【ブログ記事】『ロリータ』の主演女優、スー・リオンの実娘、ノーナ・ハリソンについて

 

スー・リオンと娘のノーナ

 ロサンゼルスで生まれ育ったノーナの人生は、まるでおとぎ話のように始まった。 有名女優のスー・リオン(ロリータ)と(黒人)フットボール選手(ローランド・ハリソン)の娘である。 幼少期は父親が不在で、金髪碧眼の母親との違いに幼い頃から疑問を抱いていた。 しかし、ノーナの生い立ちは決して「普通 」ではなかった。母親は、ノーナが生まれる前に双極性躁鬱病と診断された。母親が何カ月も寝たきりになることもあり、ノーナは家庭内の世話係になった。 12歳のときに母親が再婚し、母親との関係は一変した。ノーナは家を追い出され、13歳になるとハーフウェイハウス(自立生活訓練施設)に連れて行かれた。 同年、母親は彼女を精神病院に入れ、3カ月ほど入院させた。憧れの存在であった母親に裏切られたことで、ノーナの精神は崩壊し、そこから立ち直るには何年もかかることになる。 ノーナは現在、ロサンゼルスに住んでいる。

(引用元:Facebook Nona Truth Seeker/2013年3月4日



 『ロリータ』の主演女優、スー・リオンの一人娘ノーナは1972年5月20日生まれですので、「12歳の時に母親が再婚」というのは、この年表によると1984年にエドワード・ウェザースと結婚したことを指すのだと思います(翌年には離婚)。1985年にスーはリチャード・ラドマンと結婚しましたので、その結婚生活にノーナが邪魔になったのか、スーはノーナをハーフウェイハウスへ追い出してしまいました。どうやらスーにとってこの結婚生活が一番充実していたようで、1994年にはキューブリックに幸せそうな写真を同封した手紙(詳細はこちら)を送っています(結局はまた離婚するのですが)。ですがその笑顔の裏では、娘に対して虐待とも言える行為に及んでいたことになります。

 スーは『ロリータ』の次作『イグアナの夜』撮影中の1963年に、キューブリックに宛てて「ぜひぜひ次の映画に出させてください」という手紙(詳細はこちら)を書いています。その後は素行の悪さからトラブルメーカーの烙印を押され、ハリウッドから干されると「私の人格崩壊は『ロリータ』から始まった」などと言い出します。ところが1994年になると「私が成功したのは、あなたのおかげです」と書いた手紙をキューブリックに送るのですから、「何を言わんや」ですね。

 そんな「毒親」に育てられたにもかかわらずノーナは立派に成長し、現在NONA TRUTH SEEKERの名前で作家、治療家、活動家、真実の探求者として活動しています。サイトにあるブログを読むと、母親に対する複雑な心境が綴られていますが、それと同時に自立には非常に苦労したであろうことが伺える記述もあります。しかしその想いは複雑でも、ロスで開催された『スタンリー・キューブリック展』で、『ロリータ』のフラッグを見つけて「ママ!」と喜ぶあたり、やはりノーナにとってスーは特別な存在だったようです。

 結局スーは2019年12月26日にさびしく逝去してしまうのですが、その死の際にノーナの姿はありませんでした(ノーナ自身もニュースで母の死を知った)。我が子を顧みることなく、愛と恋に生き、5回の結婚と離婚を繰り返したあげく、孤独に死んでいったスー・リオン。せめてノーナの人生だけは幸せであってほしいものですね。

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