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 映画『時計じかけのオレンジ』で主人公アレックスを演じ大ブレイクを果たしたマルコム・マクダウェルが、巨匠スタンリー・キューブリック監督との関係を語った。

 初めてこの映画のことでキューブリック監督に会ったとき、どのように役柄や作品について説明されたのかと聞かれると、マルコムは「聞いたらショックを受けるよ。彼はまったく何も説明しなかったんだ。なぜなら、知らなかったからだよ」と驚きの発言。監督は何も説明しなかったそうだ。

 「スタンリーは、いろいろな意味でとてもち密だった。でも、彼はものごとを説明するのがうまくなかったんだ」とマルコム。「一度僕は彼に『スタンリー、このシーンに何かアイデアはあるかい?』って聞いたことがある。そしたら、彼はただ僕を見て『マルク、だから僕は君を雇ったんだよ。僕は、RADA(王立演劇学校:ロイヤル・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツの略)じゃないからね』と答えた。それで僕は『ほら、このスケジュール表を見て。『監督、S・キューブリック』って書いてあるよ。ちょっとディレクションをくれてもいいんじゃない?』と言った。彼はただ笑っていたよ」と巨匠の意外な一面を明かし、「大抵の監督なら、一緒に1時間ほど話し合ったりして何かを考えつくけどスタンリーはそうじゃなかった。『僕に見せてくれ。やってみせてみろ』というわけだ。ある意味、彼は(役者として)最高の贈り物をくれたんだよ」と語った。

 公開後、劇中の過激な暴力やセックス描写に刺激を受けて、少年が殺人を犯すという事件がイギリスで起こり、27年にわたって本作はイギリスで上映されたことがなかった。脅迫状が届くなどして、家族の身を心配したキューブリック監督が上映を差し止めていたそうだ。しかしマルコムはこの作品がこれほど議論を巻き起こすことになるとは思ってもいなかったそうで「僕は素晴らしいブラック・コメディーを作っていると思っていたし、実際そうだった。だから、公開された時、多くの観客がユーモアをわからないことにショックを受けたんだ」と語った。また、「数年前に観客と一緒にこの映画を見たんだけど、その時の観客は、僕がおかしいと思ったすべてのシーンで笑っていたよ」と当時と今の違いにも言及。

 一緒に親しく仕事をした者として、そしてフィルムメーカーとしてのキューブリック監督をどう評価しているのか尋ねられると「彼は風刺家で、人間性について特に興味を持っていなかったね。彼の映画には、人間性というのはほとんど出てこない。でも、彼の映画は、信じられないほど知的なものなんだ。彼は、とびきり素晴らしい風刺家だよ。彼はほとんどジョン・フォード監督と同じくらい高いところにいる。変わった詩人だった」と表現し「彼はすべてのジャンルにおいて最高の作品を作ったんだ。反戦映画『突撃』に『ロリータ』。『博士の異常な愛情』は僕にとって史上最高の作品の一つだよ。驚くべき風刺作品だ。時代劇の『バリー・リンドン』に、ホラー映画『シャイニング』。そして、もう一本の反戦映画(『フルメタル・ジャケット』)もね」と絶賛。

 ただ、当時マルコムが20代という若さだったこともあるだろうが、撮影が終った後、キューブリック監督と会ったのは10回に満たないくらいだと言う。本作に抜てきされるきっかけとなった、映画『if もしも‥‥』のリンゼイ・アンダーソン監督とは、「素晴らしい友だちになった」というマルコムは「『時計じかけのオレンジ』が終った後、スタンリーとも、映画を撮っている時と同じような関係を持てると思い込んでいた。でも、彼は編集とかでいつも忙しく、電話で話すこともほとんど出来なかったんだ」という。

 とはいえ、マルコム・マクダウェルとスタンリー・キューブリックの出会いは、映画史上に永遠に残る『時計じかけのオレンジ』という作品を生み出した、運命的としか言えないものだった。キューブリックはものすごい量のテイクを重ねることで有名な監督だったが、『時計じかけのオレンジ』のころは、まだそういうことはなく、マルコムが何十回も同じ演技をさせられるようなことはまったくなかったそうだ。(吉川優子)

(引用:シネマトゥデイ映画ニュース/2011年6月23日



 これまで繰り返し語られて来たエピソードです。念のためにスクラップしておきます。

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