【考察・検証】『時計じかけのオレンジ』の原題『A Clockwork Orange』の『A』持つ意味

 邦題の『時計じかけのオレンジ』では重要でないので軽視されているが、実はちゃんと意味のある『A Clockwork Orange』の『A』について検証してみたい。

 もちろん不定冠詞の『A』なのだが、アレックスの『A』という意味も含んでる。原作には良い子のふりをするアレックスが『A』というイニシャルの入ったセーターを来て昼間の街に出かける、というシーンがある事からそれが伺える。またこのタイトル名自体「『A』が『Clockwork Orange』になってしまう」という暗喩にもなっている。

 その事はポスターなどで一番ポピュラーなデザイン、すなわちアレックスが三角形の中からノズを突き出して笑っている構図のものでも確認できる。この三角形自体が『A』を表していて、それはアレックスの『A』であり、また『A Clockwork Orange』の『A』としての役割も果たしている。そうなると必然的に『Clockwork Orange』のロゴは『A』の下部に配置するのが正しいという事になる。

 ポスターや広告など、この意図が厳密に反映されていない場合も多々あるので、このアイデアに気付いていない人も多い。広告や広報にもこだわる事で有名なキューブリックがどこまでコントロールできていたか不明だが、この三角形の『A』の意匠を省いて『Clockwork Orange』のロゴだけ配置したり、『Clockwork Orange』と『A』を抜いて表記するのは明らかに間違い(海外のネット上ではACOと略すのが一般的なようだ)なので、そこだけは注意したい。

TOP 10 POSTS(WEEK)

【台詞・言葉】ハートマン先任軍曹による新兵罵倒シーン全セリフ

【考察・検証】キューブリック版『シャイニング』でオーバールック・ホテルに巣食う悪霊の正体とは

【台詞・言葉】『時計じかけのオレンジ』に登場したナッドサット言葉をまとめた「ナッドサット言葉辞典」

【関連記事】1972年1月30日、ザ・ニューヨーク・タイムス紙に掲載されたキューブリックのインタビュー

【関連記事】音楽を怖がってください。『シャイニング』『2001年宇宙の旅』『アイズ・ワイド・シャット』・・・巨匠キューブリックが愛した恐怖クラシック

【考察・検証】『2001年宇宙の旅』に登場する予定だった宇宙人のデザイン案を検証する

【インスパイア】『時計じかけのオレンジ』と「アイドル」に親和性?『時計じかけのオレンジ』にインスパイアされた女性アイドルのPVやMVのまとめ

【関連動画・関連記事】1980年10月24日、矢追純一氏によるキューブリックへのインタビューとその裏話

【関連記事】早川書房社長の早川浩氏、アーサー・C・クラークと一緒に『2001年宇宙の旅』を鑑賞した思い出を語る

【パロディ】『時計じかけのオレンジ』のルドヴィコ療法の被験者にさせられたアニメキャラのみなさまのまとめ