【登場人物】スターチャイルド(Star Child)
『2001年宇宙の旅』のラストシーンでボーマンが変貌した胎児のこと。ボーマンが新人類となって生まれ変わった姿。猿人がモノリスの力によって「地球」という環境に適合した「人類」に進化したのと同様に、人類が同じくモノリスの力によって「宇宙」という環境に適合した「新人類」に進化した。小説版では猿人→人類の時も、人類→新人類の時も同じ言葉、「だが、そのうち思いつくだろう」で締めくくることによって、それを示唆している。
当初のラストシーンはボーマンが異星の宇宙船のかたわらに立っている案だったが、1965年10月3日(撮影開始はこの年の年末)にクラークが「ボーマンが子供へ逆行し、結末では赤んぼうとなって軌道上に浮かぶという図」を思いつく。そうなった理由は「成長段階における彼の自己イメージ」「宇宙意識にもユーモア感覚があるのだろう」とクラークは説明している。小説版はクラークの説明で執筆されているが、キューブリックはこの説明に納得せず、結果次々と老いていくボーマンがやがて死の床につき、死に、そして転生するという描写になっている。スターチャイルドの誕生をクラークは「退行」、キューブリックは「転生」としたが、その真意はそれぞれの鑑賞者の判断に委ねられている。
小説版ではスターチャイルドが地球衛星軌道上に浮かぶ核爆弾衛星を「意志の力」で爆発させるシーンがあるが、キューブリックの前作『博士の異常な愛情』の結末にに過ぎているという大方の意見で、撮影シナリオの段階までいったものの、撮影されなかった。
胎児はボーマンを演じたキア・デュリアに似せて作られた。模型は合成樹脂で制作され、デザインはトニー・マスターズ、造形はリズ・ムーアが担当した。
加筆修正:2018年11月1日