【セット】生垣迷路(maze)
『シャイニング』で、オーバールック・ホテルの裏側にある生垣の迷路。原作では生垣の動物が動き出して襲ってくるのだが、そんな物を映像化しても陳腐になるだけ、と描写を拒否したキューブリックが「ジャックの精神が錯乱していく暗喩にもなる」と代わりに採用した。
ジャックの狂気は生垣迷路の模型の中にウェンディとダニーの姿を見る(霊の視点がジャックの視点と同化する)事から始まり、最終的にはその迷路の中で凍死し、心身ともに霊(ホテル)と同化する事で終わる。迷路の暗喩はホテル内部もそうであり(ウェンディがホテルを案内された際「まるで迷路ね」と感想を漏らす)、カーペットの柄にもそれは反映されている。
生垣迷路を無事脱出したウェンディとダニーが、最終的にホテルからも脱出できたのは当然だし、ジャックがダニーの単純なトリックに気付かず凍死したのも当然の帰結。物語は始まった時から「仕組まれて」いて、「仕組まれた」通りに終わる。『シャイニング』とはそういう物語なのだ。