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  テキサス州オースティンで開催されたファンタスティック映画祭(9月22日~29日)に、興味深いドキュメンタリー映画が出品された。タイトルは「King on Screen(原題)」。テーマは“ホラーの帝王”スティーブン・キングの映像化作品だ。今回、監督を務めたダフネ・ベビールが単独インタビューに応じてくれた。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

〈中略〉

 キングは、自身の原作を基にした映画「シャイニング」(スタンリー・キューブリック監督)を毛嫌いしていた。その理由のひとつは、キングにとって、原作小説がとても個人的な作品だったから。キング作品の読者も、ストーリーを変更したキューブリック監督の映画版に対して、公開当初、拒否反応を示していた。やがて、キング自身も不満をあらわにし、自らテレビのミニシリーズ「シャイニング」を手がけることになった。

 「原作は、キングにとって(まるで)我が子のように感情的な絆を持った存在。彼は、フィルムメイカーの(思い通りの)脚色のために、映画化権を与えていました。映画版『シャイニング』が自由な解釈と方向性をとり、そこに満足できなかった事実を突きつけられたことで、キング自身の方法によって、作品を修復したかったのだと思います。キングの作品が成功していなかった時代について、『King on Screen(原題)』で語っているパートを見てみると、キングの視点がわかるはず。テレビ版「シャイニング」を脚色することができたのは、自らの原作に近いから。キングの脚色では、主人公ジャック・トランス(映画版ではジャック・ニコルソンが演じた役)が正気を失っていくさまを、視聴者が完全に感じ取ることができると思います。キャラクターの進化(=変化)を探求する時間があるため、ミニシリーズで描いた点も良かったと思います」

〈以下略〉

(引用元:映画.com/2022年10月4日



 スティーブン・キングはジャック・ニコルソンのキャスティングに際して「彼だと最初から狂っているように見える」と批判し、自身が監修を務めたTVドラマ版ではスティーブン・ウェバーをキャスティングしました。ですが、キングの言葉を引用するなら「彼だと最後までいい人に見えてしまう」という結果になってしまいました。つまり「いい人が狂った演技をしているだけにしか見えない」ということです。これではちっとも怖くなるはずがなく、それはホラー映画としては成立しないことを意味します。

 そう、TV版『シャイニング』は4時間も使って出来の悪いコメディを観させられているようなものなのです。ウェバーの表情にも、所作にも、目にも狂気は宿っていません。それが肝心の、おそらくキングが小説で一番描きたかったであろうラストの「愛する息子への本心の吐露」のシーンが「軽く」なってしまっていまっている原因です。加えてダニー少年役の利発さを感じさせないゆるい表情・・・小説映像化作品のダメな見本とさえ言えるでしょう

 このドキュメンタリーの監督は「ジャック・トランスが正気を失っていくさまを、視聴者が完全に感じ取ることができると思います」と擁護していますが、感じ取ることはできても「面白いか?」と言われればちっとも面白くありません。小説だろうと映画だろうと、その媒体の特性を最大限に生かした表現で「面白く」しないとただ退屈なだけです。キングは小説版にこだわるあまり、その原則を完全に忘れてしまいました。まあ、それぐらいキングのキューブリック版に対する失望と怒りは大きかったのだろうとは思うのですが、その結果がアレなら全く擁護はできないな、というのが偽らざる本音です。

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