』OPには「シャイニングカーペット」が登場している。 タイトル:『アイドルタイム プリパラ』第16話『あの地獄にさよならを』(2017年) 被験者:地獄ミミ子 被験者になった理由:アイドル嫌いの地獄ミミ子を矯正するため 情報提供:影松さま タイトル:『CHAOS;CHILD』第8話『錯綜する光と影に惑う思いは』(2017年) 被験者:南沢泉理 被験者になった理由:能力者研究のための実験 情報提供:ソーダフロートさま タイトル:『ダンガンロンパ3 The End of希望ヶ峰学園~絶望編』第9話『雪染ちさは笑わない』(2016年) 被験者:雪染ちさ 被験者になった理由:「絶望」を見せつけ、闇堕ちさせるため タイトル:『Charlotte(シャーロット)』 第2話『かわいい友利奈緒の兄!』(2015年) 被験者:友利一希 被験者になった理由:能力者に対して科学者が行った実験台として 情報提供:Nさま タイトル:『デッドマン・ワンダーランド』第4話『クロウ・クロウ』(2011年) 被験者:五十嵐丸太 被験者になった理由:人殺しを厭うガンタを洗脳するため タイトル:『探偵歌劇 ミルキィホームズ...

【考察・検証】『2001年宇宙の旅』に登場する予定だった宇宙人のデザイン案を検証する

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「ジャコメッティの彫刻のような」宇宙人案(左)。スタッフの間では電力のキャラクターに似ていることから「レディキロワット」(右)と呼ばれていた。キューブリックは気に入っていたそうだ 「エナジーマン」と呼ばれた宇宙人案 「TVマン」と呼ばれた宇宙人案 「ジェリーフィッシュ(クラゲ)」と呼ばれた宇宙人案。これらはスリット・スキャンによって作られた 「ガーゴイル」と呼ばれた宇宙人案。制作にはキューブリックの妻、クリスティアーヌも手伝った テスト撮影された「ガーゴイル」。ガーゴイルには「怪物」という意味もあり、それはクラークの小説『幼年期の終わり』を想起させる ブルース・ローガンによって試作中のグリッド状の宇宙人 「ポルカ・ドットマン」と呼ばれた宇宙人案 「ポルカ・ドットマン」を演じたダン・リクター。リクターは猿人「月を見るもの」も演じている   キューブリックは『2001年宇宙の旅』に宇宙人(異星人・エイリアン・地球外知的生命体、人類の上位的存在)を登場させようと公開ギリギリまで粘っていたというのはよく知られた話です。その登場シーンは「スターゲート・シークエンス」でした。このシークエンスは(1)ワームホールによる空間転移シークエンス、(2)星の誕生・銀河の誕生、もしくは生命の誕生シークエンス、(3)地球外知的生命体との遭遇シークエンス、(4)原始惑星の誕生シークエンスと続き、やがてボーマンは「白い部屋」に到着します。つまりボーマンは「宇宙空間を光速以上のものすごい速さで移動しながら、宇宙が誕生し、宇宙人と遭遇し、その力によって惑星(世界)が誕生する」というプロセスを目撃するのです。そうなると「スターゲート・シークエンス」は、映画のテーマに関わる重要なシーンの連続ということになるのですが、CGのない当時、キューブリックが求める映像のクオリティと映像表現を両立させるためにはあいまいな表現にならざるを得ず、現在に至っても正しく理解されているとは言い難いのが実情です。そして、その「あいまいさ」にさらに拍車をかけたのは、このシークエンスに「宇宙人が登場しない」からなのです(例外的に 「マインドベンダー」 シーンで抽象的に登場してる)。  共同で原案やストーリーを担当したクラークは、意固地になって宇宙人を登場させようとするキューブリックのこの試みには冷ややかで、自著『失われた宇...