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  キューブリックが撮影直前まで監督する予定だった、マーロン・ブランド監督・主演の西部劇。リオ(ブランド)は相棒のタッド(カール・マルデン)と組んで銀行を襲撃、まんまと大金をせしめるが、タッドに裏切られ一人投獄される。5年後、脱獄したリオはタッドを探し出し復讐しようとするが、強盗から足を洗い保安官になっていたタッドは結婚し、妻と義理の娘ルイザの三人で暮らしていた。本心を隠したまま、タッドに近づいたキッドは、祭りの夜、ルイザと関係し妊娠させてしまう。だが、ルイザを本当に愛し始めていたキッドは、復讐と愛とどちらを選ぶか悩み始める・・・というストーリー。

 銀行強盗、保安官、裏切りと復讐、決闘、そしてラブシーンと、西部劇お決まりのパターンが詰め込まれた平凡な作品。脚本家がサム・ペキンパー、カルター・ウィリンガム+キューブリック、カルロ・フィオレ、ガイ・トロスパーと次々に入れ替わったせいなのか、全体的にリズムの悪い、冗漫な印象が残る。

 また、リオが受けた刑務所内での「屈辱的な扱い」がさっぱり描かれていないため、リオの復讐心がどれほどのものか全く伝わってこないし、「銀行襲撃の決行日が地元の祭りだったためやむなく中止」というなんとも間抜けな設定のため、ここまでの緊張感がプッツリ。それから繰り広げられる恋愛模様もだらだらと冗漫で、だんだんリオが「名の知れた凄腕の銀行強盗」に見えなくなってしまう。そしてどっちつかずの中途半端なラストシーン・・・。この映画の製作過程を象徴するかのような、なんともしまらないお話だ。

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