【ロケーション】なるべく近場でロケーション
キューブリックは『スパルタカス』以降、海外ロケを試みていた時期もあったようですが、『博士の異常な愛情』、『2001年宇宙の旅』、『時計じかけのオレンジ』と遠方でのロケが不要だったり、脅迫のせいもあり、『バリー・リンドン』の頃にはすっかり出不精になってしまっていました。その『バリー…』でプロダクション・デザイナーのケン・アダムに出した注文が「自宅から20マイル(32km)以内でのロケ」。キューブリックにとってロケは「32km」が限界と考えていた事が伺えます。つまり「日帰り撮影の圏内」ですね。
もちろん『バリー…』ではそれは不可能だったので、しぶしぶ「アイルランド・オデッセイ」(長期アイルランドロケ)を了承するのですが、それがトラブル続きだった事もあり、後期3作は舞台が全てイギリスでなかったのにも関わらず『シャイニング』では全てセット(一部第二版がアメリカロケ)、『フルメタル…』はイギリス南部のみ、『アイズ…』ではセットとロンドン・ロケ(一部第二版がアメリカロケ)で撮影してしまいました。
まあキューブリック本人や家族はそれで良いのですが、つきあわされたスタッフはさぞかし大変だったでしょう。特にケン・アダムは精神崩壊寸前まで追い込まれてしまいました。この件に限らず、キューブリックは夢中になりすぎると他人を疎かにする傾向があったようです。第三者はこれを「キューブリックらしい」で片付けられますが当事者は・・・イヤ、ごめんですね(笑。