【撮影・技術】シネラマ(Cinerama)
史上初のシネラマ映画『これがシネラマだ』の予告編。スクリーンに映像のつなぎ目が見える。
三台カメラを使って35mmフィルムで撮影し、三台の映写機で180度に湾曲したスクリーンに1:2.88という超ワイドの映像を映し出す方式。音響も多チャンネルを使用し、映像と音響で観客を包み込むという画期的な上映システムだったが、専門の上映館が必要なためコストがかさみ、現在は廃れてしまった。
混同されがちだが『2001年宇宙の旅』のシネラマは正確には「スーパーシネラマ方式」といい、撮影や上映が煩雑になるシネラマ方式を改良し、70mmのフィルムを特殊レンズを使って一台の映写機で湾曲スクリーンに投影する方式。この方法だと三台の映写機を使う際に問題となるつなぎ目の不自然さが解消される。
『2001年…』はシネラマ上映を前提に制作されたが、シネラマ館のみで上映されたわけではなく、当然通常の映画館での上映もされている。しかしキューブリックの意図を最大限汲み取ろうとするならシネラマでの鑑賞がベストなのは間違いない。そういう意味では70mm版や35mm版でしか観ていない人は厳密な意味では「『2001年…』を観た」とは言えないかも知れないが、シネラマで観る方法がない以上、それを云々するのは詮無いだけだ。仮設の屋外劇場でも良いからいつかどこかで『2001年…』の「完全再現上映」が行われる事を切に希望してやまない。