【ブログ記事】1994年10月にスー・リオンがキューブリックに宛てた手紙と写真
親愛なるスタンリー
あなたに届くかどうかわからないから、長い手紙にはならないでしょう。何から書けばいいのでしょう? さて、私はもうスー・リオンとは名乗っていません。この10年間幸せな結婚生活を送り、今はスーリン・ラドマンと名乗っています。私はリチャードという素晴らしい男性と結婚しています。彼は放送技術者です。彼はここロサンゼルスの二つの大きな放送局のチーフエンジニアです。私たちの結婚はまるで夢のようで、私はとてもとても幸せです。
私はほとんどの時間をガーデニングや家の手入れに費やし、私たちの素晴らしいジャーマンシェパードドッグ、パックスと遊び、トレーニングしています。
あなたが受け取ってくれるかどうかわからないのに、この手紙を書くのは本当につらいことです。この手紙を書くのは本当に大変です。私はよくあなたのことを考え、あなたがどうしているか、幸せかどうかを考えます。
私の人生は今、とてもシンプルなものです。そして、私はそれが好きなのです。私はいつも、唯一の理由はそれだと信じています。私が成功したのは、あなたのおかげだと。
私たち夫婦の最近の写真を送りますので、あなたに届きますように。もし届いたら、お返事をください。クリスティアーヌとあなたに愛を込めて。すぐに連絡が来ることを願っています。
スーリン(スー)
内容は近況報告とキューブリックへの感謝が綴られています。この時期、スーはラジオ・エンジニアのリチャード・ラドマンとの結婚10年目で、とても幸せな様子が伺えます。「もうスー・リオンとは名乗りません」とし、スーリン・ラドマンとしています。そんな結婚生活も結局は2002年に破局するのですが。(詳細はこちら)
この1994年という時期は、それまで4回も結婚と離婚を繰り返した挙句にやっと相手にも恵まれ、スーにとって最も幸せな時期だった事はまちがいないでしょう。それに経済的にもビデオ化された『ロリータ』からそれ相応のギャランティがスーの懐を潤していたはず。「私の成功の理由はあなたがいたから」なんて殊勝な事を書いているところを見ると、そんな近況が読み取れます。「私の人格崩壊は『ロリータ』から始まった」などと言っていたのに随分な変わりようですね。それは手紙の最後を「お便り待ってます」で結ぶあたりにも伺えます。
実際にキューブリックが返信を書いたかどうかは定かじゃありませんが、こういった「裏切りと手のひら返し」にしょっちゅう遭っていたキューブリックは、この手紙を受け取って何を思ったでしょうね。その後も『ロリータ』はDVD、BD化されるたびに「キューブリック作品」というブランド力で世界中で売れまくっています。主演女優の老後の心配をさせないくらいの稼ぎは十分あるでしょう。インタビューなどもう受ける気もないようですので、せめて自叙伝くらい書いてもらってその波乱万丈な人生を記録に残すべきじゃないでしょうか。