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小説版『2001年宇宙の旅』ではスーツだったが、映画版ではガウンに変更されたようだ。

 難解だ説明不足だとやたら批判をされやすい『2001年宇宙の旅』ですが、キューブリックはこのように小説版にあるシークエンスを、一応はテストしているようです。以下は小説版の該当シーンです。

 スーツをひとつはずし、注意深く調べた。グラブ越しにさわった感じでは、生地はウールよりも毛皮に近かった。これもまた、すこし流行遅れだった。地球では、少なくともここ四年、シングル・ブレストの上着を着ている者はいない。

(引用:決定版 2001年宇宙の旅)

 スチールとして押さえただけものなのか、実際に撮影したものなのかは分かりませんが、撮影が検討されたのは確実なようです。調査対象が小説版のようにスーツでなくガウンとパジャマなのは、ホテルに備え付けてあるならスーツは不自然だと判断したからなのでしょうか。この後のガウンとパジャマを着て食事するシーンは採用(小説版では青い固形食料を食べている)されているので、「宇宙服を着て部屋を調査する→ガウンとパジャマを見つける→それらをベッドの上に並べて調べる→宇宙服を脱いでガウンとパジャマに着替える→食事シーン」の予定だったのが「宇宙服を着て部屋を歩き回る→食事している自分を見つける」とシンプルに変更になったのだと推察できます。

 ボツになった理由は、上記の画像を見れば分かりますよね。宇宙服でガウンを調べる絵面は滑稽すぎて緊張感が台無しです。キューブリックは文章表現と映像表現の違いについて以下のように語っています。これは『2001年…』に限らず、全てのキューブリック作品(『スパルタカス』以外)に共通しています。

 小説と映画にはたくさんの違いがある。例えば、小説は映画よりもずっとはっきりと説明しようとする。それは言語媒体では避けられないことだ。〈中略〉非常に散文的なことは、印刷物でならうまく行ける。しかし、我々は、あの映画でやったように表現することで、更にずっと力強く、魔術的な効果を創造することができたと思う。

(引用:イメージフォーラム増刊号 キューブリック)

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