【俳優】スキャットマン・クローザース(Scatman Crothers)

 『シャイニング』で料理長ハロランを演じた。スキャットマンにとって撮影は大変過酷なものだったようで、キッチンでのダニーとの会話のシーンはなんと148テイクも繰り返し、更に殺害されるシーンは40テイクにもなって、最後にはジャック・ニコルソンに止められる始末であった。メイキングのインタビューでは、ダニーとの共演について問われると大粒の涙を流しているが、これを額面通り「感動の涙」とはとても捉えることはできない。よっぽど共演場面の撮影が辛かったんじゃないかと想像してしまう。また、キューブリックについて、こんな詞を残している。

ロンドン住まいの男あり
映画を作って、世に名高く
そうさ本当に有名だ
その名はスタンリー・キューブリック
何でもやる、何でもやる
スタンリーは何でもやってしまう。
彼は前を見る男
死者再生も信じさす
編集は全部自分でやる
特技を持った大天才
何でもやる、何でもやる
言ったろ、何でも彼はやる
(引用:『ミシェル・シマン キューブリック』)

 これも、一見キューブリックを讃えているようだが、その実は暗にその執拗なこだわりぶりを批判しているようにも読める。もしそうだとしてもキューブリックを批判する気にはなれない。なにしろ現場で一番のプレッシャーを抱えていたのはそのキューブリック他ならないからだ。ただこのときスキャットマンは既に69歳。「もうちょっと気を使ってあげなよ」とは思うのだが。

 他の主な出演作は『ジョニイ・ダーク』('54)、『ならず者部隊』('56)、『底抜け男性No.1』('65)、『ボクサー 』('70)、『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』('72)、『黒帯ドラゴン 』('74)、『おかしなレディ・キラー』('75)、『大陸横断超特急』('76)、『ラスト・シューティスト』('76)、『名探偵再登場』('78)、『ブロンコ・ビリー』('80)、『超能力学園Z』('82)、『トワイライトゾーン/超次元の体験』('83)、『セカンド・チャンス』('83)。ジャック・ニコルソンとは『カッコーの巣の上で』('75)で共演している。また、日本でも話題になったTVシリーズ『ROOTS/ルーツ 』('77)にも出演している。

 1910年5月23日アメリカ・インディアナ州出身、1986年11月26日死去、享年76歳。

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