【交友録】テリー・セメル(Terry Semel)
キューブリックに全幅の信頼を置いていた元ワーナーブラザースのCEO。その後2001年4月に米Yahoo!のCEOに就任しましたが、ネット上では「米ヤフーを凋落させた元凶」としてすこぶる評判が悪いです。でもキューブリックファンにとっては「キューブリックに好きに映画を撮らせてくれたいい人」という評価が決定的になっています。
もちろんキューブリックの興行的価値を熟知した上での、経営者的判断に他ならないのですが、当のキューブリックはそのセメルに対して
「電話してこっち(イギリス)に来てもらう。どうなるかというと、やつは大急ぎでこっちに飛んでくる。それでロンドンにホテルをとってやって24時間くらいは電話もしないで放っておく。そうすると、やつは体を休めて元気になると同時に〈中略〉話を聞きたくてうずうずしてくる。次にどうするかというと、迎えの車を出してこの家に彼を連れて来させ、椅子を勧めて、脚本を手渡して読んでくれと言う。そして、これが今度私が撮りたいと思っている映画だと告げる。やつはどうすると思う?わざわざイギリスまでやって来て、私の自宅で私の目の前に座っているんだ。どうしょうもないってわけさ」(引用:『アイズ・ワイド・オープン』)
とラファエルに対してその策略家ぶりを披露しています。まあこれはキューブリックなりの照れの裏返しのような気がします。ワーナーには多大な恩義を感じている旨の発言はありましたし。キューブリックは自分を信頼してくれた人に対しては最大限恩義を尽くす義理堅いところがあったようです。そのかわり自分を裏切った人間に対しては徹底的に辛辣でしたが。
1943年2月24日生まれ、アメリカ・ニューヨークのブルックリン出身。