【撮影・技術】ドルビー・システム(Dolby System)
『時計…』のエンドクレジットに記載された「DOLBY LABORATORIES INC.」の文字
いかにこの「ドルビー・システム」が画期的だったか!現在のデジタル音源に慣れてしまってすっかりこの事を忘れていました。ある年代以上の方でないと、この記事は面白くないかもしれません。
このドルビー・システム、当時標準だった音声記録媒体の磁気テープ(オープンリールやカセットテープなど)ではどうしても問題となったヒスノイズ(サーというテープ走行音)を低減する画期的なシステムでした。一般的にはドルビーBとドルビーCが知られていて、レコードからカセットテープにダビング時、それを使う事によってヒスノイズが低減されるため、ウォークマンでのヘッドホンで音楽を聴く事が一般的だったこの時代、ドルビーがあるとないとでは音質に大きな差があったのです。でもドルビーをかけると音が「こもり気味」になるので、それを嫌った人はあえてドルビーを切って聴いたりしてました。(管理人もその派で特にドルビーCは嫌いでした)
何故突然ドルビーの話を持ち出したかというと、このドルビー・システムが映画で初めて使用されたのが『時計じかけのオレンジ』だからです。(録音時のみ)キューブリックは当時レコーディング・スタジオで普及しつつあったドルビー・システムのノイズ低減効果に着目、マスターレコーディングの際に業務用のAタイプを使用ました。その後1970年代の中頃になると、『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』で本格的に用いられた事をきっかけに、劇場の音質向上に多大な貢献をしたそうです。
現在ではデジタル録音・再生が当たり前になったため、業務用はともかく、一般レベルでは全くその名を聞かなくなりました。現在に例えるなら、MP3のコーデックで音質を云々するノリに近いと思っていれば間違いないと思います。