【インスパイア】『ミッション・トゥ・マーズ』
なんと申せばよいのやら、トンデモ説をもっともらしいCGでゴリ押しした、ブライアン・デ・パルマ監督による「観るに耐えないほどイタい脱力系SF映画」。
いつぞやのNASAの火星探査で撮影され議論を呼んだ、人の顔に見える岩の写真をヒントに、地球・火星同起源説を唱え、『2001年宇宙の旅』、『未知との遭遇』、『アビス』風味で仕上げる(あくまで「風味」だけ)というアイデアも底が浅いが、クルーの数を減らしたい意図がミエミエの「単なる事故」や、友好的とは言いがたいエグい嵐で危機感を煽った割に、突然手のひらを返して優しく地球人を迎える火星人の強烈な違和感(CG火星人は言わずもがな)、あげくにゲイリー・シニーズは突然「彼らと一緒に行く」と言い出す始末(動機はあるにはあるのだが弱い)。
豪華なCGで押しまくれば脚本のアラなんて気にならないさ、とデ・パルマが言ったかどうかは分からないけど、この監督にSFを撮る資格のない事だけははっきりしました。『2001年…』とプロットは似通っていても、監督の画作りひとつでこれだけ駄作になってしまうという事は、キューブリックがいかに偉大かよくわかる。クラークの『失われた宇宙の旅2001』によると、けっこうこの『ミッション…』と共通点が多く、雰囲気も似通っているため、一歩間違えば『2001年…』だってこうなっていた可能性があったのだ。
そういう意味ではキューブリックが撮る事を拒否した『2001年…』と思って観るのもありかもしれない。遠心機のシーンはそれなりに出来は良いし。でも・・・もうデ・パルマにはSF撮って欲しくないです。ホントに。