【名曲】マスケッド・ボール(Masked Ball)
イギリス出身の女流ビオラニスト、ジョスリン・プークによる『マスケッド・ボール』、つまり『仮面舞踏会』というタイトルのこの曲、『アイズ ワイド シャット』で例の怪しげな儀式のBGMでナイチンゲールが演奏しているように使用されていますが、バックには意味不明な言語が流れています。これは聖書のヨハネ13、34章をルーマニア語を逆から詠唱した物だそうです。
まあ、また陰謀論者がいろいろ難癖をつけてきそうではありますが、これは純粋に劇伴音楽と考えてよさそうですね。キューブリックは『アイズ…』では具体的な宗教色、とくにユダヤ教を想起させないように腐心しています。そこで具体的な宗教を想起されにくい、意味不明言語と混沌としたメロディのこの楽曲を使用したのではないでしょうか。
アルバム『Flood』(1999)にはリミックス・ロング・バージョン収録です。このアルバムの『アイズ…』使用曲では他に『ミグレーション』がリミックスで収録されています。この曲は前作『Deluge』(1997)で既発表済で、こういった事実を繋ぎ合わせると『ミグレーション』を気に入ったキューブリックがプークに映画での楽曲使用をオファーし、プークは『アイズ…』用に『ナヴァル・オフィサー』、『ザ・ドリーム』、『マスケッド・ボール』を書き下ろし提供、その内『マスケッド・ボール』を自身のアルバムに再録した、という経緯が想像できます。
プークはその後映画のサントラ関係の仕事が多くなったようです。キューブリックと仕事をするというのはこういう事なんですね。その影響力、絶大です。