【考察・検証】枕元の仮面のカット割りが持つ意味

  『アイズ ワイド シャット』のラスト近く、アリスの枕元に仮面が置いてあるシークエンスで、一連のカットが(1)ビル深夜の帰宅。(2)アリスの枕元に仮面。(3)ビル寝室に入り、仮面に気付く。の流れになっていた事に対し、「先に仮面を見せたらインパクトが弱い」「カット割りが素人くさい、ミスでは?」等の批判か少なからずありました。ちょっと待って下さい。「何よりも編集作業を好む」、「映画とは編集が全てといっても言い過ぎでは無い」と言っていた編集大好きのキューブリックがそんな初歩的なミスなんかをする筈なんかありません。これは、計算されてやっています。

 理由は(1)『シャイニング』のタイプライターのシーンを想起させる。(2)ここで余りにもショッキングな演出を施すとラストシーンのインパクトが薄れる。の2つではないかと考えます。

 実際、『シャニング』ではウェンディがタイプ用紙を見つめるシーンを粘って見せ、緊張感が最高潮に達したところで「タイプされた文字」を見せる事によって最高の恐怖感を演出しています。この方法論を使う事だってできた筈です。

 でも、実際に採用したのは「先に仮面を見せる」でした。原作では、このあと全てを妻に告白し、寝室で新しい一日の夜明けを迎えたところで終わっていますが、キューブリックはおもちゃ屋のシークエンスを付け加え、ラストを「捨てセリフ一発」で終わらせています。このラストシーンのインパクトを弱めない為にも、あえて前のシークエンスでは、衝撃度を弱める編集をしたのではないでしょうか。

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