【撮影・技術】クリティカル・リハーサル・モーメント(Critical Rehearse Moments)

「CRM」を求め何日間も悩み続け、撮影が止まるということも珍しくない

 キューブリックが撮影の際、アドリブを促したり、何度もテイクを重ねる理由はクリティカル・リハーサル・モーメント(リハーサルの決定的瞬間)を求めてのことです。つまり素晴らしくクリエイティブなアイデアを得る瞬間の事です。キューブリックは『時計じかけのオレンジ』でアレックスが『雨に歌えば』を歌いながら暴力を振るうというアイデアや『シャイニング』におけるジャック・ニコルソンの演技を例に挙げています。『アイズ ワイド シャット』でもキッドマンはキューブリックにリハーサル中「我々は何かを掴んだね」と言われたと証言しています。

 ちなみに『クリティカル・リハーサル・モーメント』を略すと『CRM』となり、『博士の異常な愛情』に登場した暗号封鎖回路『CRM114』と同じになります。キューブリックがいつ頃からこの『クリティカル・リハーサル・モーメント』の用語を使い始めたかは分かりませんが、ダブルミーミングが好きなキューブリックがこの偶然の一致を気に入っていたのは確かで『2001年宇宙の旅』ではスペースポッドの形式番号として(作品内では確認できず)、『時計…』では血清の型番号として、『アイズ…』では遺体安置所がC棟1階14号室として登場(作品内では確認できず)しています。また、他の映画監督にも影響を与えていて、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオープニング・シークエンスは特に有名です。

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