【撮影・技術】シンメトリー(Symmetry)
左右対称の意。キューブリック作品の特徴の一つで、左右対称の構図が随所に現れる。セットや人物など、わざわざきっちりと左右対称に配置することにより、そのあまりにも「人為的すぎる配置や配色」でスクリーンに独特の違和感を生み出している。キューブリックは『2001年宇宙の旅』の白い部屋に現れたモノリスのシーンや、『シャイニング』のハロランがシャイニングを感知するシーンにこの構図を使い、観客に「何か得体の知れない現象が起こっている」という印象を与えたい場合に好んで使っているようだ。『フルメタル・ジャケット』でのトイレシーンは、実際の訓練所のトイレでは片側にか便器が並んでいないにも関わらず、わざわざ両側に配したのは、ここで行われた「パイルの狂気」のシークエンスに異常性を強調したかったからだと思われる。
尚、「一点透視図法」とは配置や配色の整然さや奥行き感が違うので分けて考えるべきだが、両方を合わせた使い方(『2001年…』のスターゲート出現シークエンスなど)もしている。