【撮影・技術】ステディカム(Steadicam)
それまでの移動撮影は、ドリー(台車)やクレーンに載せてレールの上で動かすというのが一般的で、この方法だと、レールやクレーンの設置をしなければならず、レールがばれないようアングルも限定され、しかもレールやクレーンの動く範囲でしか撮影ができなかった。手持ちで撮影する方法もあるが、重いミッチェルカメラだと、どうしても手ブレが起きやすく、手ブレの効果を意図的に使う時以外は現実的ではない。しかし、このステディカムを使うと、手持ち撮影にもかかわらず全く手ブレが起きないので、ドリーショットのような効果がレールを敷く手間も、アングルの限定もなく、またレールが敷けないような起伏の激しい場所や、狭い場所での撮影も可能になった。
原理は、カメラをショックアブソーバーのついたアームにのせ、それをショルダーベルトで身体に装着するもので、カメラマンの動きによる振動を、カメラに伝わる前に相殺させることができる。弱点と言えばこの装置の重さと操作の難しさで、『シャイニング』の迷路のシーンでは、キューブリックの指示で重い装置を担いだまま、長い距離を何度何度も全力で走らされた開発者のギャレット・ブラウンがへとへとになってしまったという苦労話も伝わっている。
キューブリックはこのステディカムの革新性に夢中になり、その開発にもアドバイスしたそうだ。『メイキング・ザ・シャイニング』では、ステディカムを駆使して撮影している様子を観る事ができる。