【撮影・技術】ドルビー・システム(Dolby System)

『時計…』のエンドクレジットに記載された「DOLBY LABORATORIES INC.」の文字

 いかにこの「ドルビー・システム」が画期的だったか!現在のデジタル音源に慣れてしまってすっかりこの事を忘れていました。ある年代以上の方でないと、この記事は面白くないかもしれません。

 このドルビー・システム、当時標準だった音声記録媒体の磁気テープ(オープンリールやカセットテープなど)ではどうしても問題となったヒスノイズ(サーというテープ走行音)を低減する画期的なシステムでした。一般的にはドルビーBとドルビーCが知られていて、レコードからカセットテープにダビング時、それを使う事によってヒスノイズが低減されるため、ウォークマンでのヘッドホンで音楽を聴く事が一般的だったこの時代、ドルビーがあるとないとでは音質に大きな差があったのです。でもドルビーをかけると音が「こもり気味」になるので、それを嫌った人はあえてドルビーを切って聴いたりしてました。(管理人もその派で特にドルビーCは嫌いでした)

 何故突然ドルビーの話を持ち出したかというと、このドルビー・システムが映画で初めて使用されたのが『時計じかけのオレンジ』だからです。(録音時のみ)キューブリックは当時レコーディング・スタジオで普及しつつあったドルビー・システムのノイズ低減効果に着目、マスターレコーディングの際に業務用のAタイプを使用ました。その後1970年代の中頃になると、『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』で本格的に用いられた事をきっかけに、劇場の音質向上に多大な貢献をしたそうです。

 現在ではデジタル録音・再生が当たり前になったため、業務用はともかく、一般レベルでは全くその名を聞かなくなりました。現在に例えるなら、MP3のコーデックで音質を云々するノリに近いと思っていれば間違いないと思います。


TOP 10 POSTS(WEEK)

【ブログ記事】1999年3月7日スタンリー・キューブリック監督の逝去に当たり、当ブログ(当時個人ホームページ)に寄せられたファンの追悼メッセージ集

【台詞・言葉】ハートマン先任軍曹による新兵罵倒シーン全セリフ

【考察・検証】『フルメタル・ジャケット』の幻のシーン「生首サッカー」は真実か?を検証する

【TV放映情報】NHK BSプレミアムシネマで2月26日(水)午前0:05より『フルメタル・ジャケット』オンエア決定

【上映情報】「午前十時の映画祭15」で『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』上映決定!!

【関連記事】スタンリー・キューブリックが好んだ映画のマスター・リスト(2019年11月22日更新)

【関連記事】『2001年宇宙の旅』1968年公開、スタンリー・キューブリック監督の叙事詩的SF。その先見性に驚く

【ブログ記事】11人の映画監督がスタンリー・キューブリックを語る

【インタビュー】『バリー・リンドン』の撮影監督だったジョン・オルコットのインタビュー[その1:ロケーション撮影、フィルター、照明、ネガフィルムについて]

【考察・検証】「フィクション」を「ドキュメント」するカメラマンの眼