【DVD/BD】『バリー・リンドン』BDのアスペクト比問題を検証する

自宅ガレージで『バリー・リンドン』を編集作業中のキューブリック

 未だにネットの各所で議論が絶えないBDのアスペクト比問題ですが、今回は『バリー・リンドン』について検証してみたいと思います。

 『バリー…』の撮影時(オリジナル)アスペクト比ですが、様々な資料から撮影サイズが1:1.77で決定されたようです。それによってキューブリックの元アシスタントであるレオン・ヴィタリがこのサイズでBD化するようワーナーに指示したという事です。レオンはワイドTV【16:9】(1:1.78)≒1:1.77なのでピラーボックスなしで問題ないと判断したようですが、この決定は様々な波紋を呼んでいて「映画館で確かに1:1.66で観た」という証言が後を絶ちません。するとキューブリックが映画館に「原則1:1.66で上映せよ」という指示書が発見されてしまいした(下記画像)。この事から現行のBDの【16:9】(1:1.78)は映画公開時をワイド化の判断の基準とするなら、NGという事になります。

 この事実をどう受け止めるか、それは個人の判断によるでしょう。撮影サイズのフルサイズが1.77というなら【16:9】の1.78でも大して違いはないので構わない、という人もいれば、原則1.66なら1.66以外あり得ないという人、様々だと思います。ただ、この事実は別の問題を浮かび上がらせています。

 それは「撮影時が1:1.77なら、DVDのアスペクト比はどこから来たのか?」という問題です。DVDはヨーロッパビスタよりも更に幅の狭い1:1.58くらいで、しかも天地がかなり高いです(下記画像)。しかも『バリー…』はワーナーにはアンサープリント(現像所からの1番プリント)しか残っていない事が判明しています。

 ここからは仮定で論を進めてみますのでご了承を。その現存するアンサープリントが1:1.77だとします。ネガの紛失がどの時点なのかわかりませんが、DVD化の時点ではネガが存在し、それは1:1.58であったとします。そのネガを用いてDVD化し、その後に紛失したのだとしたら・・・。つまりDVDの、あの天地の高い映像はDVDの中にしか存在しない事になります。DVDの解像度からフルハイビジョンであるBDの解像度に高精細にアップするのは事実上不可能です。仕方ないのでBDは1:1.77のアンサープリントから起こしたのだとするなら、今後DVDに収録されたあの天地の高い1:1.58映像がBD化されるのはオリジナルネガが見つからない限り絶望的、という事になります。これが「ファンならDVDも所持すべき」(保険の意味で)という言葉の真意です。

 ただ、これらは全て仮定の話であり憶測ですので、根拠は全くないです。しかし可能性はゼロではないと思います。何故ならこう考えると『バリー…』以外は全て上映サイズ=BDサイズとなっているのに、どうしてワーナーやレオンはキューブリックの遺志に反して1.77をBDに適用しようとするのかの説明がつくからです。つまりBD化できるフィルムは1.77しかないからどうしようもない。天地がこれ以上あるフィルムは存在しない、という事です。そして傍証がもうひとつ。キューブリック作品のBD化で一番遅かったのは『バリー…』なのです(『ロリータ』もですが)。つまりギリギリまでオリジナルネガを探したが見つからず、仕方ないので1.77のアンサープリントでBD化した、という経緯が推測できます。

 さらにこれはあくまで参考ですが『バリー…』を編集作業中のキューブリックの写真が残っています。上記の写真を見て1:1.77で編集しているように見えるでしょうか?そもそも1:1.77で撮影されたという話を信じていいものなんでしょうか?

 しかし繰り返しますがこれは「仮定」です。妄想レベルと言っても差し支えありません。でももし、もしもこの仮定が事実だとして、この事が公にされたら・・・多分世界中のファンからワーナーに大批判が集中するでしょうね。それをワーナーは恐れているのかもしれません。

 今後何か分かりましたら追記するか、また新たに記事として起こします。

TOP 10 POSTS(WEEK)

【考察・検証】『アイズ ワイド シャット』は、なぜクリスマスシーズンの物語なのか?を検証する

【関連動画】『2001年宇宙の旅』の未公開シーンとセット画像を集めた動画と、クラビウス基地で登場したハンディカメラをニコンがデザインしたという説明の信憑性について

【オマージュ】King Gnu(キング・ヌー)の新曲『一途』のMVがとっても『2001年宇宙の旅』だった件

【ブログ記事】NHK『映像の世紀~バタフライエフェクト~映像プロパガンダ戦 嘘と嘘の激突』で紹介されたプロパガンダ映画『ユダヤ人ジュース』とキューブリックとの「接点」

【インスパイア】とっても『2001年宇宙の旅』な、旧ソ連謹製SF映画『モスクワ-カシオペア(Москва – Кассиопея)』

【パロディ】映画版『バービー』の予告編がまるっきり『2001年宇宙の旅』でどう反応して良いのやら(汗

【関連記事】映画ファンが「こんな世界絶対嫌だ…」と絶望する!オススメの「ディストピア映画」10選

【関連書籍】忘れ去られた『2001年宇宙の旅』のもうひとつの原典、アーサー・C・クラーク『地球への遠征』

【オマージュ】MV全編がまるっきり『時計じかけのオレンジ』な、コットンマウス・キングス『Stomp』のMV

【パロディ】まるっきり『時計じかけのオレンジ』のアレックスのファッションをしたマーク・パンサーが登場するglobeの『genesis of next』