【考察・検証】『フルメタル・ジャケット』の幻のシーン「生首サッカー」は真実か?を検証する

キューブリックはこの後ジョーカーが銃で少女の脳天を撃ち抜くシーンを、ジョーカーの顔のアップで回避した

 『フルメタル…』で少女スナイパーを射殺後首を切り落とし、その首でみんなでサッカーをした、というシーンがあったという話が伝わっていますが、一体何処まで本当なのか、実ははっきりしたことは分かっていないようです。検討されたが採用されなかったという話から、元の脚本にはあったという話、さらには撮影されたがボツになったという話まで様々です。

 確実なのは、原作小説にアニマル・マザーがナタで首を切り落とし、「胴体と離れて安らかに眠りやがれ、このくそアマ!」と言って溝に首を投げ捨てるシーンがある事。そしてその生首〈閲覧注意〉と首のない遺体の試作が実際に行われていた事、この2点だけです。

 現存する試作の生首を見るとサッカーをして蹴られたように汚れていないので、撮影に使われたものではないようです。もちろん撮影に使った物は別にあり、それを使った可能性がありますが、個人的にはその可能性は低いと思っています。

 何故なら肝心の俳優たちからそのシーンに関しての直接の証言が全くないからです。また「首をサッカーボールにして遊ぶ」というシーンがどうしてもそれまでの『フルメタル…』のトーンと合致しない気がするからです。キューブリックはタブーを恐れず挑戦する監督でしたが、無用なレイティングをされて視聴制限を掛けられてしまうのも避けたがっていました。そんなキューブリックが原作にもない残虐シーンを撮影したとはとても思えません。それは狙撃兵射殺の瞬間をジョーカーの顔のアップで回避した事からも明白です。

 サッカーの話はアイデアとしてはあったかも知れません。ひょっとしたら台本には載った可能性はありますがあったとしてもそこまでだと思っています。ただ、原作にある断頭シーンは撮影を検討したので、生首と切断遺体の試作がされたのではないかと推察しています。でもどうしてもリアルな生首に見えなかったとか、残虐シーンを入れる事でレイティングを上げられる事を嫌ったとかそういう理由で採用されなかったのではないでしょうか。

 これも新たな情報が分かれば追記したいと思います。

TOP 10 POSTS(WEEK)

【インスパイア】『2001年宇宙の旅』のHAL9000に影響されたと思われる、手塚治虫『ブラック・ジャック』のエピソード『U-18は知っていた』

【関連記事】キューブリックは『時計じかけのオレンジ』のサントラにピンク・フロイドの『原子心母』の使用を求めたがロジャー・ウォーターズが拒否した話をニック・メイソンが認める

【関連記事】撮影監督ギルバート・テイラーが『博士の異常な愛情』の撮影秘話を語る

【関連記事】英誌『Time Out』が選ぶ「映画史上最高のベストセッ●スシーン50」に、『アイズ ワイド シャット』がランクイン

【関連記事】抽象的で理解の難しい『2001年宇宙の旅』が世に残り続ける理由

【台詞・言葉】ハートマン先任軍曹による新兵罵倒シーン全セリフ

【オマージュ】キューブリックの孫、KUBRICKの『MANNEQUIN』のMVがとっても『時計じかけのオレンジ』だった件

【台詞・言葉】『フルメタル・ジャケット』でのハートマン軍曹の名言「ダイヤのクソをひねり出せ!」のダイヤとは「●ィファニーのカフスボタン」だった件

【関連記事】2021年9月30日に開館したアカデミー映画博物館の紹介記事と、『2001年宇宙の旅』の撮影プロップ展示の画像

【インスパイア?】「白いモノリス」らしき物体が登場するピンク・フロイド『ようこそマシーンへ(Welcome to the Machine)』の公式MV