【関連書籍】映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで/町山智浩 著
映画評論家の町山智浩氏による映画解説本。タイトルは『映画の見方がわかる本』だが、中身は関連書籍やインタビュー、メイキングなどの既存情報の繋ぎ合わせであることに注意したい。キューブリック作品に関して言えば『2001年宇宙の旅』についてはキューブリック自身がプロットをインタビューで明かしているし、『時計じかけのオレンジ』についてもよく知られた情報ばかり。ファンなら既知の情報が多いので特に入手の必要はないだろう。
記載されている情報は各作品の裏話や制作エピソードの紹介なので、正確にこの本のタイトルを記するとすれば『あなたの知らない名作映画のウラ情報』といったものになると考えられるが、あえてこういったタイトルを採用したのは、出版不況が叫ばれ始めた2000年代初頭に、なんとしてでも本を売らんがためなのだろう。その当時から比べても現在の出版界の現状は暗澹たるもので、シネコンが全国的に普及した現在は、映画を取り巻く状況も「鑑賞」から「消費」へと劣化しているように感じる。そんな時代に「映画を深く知る」という「見方」をもたらせてくれる本書は、映画初心者の最適なガイドラインの書として一定の評価が可能になってきている。
そういうニーズもあってか、古本としては割高な金額で取引されているようだ。古本にその値段はちょっと・・・と感じるようであれば図書館でもよく見かける本なので一度手に取ってみて、映画を「消費」するのではなく「鑑賞」するきっかけとして一読をおすすめしたい。
2016年12月22日:レビュー修正・評価変更