【ブログ記事】『2001年宇宙の旅』のイラストレーター、ロバート・マッコールが描いた不採用シーンのストーリーボード
『2001年宇宙の旅』で広告のアートワーク全般を担当したロバート・マッコールが描いたストーリーボードです。スペース・ポッドがスターゲートを抜け、通常空間に戻るシーンのようです。クラークの小説版によると第42章の「見知らぬ空」のワンシーンだと推察できます。
以前ここでも指摘したようにキューブリックは一旦はクラークの小説の忠実な映像化を試みていたようです。しかし結果そうならなかったのは小説をそのまま映像化すると陳腐になる、既に予算や時間を費やしすぎてしまった等の判断があったのだと思われます。キューブリック自身がインタビューで「わざと曖昧にする必要はなかった」と答えているように、リアルで説得力のある映像表現を目指していたら結果的に曖昧にせざるを得なかった、という事でしょう。
キューブリックはその後、この「映像を暗喩・象徴的に使用し、演技や台詞で全て説明してしまう事を避ける」という手法を好んで使うようになり、キューブリック作品の代名詞になっています。どうしても具体的に「そのものズバリ」を見せてしまう映像の特性を逆に利用したこの方法論はキューブリックが初めて用いたものではありませんが、「劇」映画が主流のハリウッドの映画界でここまで徹底的に、しかも高いクオリティを持って表現し続けたのはキューブリックが初めてである、と言い切って良いでしょう。